

電子定款認証の実績5000件の行政書士の小野です。
日頃の認証や署名の実務に精通している僕が、電子定款認証のやり方について詳しく解説します。
ぜひ、参考にしてくださいね。
これから会社を作ろうとしているあなた、電子定款認証を利用して、収入印紙代の4万円を節約したいと考えていませんか。
でも、いざ電子定款認証をやろうと思って、やり方を調べても、ICカードリーダーが必要だったり、Adobeのソフトが必要だったりと、なんだか難しそうで心が折れそうになりますよね。
実は私も最初の頃は、この複雑なシステムに頭を抱えた一人なんです。
注意ポイント
特に自分で手続きをしようとすると、専門用語や機材の準備だけでハードルが高く感じてしまうものです。
ですが、安心してください。
正しい手順とちょっとしたコツさえ掴めば、ITの専門家でなくても必ず手続きを完了できますよ。
- 自分で電子定款認証を行うための具体的な手順と全体の流れ
- 余計なコストをかけずに必要なソフトや機材を揃える裏技
- 多くの人がつまずく「署名プラグイン」や「32bit版」のトラブル解決法
- テレビ電話機能を使って公証役場に行かずに認証を受ける最新の方法
自分で進める電子定款認証のやり方と必要ソフト
まずは、ご自身のパソコンを使って電子定款を作成し、署名を付与して送信するまでの技術的な準備と手順について解説します。
電子定款認証は、単にWordをPDFにするだけの手続きではありません。
ポイント
法的に有効な「電子署名」を付与するためには、国が指定した厳格な環境構築が必要になります。
ここが最大の難所であり、多くのチャレンジャーが挫折するポイントでもあります。
ですが、一つずつクリアしていけば、必ずゴールにたどり着けますので、焦らずに一緒に進めていきましょう。
Adobe体験版を活用し無料で電子署名を行う方法
電子定款を作成するプロセスにおいて、最も多くの人が頭を悩ませるのが、PDFファイルに法的な効力を持つ署名を行うためのソフトウェア選びです。
結論から申し上げますと、法務省の「登記・供託オンライン申請システム」は、基本的にAdobe Acrobat Pro(有料版)を使用することを前提に設計されています。
「えっ、4万円の印紙代を節約するために、毎月課金される高いソフトを契約しなきゃいけないの?」
と、ここでガッカリしてしまいますよね。
その気持ち、痛いほどよく分かります。
注意ポイント
通常、Acrobat Proなどの有料ライセンスは高額であり、たった一度きりの会社設立のために購入するのは、コストパフォーマンスの観点から見てもナンセンスです。
かといって、ネット上に散見される「無料のAcrobat Readerでも署名できる裏技」のような古い情報を鵜呑みにするのは極めて危険です。
注意ポイント
現在のセキュリティ仕様では、Readerでの署名は動作が不安定であったり、最悪の場合、署名自体はできても「改ざん」と判定されて公証役場で受理されないリスクがあります。
そこで、私が推奨する最も賢く、かつ安全な方法は、「Adobe Acrobat Proの無料体験版」を戦略的に活用することです。
Adobe公式サイトでは、全機能が使える7日間の無料体験期間を提供しています。
この期間内に、定款のPDF変換から電子署名の付与までを一気に終わらせてしまえば、ソフト代を1円もかけずに、正規のライセンスと同じ法的効力を持つ電子定款を作成することが可能です。
【プロからのアドバイス:体験版活用のコツ】
体験版を利用する際は、必ずクレジットカード情報の登録が必要になりますが、期間内に解約手続きを行えば料金は請求されません。
ただし、定款認証は公証人とのやり取りで修正が発生する場合があるため、公証役場での「事前チェック(Word段階での確認)」が完全に終わって、「あとは署名して送るだけ」という状態になってから体験版をインストールするのがベストです。
つまり事前準備を済ませて、スムーズに手続きを行うこと。
そうすれば、7日間という短い期間でも余裕を持って手続きを完了できますよ。
なお、使用するPDFソフトの要件については、法務省の公式サイトでも詳細な環境要件が公開されています。
自己流のフリーソフトなどで署名を試みて、後から「署名が無効です」と突き返される時間を考えれば、正規ルートの体験版利用が最短かつ最善の策だと言えるでしょう。
ポイント
ですが…それよりもお得な方法を最後の方に記載していますので、ぜひ最後までご覧ください。
(出典:法務省『PDF署名プラグインについて』)
マイナンバーカードとICカードリーダーの必須環境
次に、物理的なハードウェア環境の準備についてお話しします。
電子定款認証とは、要するに「この定款は間違いなく私が作成しました」ということを、インターネットを通じて証明する手続きです。
そのためには、ネット上の身分証明書となる「マイナンバーカード」と、それをパソコンに読み込ませるための「ICカードリーダライタ」の2点が絶対に欠かせません。

必須アイテムチェックリスト
- マイナンバーカード:必ず「署名用電子証明書」が格納されているものをご用意ください。カード取得時に設定した、英数字混在の6〜16桁のパスワードが署名の瞬間に必要になります。
- ICカードリーダライタ:マイナンバーカードに対応した接触型(カードを差し込むタイプ)または非接触型(カードをかざすタイプ)の機器が必要です。
ICカードリーダライタについては、「スマホで読み取れないの?」という質問を本当によく頂きます。
確かに最近の確定申告(e-Tax)などはスマホで完結できますが、電子定款の署名作業に関しては、パソコン上のPDFファイルに対して署名データを埋め込む必要があるため、パソコンに直接接続できる専用のリーダーライタを用意するのが鉄則です。
Amazonや家電量販店で、Sonyの「PaSoRi(パソリ)」シリーズやNTTコミュニケーションズの接触型リーダーなどが3,000円前後で販売されていますので、ここは必要経費として割り切りましょう。
購入する際は、「公的個人認証サービス(JPKI)対応」と記載されているかを必ず確認してください。
また、ここで見落としがちなのが「ソフトウェア(ミドルウェア)」の存在です。
機器をUSBに挿すだけでは動きません。地方公共団体情報システム機構(J-LIS)が配布している「JPKI利用者ソフト(公的個人認証サービス利用者クライアントソフト)」をインストールし、自分のマイナンバーカードが正常に認識されるか「動作確認」を行っておく必要があります。
これを忘れると、後の工程でAdobe Acrobatがカードを認識せず、エラー地獄に陥ることになります。
さらに、パソコンのOSについても注意が必要です。
法務省のシステムはWindows環境に強く最適化されています。
MacでもBoot Campなどを使えば不可能ではありませんが、ICカードリーダーのドライバー相性や署名プラグインの挙動において、Windowsの方が圧倒的に安定しています。
「Macしか持っていない」という方は、この手続きのためだけにWindows PCをレンタルするか、あるいはMac対応を謳う有料の会社設立支援クラウドサービスを検討するのも一つの手かもしれません。
(出典:公的個人認証サービス ポータルサイト『利用者クライアントソフトのダウンロード』)
電子定款でも提出が必要な印鑑証明書の準備
「電子定款にするんだから、紙の書類は一切いらなくなるんでしょ?」と思っていませんか。
実は、ここが大きな誤解ポイントなんです。
確かに定款自体はPDFデータになりますが、公証人が「どこの誰が会社を作ろうとしているのか」を厳格に本人確認するためには、依然として発起人(出資者)全員の印鑑証明書が必要となります。
具体的には、電子定款に署名をした人が、公証人とのテレビ電話認証を行う際に、本人確認書類として提示したり、あるいは後ほど郵送で提出を求められたりします。
また、定款認証が終わった後のステップである「法務局への会社設立登記申請」の段階では、取締役の就任承諾などのために印鑑証明書が必ず必要になります。
つまり、電子定款認証の手続きをスムーズに進めるためには、事前に役所やコンビニ交付サービスで印鑑証明書を取得しておくのが定石なのです。
【重要】有効期限の「3ヶ月ルール」に注意!
印鑑証明書には有効期限があります。定款認証や登記申請の時点で「発行から3ヶ月以内」のものでなければ、公的書類として認められません。
「気合を入れて半年前から準備していたのに、いざ申請しようとしたら期限切れだった…」なんてことにならないよう、定款の作成に取り掛かる直前くらいのタイミングで取得するのがベストです。
また、発起人が複数いる場合や、発起人に法人が含まれている場合は、誰の印鑑証明書が何通必要なのかが複雑になります。
ポイント
基本的には「発起人全員分」が必要ですが、ご自身が発起人兼代表取締役として一人で会社を作る場合は、個人の印鑑証明書を2通(定款認証用と登記申請用)取得しておくと安心です。
これほんと実務でいつもお伝えしています!
コンビニ交付に対応している自治体であれば、夜間や休日でも取得できますので、マイナンバーカードを活用してサクッと準備してしまいましょう。
申請用総合ソフトのダウンロードと環境設定の手順
定款の原案が完成し、PDF化の準備が整ったら、次はそのデータを公証役場へ送信するための専用ソフトを導入します。それが法務省が提供している「申請用総合ソフト」です。
名前がいかにもお役所仕事といった感じで堅苦しいですが、要するにこれが「オンライン上の受付窓口」の役割を果たします。
このソフトは、「登記・供託オンライン申請システム(通称:登記ねっと)」の公式サイトから誰でも無料でダウンロードできます。
ただし、ダウンロードしてインストールすればすぐに使えるわけではありません。
ソフトを起動した後、最初に「申請者情報」の登録を行う必要があります。
ここで設定するIDとパスワードは、認証済み定款のダウンロードや、その後の登記申請、さらには手数料の電子納付(インターネットバンキング等での支払い)の際にも使用する極めて重要な「鍵」となりますので、絶対に忘れないように管理してください。
インストール時の注意点として、このソフトは頻繁にバージョンアップが行われています。
起動するたびに「更新プログラムがあります」というポップアップが出ることが多いですが、面倒くさがらずに必ず最新版にアップデートしてください。
バージョンが古いと、通信エラーが発生したり、最新の様式が表示されなかったりする原因になります。
また、セキュリティソフト(ウイルス対策ソフト)の設定によっては、通信がブロックされてしまうこともあります。
もしインストールや通信がうまくいかない場合は、一時的にファイアウォールを無効にするなどの切り分け作業が必要になることも覚えておいてください。
(出典:法務省 登記・供託オンライン申請システム『ソフトウェアのダウンロード』)
PDF変換から電子署名付与までの具体的な操作
いよいよ、電子定款認証手続きのハイライト、PDFへの「電子署名付与」の作業です。
ここでの操作ミスが、後の認証不可に直結しますので、慎重に進めていきましょう。まず大前提として、定款の原案はMicrosoft Wordなどで作成されていると思いますが、これをPDFに変換する際に、絶対にやってはいけないことがあります。
【厳禁】「印刷」メニューでPDFにしないこと!
Wordの「ファイル」→「印刷」から「Microsoft Print to PDF」などを選んで保存する方法は避けてください。
この方法で作成されたPDFは、内部構造が単なる画像の集まりのようになってしまい、法務省の署名プラグインが正しくテキストや署名位置を認識できないトラブルの原因となります。
必ずWordの「名前を付けて保存」からファイルの種類で「PDF」を選択するか、Adobe Acrobatのアドイン機能(PDFを作成ボタン)を使って変換してください。
正しいPDFが用意できたら、以下のステップで署名を行います。
- まず、パソコンにICカードリーダライタを接続し、マイナンバーカードをしっかりと奥まで差し込みます(またはセットします)。JPKI利用者ソフトでカードが認識されていることを確認してください。
- Adobe Acrobat(またはAcrobat Pro)で定款PDFを開きます。
- 事前にインストールしておいた「PDF署名プラグイン」のツールバーまたはメニューを選択します。画面上に「署名」というボタンが表示されているはずです。
- 署名モードになったら、定款の末尾(通常は発起人氏名の右横、紙ならハンコを押す場所)に、マウスをドラッグして四角い署名フィールドを作成します。
- 署名に使用する証明書を選択する画面が出ますので、自分のマイナンバーカード(公的個人認証サービス)を選択し、署名用パスワードを入力します。
- パスワードが認証されると、PDF上に電子印鑑のようなマークや署名情報が表示されます。これで署名は完了です。
ここで最も重要な注意点をお伝えします。
注意ポイント
署名が完了したPDFファイルは、その後、絶対に編集・上書き保存をしないでください。
たとえファイル名を変えるだけでも、ファイル自体の「ハッシュ値(データの指紋のようなもの)」が変化してしまい、せっかく付与した署名が「改ざんされた」と判定され、無効になってしまいます。
署名後は「閲覧」のみにとどめ、そのまま申請用総合ソフトへ添付する準備を進めてください。
プラグインエラーなどで署名できない時の対処法
「手順通りにやったはずなのに、署名ボタンが反応しない」「エラーコードが出て先に進めない」。
これは電子定款に挑戦する人の半数以上が直面すると言っても過言ではない壁です。
その原因の多くは、「32bit版」と「64bit版」のソフトウェア間の非互換問題にあります。
Adobe Acrobatは、現在「64bit版」が標準としてインストールされるようになっています。
注意ポイント
一方で、法務省が提供している「PDF署名プラグイン」は、長らく「32bit版」のAcrobatにしか対応していませんでした(現在は64bit対応版もリリースされていますが、環境によっては不安定な場合があります。これが長らく解消されていません。)。
もし、お使いのAcrobatが64bit版で、そこに32bit用のプラグインを無理やり入れようとしても動作しませんし、逆にプラグインだけ最新にしても本体が古ければ動きません。
エラーが出た時のトラブルシューティング・チャート
- JPKI利用者ソフトは入っていますか?:そもそもマイナンバーカードを認識する土台がないと、Acrobat側はどうすることもできません。
- Acrobatのビット数を確認しましたか?:Acrobatの「ヘルプ」→「Adobe Acrobatについて」を開くと、バージョンの横に(64-bit)や(32-bit)と記載があります。これに対応した法務省プラグインをインストールしているか再確認してください。
- 「保護モード」が邪魔をしていませんか?:Acrobatのセキュリティ機能である「起動時に保護モードを有効にする」のチェックが入っていると、外部プラグインの動作をブロックすることがあります。「編集」→「環境設定」→「セキュリティ(拡張)」から一時的にオフにして再起動し、署名を試してみてください(作業後はセキュリティのためオンに戻しましょう)。
このあたりはパソコンの環境によって千差万別ですが、エラーメッセージをそのままGoogle検索するよりも、「法務省 署名プラグイン 64bit」などで検索して、最新の対応状況を確認するのが解決への近道です。
「政府認証基盤(GPKI)の政府共用認証局発行の電子証明書」又は「地方公共団体組織認証基盤(LGPKI)組織認証局発行の電子証明書」をご利用の場合、32ビット版の署名プラグインを利用してください。また、環境設定は、いずれも操作説明書の「公的個人認証ICカード(個人番号カード)を選択した場合」の方法により設定してください。
(出典:法務省『PDF署名プラグインのビット数対応について』)
システムの操作に関するお問い合わせ
万が一、エラーが出てしまったときは、登記供託オンラインシステムのシステム対応窓口に落ち合わせ下さい。
≪電話によるお問い合わせ≫ 050‐3786‐5797
登記供託オンラインシステム・システム操作に関するお問い合わせ
テレビ電話を用いた電子定款認証のやり方と受領
データの送信が終わっても、まだ終わりではありません。
電子定款認証手続きの後半戦、そしてフィナーレとなるのが、公証人による「認証」です。
かつては、データ送信後に公証役場へ物理的に出向く必要がありましたが、現在は技術革新と制度改正により、自宅にいながらテレビ電話で完結できるようになりました。
公証役場への事前連絡とテレビ電話予約の流れ
申請用総合ソフトでデータを送信したら、すぐに公証人が見てくれるかというと、そうではありません。
公証役場は非常に多忙であり、また「どこの誰から何が送られてくるか」を事前に把握していないと処理がスムーズに進まないため、いきなりデータを送りつけるのはマナー違反であり、トラブルの元です。
まずは、本店所在地を管轄する(会社を作る都道府県内にある)公証役場に電話またはメールで連絡を取り、「これから電子定款の認証をお願いしたいのですが」と一報を入れましょう。
多くの公証役場では、正式なデータ送信(嘱託)の前に、Wordファイルの段階で定款の中身を確認する「事前チェック(リーガルチェック)」のプロセスを設けています。
定款の記載内容に法的な不備がないか、公証人がプロの目でチェックしてくれるのです。
この事前チェックを経て、「内容に問題ありません、電子署名をして送信してください」というお墨付きをもらってから、先ほどの手順で電子署名・送信を行うのが、最も確実で手戻りのない「黄金ルート」です。
送信が完了したら、再度公証役場へ連絡し、いよいよテレビ電話認証の日時を予約します。この際、「来店ではなく、テレビ電話方式を希望します」とはっきり伝えることを忘れないでください。
(出典:日本公証人連合会『定款認証のテレビ電話方式』)
FaceHubを使った当日の本人確認と認証手順
認証当日は、公証役場指定のビデオ通話システム「FaceHub(フェイスハブ)」を使用します。
「ZoomやTeamsじゃダメなの?」と思われるかもしれませんが、公証業務という公的な手続きの性質上、高度なセキュリティと本人確認機能を持った専用システムが採用されています。
以前は専用アプリのインストールが必要で、これがまたトラブルの種だったのですが、2024年2月からは大幅なアップデートが行われ、アプリ不要のブラウザ接続サービスへと進化しました。
これにより、URLをクリックするだけですぐに通話が開始できるようになり、利便性が飛躍的に向上しています。
当日の流れは非常にシンプルです。
予約時間になると、公証人からメールで「通話用URL」が送られてきます。
そのリンクをPCまたはスマホでクリックすると、自動的にブラウザが立ち上がり、ビデオ通話が始まります。
画面越しに公証人と挨拶を交わした後、指示に従って「マイナンバーカード(または免許証)」をカメラに向け、厚みやホログラムを確認してもらったり、自分の顔と写真を見比べてもらったりして本人確認を行います。
また、簡単な口頭試問(生年月日や干支、会社の事業目的など)が行われることもあります。
この時、デスクトップパソコンを使用している方は要注意です。
モニターにWebカメラとマイクは付いていますか?
ノートパソコンなら標準装備されていることが多いですが、デスクトップの場合は外付けの機器がないと通話ができません。
「映像は映るけど声が聞こえない」といったトラブルで認証が中止にならないよう、事前にマイクテストを行っておくことを強くおすすめします。
記載ミス発覚時の訂正方法と再申請のルール
もし、電子署名をして申請用総合ソフトで送信した後に、「あ!住所の番地が間違っていた!」「発起人の漢字が旧字体だった!」というような誤字脱字が見つかったらどうなると思いますか?
紙の定款であれば、その場で二重線を引いて訂正印を押せば済む話ですが、電子定款の世界ではそうはいきません。
修正=最初から作り直しです
繰り返しになりますが、電子署名は「改ざんされていないこと」を数学的に証明する技術です。
そのため、送信後のPDFデータに対して、公証人が訂正を加えることも、あなたが1文字だけ修正して再送することもできません(ハッシュ値が変わるため)。
もしミスが発覚した場合、一度申請を取り下げ(却下または取下)、手元のWordファイルを修正し、再度PDF化し、再度マイナンバーカードで署名し、再度申請用総合ソフトで送信するという、完全なる「振り出しに戻る」作業が必要になります。
これが、電子定款認証における最大のリスクであり、恐怖です。
だからこそ、先ほどお伝えした「公証役場での事前チェック」が命綱になるのです。
公証人のチェックを通ったファイルであれば、認証当日にミスが見つかる可能性は限りなくゼロに近づきます。
面倒くさがらずに、必ずプロの目を通してから署名を行うようにしましょう。
認証済み定款データの受け取りと謄本の郵送請求
テレビ電話での本人確認が無事に終わり、公証人が「認証」を与えると、あなたの定款は晴れて法的な効力を持つ「原始定款」となります。
しかし、ここで一つ疑問が浮かびます。「認証されたデータはどうやって受け取るの?」
実は、申請用総合ソフトの画面から「認証済みPDF」をポチッとダウンロードできるわけではありません。公証人の電子署名が入った大切な原本データは、セキュリティの観点から、メール添付などで簡単に送ってもらえるものではないのです。
一般的には、以下の2つのパターンのいずれかで受け取ることになります。
- 専用のファイル転送システム経由:公証役場が指定するセキュアなダウンロード用URLなどがメールで送られてくるパターン。
- CD-R等のメディアでの受領:認証済みデータが入ったCD-Rを、郵送(レターパック等)で送ってもらうパターン。
さらに重要なのが、紙の「定款謄本(とうほん)」の存在です。
会社設立後の銀行口座開設や、税務署への届出など、実務の現場では「紙の定款のコピー(謄本)」の提出を求められる場面が多々あります。
電子データだけ持っていても、「紙で出してください」と言われた時に困ってしまいますよね。
そのため、テレビ電話認証の際に、認証済みデータと併せて「紙の定款謄本」も郵送で送ってもらうように手配するのが一般的です。
事前に公証役場へレターパックなどの返信用封筒を送っておき、手数料(認証手数料+謄本代)を指定口座に振り込めば、数日後には自宅に成果物が届きます。
これにより、一歩も外に出ることなく手続きが完結するのです。
専門家に依頼せず自分で手続きするメリットと注意点
ここまで、ご自身で電子定款認証を行うための長い道のりを解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
「これなら自分でもできそう!」と闘志を燃やしている方もいれば、
「うわぁ、やっぱり面倒くさい…」と心が折れかけている方もいるかもしれません。
正直なところ、どちらの感想も正解だと思います。
| 比較項目 | 自分でやる場合 (DIY) | 専門家(行政書士)に依頼 |
|---|---|---|
| コスト | 最安(機材代のみ数千円 + Acrobat体験版) | 報酬発生(数万円〜) |
| 手間・時間 | 環境構築、ソフト操作の学習、エラー対応に数日かかることも | 丸投げ可能で最速(自分は印鑑証明を取るだけ) |
| リスク | システムエラーでの挫折や、補正による設立日の遅延 | プロが全責任を持って保証するため安心 |
自分でやることの最大のメリットは、何と言っても「コストの最小化」です。
行政書士に依頼すれば数万円の報酬がかかりますが、自分でやれば機材代の数千円だけで済みます。
しかし、その裏には「慣れないソフトウェアとの格闘」や「未知のエラーへの対処」という見えないコスト(時間と労力)が潜んでいます。
「時給換算したら、専門家に頼んだ方が実は安かったかも…」となってしまっては本末転倒です。
ご自身のITスキルや、会社設立にかけられる時間と情熱を天秤にかけて、最適な方法を選択してください。
会社設立の全体像を把握しよう!定款認証から登記申請までの流れ
効率的な電子定款認証のやり方でスムーズな起業を
電子定款認証は、一度経験してしまえば「なんだ、仕組みさえ分かれば単純じゃないか」と思えるものですが、最初の一回、特に環境構築から始める場合は、確かに高いハードルが存在します。
しかし、このハードルを乗り越えた先には、「4万円のコストカット」という確実な果実と、「会社設立手続きを自分でやり遂げた」という大きな自信が待っています。
今回ご紹介した「Adobe無料体験版の活用」「マイナンバーカードと機器の準備」「公証役場との密な事前連携」。
この3つの重要ポイントさえしっかりと押さえておけば、致命的なミスを防ぎ、スムーズに認証を受けることができます。
浮いた4万円は、これから始まる新しいビジネスのための名刺代や、広告宣伝費、あるいは創業メンバーとの決起集会の費用に使って、幸先の良いスタートを切ってくださいね!
※本記事の情報は執筆時点のものです。法務省の登記・供託オンライン申請システムやAdobe Acrobatの仕様、各公証役場の運用ルールは変更されることがあります。手続きを実際に開始する際は、必ず公式サイトで最新情報を確認するか、不明な点は専門家にご相談ください。
実は、「電子署名」の作業だけを専門家に任せるという、裏技的な選択肢があるのをご存知でしょうか?
\ 機材購入もソフト設定も不要 /
当事務所では、面倒な「電子署名・認証代行」を4,400円(税込)で承っています。
(※ご自身で機器を揃えるのとほぼ変わらない費用で、プロが確実に処理します)
会社設立や電子定款認証のスペシャリスト!開業17年・年間実績500件以上。実は、電子定款の制度ができた10年以上前から電子定款認証の業務を行なっているパイオニアです!他との違いは、まず定款の完成度!内容はモデル定款のモデルと言われ全国数百箇所の公証人の目が入っている優れもの!そして電子署名はまるでサインのようなかっこいい電子署名です!その電子定款であなたの大切な会社設立を真心込めて応援します!