電子定款・手続き

【2026年版】電子定款を自分でやる作り方完全ガイド|4万円節約の手順と機材

【2026年版】電子定款を自分でやる作り方完全ガイド|4万円節約の手順と機材

「会社設立の費用をとにかく安くしたい。電子定款なら自分でやれば0円ですよね?」

その通りです。ただし、そこには「機材購入」と「設定地獄」という落とし穴があります。

行政書士 小野馨
こんにちは!

開業20年で5000社以上の起業をサポートし、多くの社長の「生存」と「廃業」の分岐点を見てきた行政書士の小野馨です。

今回は、多くの起業家が挑んでは挫折する【電子定款を自分でやる方法】について、忖度なしで解説します。

紙の定款に貼る4万円の収入印紙。これを節約するために「電子定款を自分でやりたい」と考えるのは、コスト感覚の鋭い経営者として素晴らしい判断です。

しかし、警告させてください。「たかがPDFにするだけでしょ?」と軽く考えて挑むと、専用機器の購入や、国の複雑な署名システムの壁にぶつかり、「結局、普通に頼んだ方が安くて早かった…」と後悔することになりかねません。

そこで本記事では、行政書士の実務経験から算出した「自力作成のリアルな費用対効果」と、それでも自分でやり遂げるための「完全攻略手順(2026年最新版)」を公開します。

▼ この記事のポイント ▼

  • ✅ 「自分でやる」といくら浮く?損益分岐点を公開
  • ✅ マイナンバーカードとICカードリーダーの必須条件
  • ✅ 署名エラー・認証不可を避ける手順を完全図解
  • ✅ 途中で「無理だ」と思った時のリカバリー策

※なお、電子定款を含む会社設立の全体像や、他の専門的なトピックについて知りたい方は、

『電子定款・会社設立の教科書(トップページ)』

をブックマークして、辞書代わりにお使いください。

電子定款で「4万円お得」の嘘とホント(損益分岐点の真実)

「電子定款なら4万円が浮く」というのは事実ですが、それは「必要な道具が全て手元にある場合」の話です。これから機材を揃えて「自分でやる」場合、実際に財布に残るお金はいくらになるのか? まずはシビアな現実を見ていきましょう。

[画像指示: 電卓と福沢諭吉(一万円札)が天秤に乗っているイメージイラスト (推奨ファイル名: diy-cost-balance.jpg, alt: 電子定款を自分でやるコスト比較)]

💡 3秒でわかるまとめ

  • 紙の定款は印紙税4万円が必須
  • 電子定款は非課税だが、機材・ソフト代がかかる
  • 全てゼロから揃えると、実質の節約額は約3.5万円

電子定款とは?紙の定款との違いを30秒で理解する

電子定款とは、会社の根本規則である「定款」を紙ではなく、PDF等の電子データで作成し、電子署名を付与したもののことです。

実務の現場では、もう10年以上前から主流になりつつあります。「紙じゃないと法的に不安だ」とおっしゃる年配の経営者様もいらっしゃいますが、効力は紙と全く同じです。むしろ、原本がデータで残るため、紛失のリスクが少なく、登記手続きもスムーズに進むというメリットがあります。

なぜ4万円もの差が出るのか。理由はシンプルで「印紙税法」という法律の定義にあります。印紙税は「文書」に対して課税される税金です。法律が作られた当時は、電子データという概念が存在しなかったため、データである電子定款は「文書」に該当せず、課税対象外(非課税)となるのです。これは脱税でも節税テクニックでもなく、国が認めた正当な権利です。

【シミュレーション】機材・ソフト代を引くと、実際に浮くのはいくらか?

ここが最も重要なパートです。電子定款を自分で作成するために必要なコストを、具体的な製品価格でシミュレーションしてみましょう。

「ネットカフェのパソコンでやればいいや」と考えているなら、それは危険です。公的個人認証を行うための専用ソフトのインストールや、ICカードリーダーの接続が必要なため、セキュリティ制限のある共用PCでは作業が完遂できないケースがほとんどだからです。

以下は、完全にゼロから環境を整えた場合の概算コストです。

項目概算費用(税込)備考
収入印紙代0円紙なら40,000円
ICカードリーダライタ約3,000円マイナンバーカード対応機種
Adobe Acrobat Pro約2,000円〜月額サブスク(7日間無料体験あり※)
マイナンバーカード取得0円発行まで1ヶ月かかる点に注意
実質コスト合計約5,000円
節約効果約35,000円40,000円 - 5,000円

このように、うまくやれば約3万5,000円の節約になります。

しかし、これは「Adobe Acrobatの無料期間をうまく使い、一発でミスなく完了させた場合」の理論値です。もし、ソフトの操作に手間取ったり、間違ったカードリーダーを買って買い直したりすれば、節約効果は減っていきます。何より、この作業のために投入するあなたの「数日分の人件費(時給換算)」を引いたとき、本当に黒字になるのか?

※「費用対効果についてもっと詳しく知りたい」「やっぱりプロに頼んだ方がいいのか?」と迷いが生じた方は、以下の記事で詳細な比較を行っていますので、そちらを先に読むことをお勧めします。

▼ 【2026年】電子定款を自分ですると損?費用vs代行の損益分岐点

ステップ1:戦うための「武器」を揃える(準備編)

コスト構造を理解した上で、「よし、3万5,000円浮くなら自分でやる!」と決意したあなたへ。ここからは具体的な作業に入ります。まずは電子定款作成という戦場に出るための武器(環境)を整えましょう。

[画像指示: パソコンの周りにICカードリーダー、マイナンバーカード、ソフトのパッケージが並んでいる写真 (推奨ファイル名: electronic-teikan-tools.jpg, alt: 電子定款作成の必要機材)]

💡 3秒でわかるまとめ

  • マイナンバーカードと暗証番号が必須
  • ICカードリーダーは「対応機種」を買うこと
  • PDFソフトは有料版(Acrobat Pro等)が必要

必須アイテム4選!マイナンバーカードとICカードリーダー

電子定款作成に絶対に必要な物理アイテムは、「マイナンバーカード」と「ICカードリーダライタ」の2点です。これらがなければスタートラインにも立てません。

「住基カードでもいいですか?」と聞かれることがありますが、現在はマイナンバーカードが標準です。また、カードがあっても「署名用電子証明書」の暗証番号(英数字6〜16桁)を忘れていると、区役所に行って再設定しなければなりません。これが意外と多い落とし穴です。

次にICカードリーダライタです。Amazonや家電量販店で2,000円〜3,000円程度で売っていますが、何でも良いわけではありません。「マイナンバーカード対応」「公的個人認証サービス対応」と明記されたものを選んでください。Sonyの「PaSoRi(パソリ)」シリーズなどが定番でトラブルが少ないです。

👨‍⚖️

行政書士 小野馨の「ここだけの話」

実務でよくあるトラブルが、「スマホでマイナンバーカードを読み取ればいい」という勘違いです。e-Tax(確定申告)ではスマホ読み取りが進んでいますが、定款認証や登記申請のソフトは、まだPC接続型のカードリーダーを要求するケースが多いです。スマホだけで完結させようとすると、途中で詰む可能性が高いので、PC用のリーダーを用意するのが無難です。

【最大の壁】PDF作成ソフト(Acrobat)と電子署名プラグインの罠

ハードウェアが揃ったら、次はソフトウェアです。ここが電子定款作成における最大の難所であり、多くの人が挫折するポイントです。

まず、PDFを作成・編集するソフトが必要です。無料のAdobe Acrobat Readerでは「閲覧」しかできず、電子署名を付与することができません。必ず有償版の「Adobe Acrobat Pro DC」などを用意する必要があります。先ほど触れたように、体験版を利用するか、月額サブスクリプションを契約します。

そして、ここに法務省が提供する「PDF署名プラグイン」という特殊なプログラムをインストールし、Acrobatと連携させる必要があります。これが非常に厄介で、「インストールしたのにメニューに出てこない」「署名しようとするとエラーが出る」といったトラブルが頻発します。

もし、この時点で「なんだか面倒くさそうだな…」と感じたなら、無理に進めないのも勇気です。書類や環境設定の詳細については、以下の専門記事でさらに詳しく解説していますので、準備に取り掛かる前に一度目を通しておいてください。

▼ 【必見】電子定款認証の必要書類とソフト設定をわかりやすく徹底解説

ステップ2:定款(案)の作成と絶対的記載事項

環境が整ったら、いよいよ定款の中身(原案)を作成します。定款は「会社の憲法」と呼ばれる最重要書類です。一度認証を受けると、後から「書き間違えました」といって簡単に直すことはできません(修正には株主総会の決議と、場合によっては登記のやり直し=数万円の登録免許税が必要です)。

ここでは、特に失敗が多く、会社の将来を左右する「目的」と「本店所在地」の書き方に絞って解説します。

[画像指示: パソコン画面にWordで作成された定款が表示されており、赤ペンでチェックが入っているイメージ (推奨ファイル名: teikan-draft-check.jpg, alt: 定款作成のポイント)]

💡 3秒でわかるまとめ

  • 絶対的記載事項(商号、目的など)が抜けると無効
  • 許認可が必要な業種は「目的」の文言に注意
  • 本店所在地は「最小行政区画」で止めると引越し代が浮く

将来の「許認可」を見据えた「目的」の書き方【建設・運送・古物】

「目的」とは、その会社が何の事業を行うかを記載する項目のことです。

多くの起業家は、「将来やるかもしれない事業も全部書いておこう」と、ネットの雛形をコピペして数十個もの事業を羅列します。しかし、建設業や運送業、不動産業など、役所の「許認可」が必要なビジネスを考えている場合、この安易なコピペが致命傷になります。

なぜなら、許認可申請の際、役所は「定款の目的欄に、適切な文言が入っているか」を厳しくチェックするからです。

私への相談で実際あったケースです。

依頼者:「建設業許可を取りたいんですが、県庁で断られました」

私:「定款を見せてください。…ああ、『リフォーム業』としか書いてないですね」

依頼者:「えっ、リフォームって建設業じゃないんですか?」

私:「一般用語ではそうですが、許可申請上は『建築工事業』や『内装仕上工事業』といった明確な法定用語が入っていないと、許可が下りないことがあるんです。これを直すには、定款変更登記で3万円かかります」

このように、たった一行の書き方で、将来数万円の損失が出るかどうかが決まります。特に建設業許可は「資本金500万円」の要件など、定款作成時点から意識すべきハードルが他にもあります。建設業での起業を考えている方は、必ず以下の記事で「500万円の壁」と「目的の書き方」を確認してください。

▼ 建設業許可500万円の壁!税込判定と違反リスクを行政書士が解説

本店所在地はどこまで書く?引越しコストを下げる裏技

本店所在地とは、会社の住所のことですが、定款には「最小行政区画(市区町村)」まで記載すれば法律上有効です。

例えば、実際の住所が「兵庫県神戸市中央区〇〇町1-1-1」だったとします。 定款には、以下のように書くことができます。

「当会社は、本店を兵庫県神戸市に置く」

なぜ、あえて番地を書かないのか? それは「将来の引越しコスト」を下げるためです。

もし定款に「神戸市中央区〇〇町1-1-1に置く」とガチガチに書いてしまうと、隣のビルに引っ越しただけでも「定款変更」が必要になり、株主総会議事録の作成など手間が発生します。しかし、「神戸市に置く」としておけば、神戸市内での引越しなら定款変更は不要(取締役の決定のみ)で済みます。

「じゃあ、全部市区町村止めがいいのか?」というと、実はそうとも限りません。銀行融資の審査などで「定款と登記簿の住所が一致している方が心証が良い」というケースもゼロではないからです。

このあたりのさじ加減は、会社の成長戦略によります。以下の記事で、あなたの会社に最適な本店所在地の決め方をパターン別に解説しています。

▼ 定款の本店所在地はどう決める?最小行政区画のメリットを解説

ステップ3:PDF化・電子署名・オンライン申請(実践編)

定款の内容が固まったら、いよいよ「WordファイルをPDF化し、マイナンバーカードで電子署名を行う」という、技術的なクライマックスへ突入します。

[画像指示: パソコン画面上でPDFファイルに「署名済み」のマークが表示されている様子 (推奨ファイル名: pdf-digital-signature.jpg, alt: 電子署名の完了画面)]

💡 3秒でわかるまとめ

  • WordをPDF化する際は「Acrobat」タブから行う
  • 署名プラグインで「署名付与」をクリック
  • パスワード入力ミスでカードがロックされないよう注意

定款をPDFにして「電子署名」を付与する具体的工程

電子署名とは、デジタルの世界における「実印」を押す行為のことです。これにより、「このファイルは間違いなく本人が作成し、改ざんされていない」ことが証明されます。

具体的な手順は以下の通りです。

Wordで作成した定款を開き、Acrobatリボンから「PDFを作成」を選択。

生成されたPDFを開き、法務省の「PDF署名プラグイン」のメニューを選択。

ICカードリーダーにマイナンバーカードをセット。

「署名付与」ボタンを押し、パスワードを入力。

ここで多くの人がつまずくのが、「署名ボタンがグレーアウトして押せない」「カードを認識しない」というエラーです。これはPCの再起動や、リーダーのドライバー更新で直ることもありますが、最悪の場合「そもそもPCのスペックやOSが対応していなかった」という結末もあり得ます。

登記・供託オンライン申請システムでの送信手順

署名ができたら、次はそれを公証役場へ送信します。これには法務省が運営する「登記・供託オンライン申請システム」を使用します。

専用ソフト(申請用総合ソフト)をダウンロードし、アカウントを作成。そこに署名済みの定款PDFを添付して送信します。まるで確定申告(e-Tax)のような画面ですが、操作性は決して良いとは言えません。

ここで送信したデータが公証人の手元に届き、内容確認(事前審査)が行われます。送信して終わりではなく、ここから公証人とのメールや電話でのやり取りが始まるのです。

ステップ4:公証役場での認証と受け取り(完了編)

オンライン申請が完了したら、最後は公証役場での「認証(受け取り)」です。実は、電子定款といえども、原則として一度は公証役場へ足を運ぶ(またはテレビ電話で面談する)必要があります。

[画像指示: 公証役場の入り口または公証人と面談しているイメージ (推奨ファイル名: notary-office-visit.jpg, alt: 公証役場での認証)]

💡 3秒でわかるまとめ

  • 管轄外の役場に行くと認証は無効になる
  • テレビ電話なら出向く必要なし(要予約)
  • 当日の持ち物忘れは「即アウト」で出直し確定

管轄ルールに注意!どこの公証役場でも良いわけではない理由

公証役場には「縄張り」があります。これを「管轄(かんかつ)」と言います。定款認証は、会社の本店所在地がある都道府県内の公証役場でしか行えません。

例えば、兵庫県尼崎市(大阪のすぐ隣)に会社を作る場合。

「自宅から近いから」という理由で、川を渡ってすぐの大阪市の公証役場へ行っても、認証は受けられません。兵庫県内の公証役場(神戸や尼崎など)に行く必要があります。

このルールを知らずにオンライン申請をしてしまい、公証人から「うちは管轄外ですよ」と連絡が来て、全てやり直しになるケースが後を絶ちません。以下の記事で、全国の管轄ルールと、あなたにとって一番有利な公証役場の選び方を解説しています。

▼ 【全国版】電子定款対応!公証役場の管轄ルールと賢い選び方

予約と「テレビ電話認証」の活用

「平日の昼間に公証役場なんて行けない!」という方のために、現在はテレビ電話による認証も認められています。

スマホやPCのテレビ電話機能を使って公証人と面談し、電子署名の確認を行います。これを使えば、公証役場に行かずに自宅で手続きが完了します。ただし、これも「いきなりSkypeをかける」わけにはいきません。事前の予約と、専用アプリのインストールが必要です。

テレビ電話認証の具体的な予約フローと、当日の接続トラブル対策については、以下の完全ガイドをご覧ください。

▼ 定款認証の予約とテレビ電話完全ガイド!公証役場の流れと機材

【チェックリスト】当日の持ち物と「空振り」を防ぐ注意点

テレビ電話を使わず、直接公証役場へ行ってデータを受け取る場合(このパターンがまだ一般的です)、「忘れ物=死」だと思ってください。役所の手続きは冷酷です。「あ、ハンコ忘れました。でも本人だからいいですよね?」は通用しません。

電子定款を保存したメディア(CD-R、USBなど ※役場による)

発起人の実印(個人のもの)

印鑑証明書(発行3ヶ月以内)

身分証明書(免許証など)

認証手数料(現金で約3万〜5万円)

空のCD-R(謄本用 ※役場による)

特に「空のCD-R」などは、今の時代コンビニでも売っていないことがあります。当日慌てないために、以下のチェックリスト記事をスマホで開きながら準備することをお勧めします。

▼ 公証役場の電子定款認証!当日の持ち物リストと失敗しない手順

あなたが得られる未来(自力達成か、プロに任せて加速か)

ここまで、電子定款を自分で作成する全手順を解説してきました。

「よし、これなら自分でできそうだ!やってやろう!」

そう思えた方は、ぜひ挑戦してください。初めての会社設立手続きを自力で完遂した経験は、経営者としての自信になるはずです。

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「本業の準備で忙しいのに、こんなに手間がかかるのか…」

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本記事内で使用している画像は、すべて生成AIによって作成されたイメージです。

記事の内容は執筆時点の法令・情報に基づいています。法改正や自治体の条例により最新の要件と異なる場合がありますので、実務の実行にあたっては、必ずご自身で管轄の行政庁または専門家へ確認を行ってください。

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