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【記入例あり】定款認証の「実質的支配者リスト」書き方ガイド!一人社長はどこにチェック?

「実質的支配者」という言葉に身構える必要はありません。要は「オーナーは誰か」という単純な問いです。

書類の書き方がわからず、手が止まっていませんか? 一人社長なら、記入にかかる時間はたったの3分です。

行政書士 小野馨
こんにちは!

行政書士の小野馨です。会社設立の書類作成で、多くの起業家が「ん?なんだこれは?」と眉をひそめる書類があります。

それが**「実質的支配者となるべき者の申告書」**です。

名前が強そうですよね。「支配者」なんて言われると、「私は魔王か何かか?」と思ってしまいますが、これは2018年から提出が義務化された非常に重要な書類です。

法律用語が並んでいて難しく見えますが、恐れることはありません。9割以上の起業家(特に一人社長)にとっては、**「自分の名前と住所を書いて、暴力団員ではありませんという箱にチェックを入れるだけ」の簡単な作業です。

本記事では、この難解な書類を「翻訳」し、あなたの会社パターン(一人社長、夫婦経営など)に合わせた「正解の書き方」**を、カンニングペーパーのようにそのまま使える形でお伝えします。

▼ この記事のポイント ▼

  • ✅ この書類がないと定款認証は絶対に受けられない
  • ✅ 実質的支配者とは「株を50%超持っている人」が基本
  • ✅ 一人社長なら「第1順位」を選べばOK
  • ✅ 法人が出資する場合は「その奥にいる個人」まで遡る

※なお、この書類を含む「定款認証の必要書類一式」を確認したい方は、

『定款認証の必要書類リスト(親記事)』

を併せてご覧ください。

そもそも「実質的支配者リスト」とは?なぜ提出が必要?

書き方の前に、なぜこんな書類を書かされるのか、30秒だけ背景を知っておきましょう。目的を知れば、書くべき内容がスッと頭に入ります。

[画像指示: マネーロンダリングを防ぐ盾のイメージイラスト (推奨ファイル名: anti-money-laundering-concept.jpg, alt: 実質的支配者申告の目的)]

💡 3秒でわかるまとめ

  • 会社が「犯罪の隠れ蓑」になるのを防ぐため。
  • 支配権を持つ人が「暴力団関係者」でないか確認している。

【概要】目的は「暴力団排除」と「マネロン対策」

この書類の正式名称は「実質的支配者となるべき者の申告書」と言います。

導入された背景は、国際的な**「マネーロンダリング(資金洗浄)対策」と「テロ資金供与対策」です。かつては、誰が本当のオーナーか分からない「ペーパーカンパニー」を作り、そこで不正な資金移動を行う手口が横行していました。

それを防ぐために、「会社を作る時は、背後にいる真のオーナー(実質的支配者)を公証人に申告しなさい。そして、その人が反社会的勢力(暴力団等)でないことを誓約しなさい」というルールができたのです。

つまり、この書類は「私は怪しい者ではありません宣言書」**だと思ってください。

【誰のこと?】「実質的支配者」の定義(株式の持ち株比率で決まる)

では、誰がその「支配者」に当たるのでしょうか? 社長(代表取締役)でしょうか?

いいえ、会社法やこの制度においては、役職ではなく**「議決権(株式)の保有割合」**で決まります。

基本ルール:

会社の議決権の「50%を超える」株を持っている自然人(個人)

これが原則です。もし50%超を持つ人がいなければ、「25%超」を持つ人にスライドします。つまり、「会社を実質的にコントロールできる力を持っている株主」のこと指します。

【記入例:その1】最も多い「一人社長(株100%保有)」の書き方

それでは実践です。ここからは、会社設立の8割以上を占める**「発起人が私一人で、株も100%私が持つ」**というケースの書き方を解説します。

[画像指示: 一人社長向けの申告書記入例(第1順位にチェック、住所氏名記載) (推奨ファイル名: filling-example-single-owner.jpg, alt: 実質的支配者申告書 一人社長 書き方)]

💡 3秒でわかるまとめ

  • 迷わず「1. 直接保有」と「(1)50%を超える」にチェック。
  • 自分の住所・氏名・生年月日を書けば完了。

【判定】あなたは「第1順位(50%超)」に該当する

一人社長の場合、あなたが会社の株式を100%持っています。つまり「50%を超える議決権を直接持っている人」に該当します。

申告書の様式には、「該当事由」を選ぶ欄があります。

チェックを入れる場所:

1. 第1号(50%超の議決権の直接・間接保有)

 ↓

(1) 50%を超える議決権の直接保有

ここを選択してください。これが「私が絶対的なオーナーです」という意味になります。

【書き方】住所・氏名・生年月日と「暴力団該当なし」のチェック

次に、具体的な人物情報を記入します。

1. 氏名・フリガナ

あなたの名前を正確に書きます。

2. 住所

印鑑証明書と一字一句同じ表記で書いてください(「1-2-3」などを「1丁目2番3号」と書く必要があるかは、添付する印鑑証明書に合わせます)。

3. 生年月日

西暦・和暦どちらでも構いませんが、間違いのないように。

4. 暴力団員等への該当の有無

ここが最重要です。必ず**「無」**にチェックを入れてください。もし「有」にチェックを入れると、当然ながら認証は受けられません。

一人社長の場合は、これだけで完成です。驚くほど簡単ですよね。しかし、これが「共同経営」や「法人が出資する場合」になると、少しパズルが複雑になります。次の章で見ていきましょう。

【記入例:その2】夫婦・共同経営(50:50など)の場合

最近増えているのが、夫婦で半分ずつ出資したり、ビジネスパートナーと資金を出し合うケースです。この場合、誰の名前を書けばいいのでしょうか?

[画像指示: 50%対50%の円グラフと、二人の人物が並んでいるイラスト (推奨ファイル名: beneficial-owner-joint-venture.jpg, alt: 共同経営の実質的支配者)]

💡 3秒でわかるまとめ

  • 50:50の場合、一人だけ書くのは間違い。
  • 「25%を超える人」全員の名前を書く必要がある。

【判定】持ち株25%超の全員が「実質的支配者」になる

ここで再びルールを確認しましょう。

原則は「50%超」ですが、もし50%を超える人がいない場合(50:50など)はどうなるか? その場合は、**「25%を超える議決権を持っている人全員」が実質的支配者となります。

例えば、夫(代表取締役)が50株、妻(取締役)が50株持っているとします。どちらも単独では「50%超」ではありません。しかし、どちらも「25%超」には該当します。

したがって、この場合は「夫と妻、両方の名前」**を申告書に記入する必要があります。

チェックを入れる場所:

2. 第2号(25%超の議決権の直接・間接保有)

 ↓

(1) 25%を超える議決権の直接保有

ここを選択し、記入欄を増やして二人の情報を書き込みます。

【注意点】代表取締役ではなく「株主」を書くのがルール

よくある間違いが、「株は50:50だけど、社長は夫だから夫の名前だけ書けばいいだろう」という判断です。

実質的支配者の判定に、**「役職」は関係ありません。あくまで「株をどれだけ持っているか」という数字だけで機械的に判断されます。

もし友人3人で「34%:33%:33%」で出資する場合はどうなるでしょうか? 全員が25%を超えているため、「3人全員の名前」**を書くことになります。リストが長くなりますが、それが正解です。

【記入例:その3】法人が出資する場合(子会社設立)の難所

最後は、発起人が「株式会社〇〇」のような法人であるケースです。いわゆる子会社設立です。

「実質的支配者は株式会社〇〇です」と書きたくなりますが、それはNGです。

[画像指示: 親会社(法人)の後ろにいる株主(個人)を透視するイラスト (推奨ファイル名: corporate-shareholder-structure.jpg, alt: 法人株主の実質的支配者判定)]

💡 3秒でわかるまとめ

  • 申告書には「生身の人間(自然人)」しか書けない。
  • 親会社の株主まで遡って、個人の名前を特定する。

【判定】親会社の株主まで遡る「自然人」の特定方法

この制度の大原則は、**「実質的支配者 = 自然人(生身の人間)」でなければならないということです。法人そのものは支配者になれません。

ではどうするか?

発起人である「親会社」の株主名簿を見て、「その親会社の株を50%超持っている個人」**を探し出し、その人の名前を書きます。

まるでマトリョーシカ人形のような作業です。「新設会社の株主は法人A」→「法人Aの株主は個人B」→「じゃあ実質的支配者は個人Bだ!」というように、最終的な個人に行き着くまで遡ります。

【例外】上場企業が親会社の場合は「代表者」を書く特例

「親会社が上場企業だったらどうするの? 株主なんて何万人もいるし、毎日変わるじゃないか!」

鋭い質問です。親会社が上場企業の場合、特定の支配者を決めることが困難です。そのため、特例として**「その上場企業の代表者(代表取締役)」**を実質的支配者とみなして記載することが認められています。

チェックを入れる場所(上場企業の子会社等の場合):

4. 第4号(事業経営を支配する自然人)

 ↓

(1) 代表者

このパターンは判断が難しいため、必ず公証人との事前確認で「親会社は上場企業ですが、代表者の記載でよろしいですか?」と確認を入れるようにしてください。

書類のダウンロード先と公証役場への提出タイミング

書き方が分かったところで、実際の書類を入手し、提出するまでの流れを確認して終わりましょう。

[画像指示: パソコンで書類をダウンロードし、メールに添付する様子 (推奨ファイル名: download-submission-form.jpg, alt: 実質的支配者申告書の提出)]

💡 3秒でわかるまとめ

  • 日本公証人連合会のサイトからDL可能。
  • 当日持参ではなく、メール確認時に送るのがベスト。

【書式】日本公証人連合会HPまたはWordテンプレの入手

申告書の様式は、日本公証人連合会の公式サイトからダウンロードできます。「実質的支配者となるべき者の申告書」で検索すればすぐに見つかります。

PDF版とWord版がありますが、パソコンで入力できるWord版をお勧めします。手書きでも構いませんが、修正が必要になった場合に手間がかかるためです。

【提出】事前確認のメールに添付するのがベスト

作成した申告書は、いつ出せばいいのでしょうか?

正解は、**「定款案の事前確認をお願いするメールに添付して送る」**です。

多くの人が「定款の中身」ばかり気にしますが、公証人はこの申告書の内容もチェックする必要があります。当日いきなり「書いてきました!」と出すのではなく、事前にメールで「この内容で問題ないでしょうか?」と見せておくのが、デキる起業家の振る舞いです。

👨‍⚖️

行政書士 小野馨の「ここだけの話」

「もし書き間違えたらどうしよう…逮捕される?」なんて心配はいりません。

この申告書は、あくまで「自己申告」です。嘘をつくのは論外ですが、書き方の勘違いであれば、公証人が「ここは第2号に直してくださいね」と優しく教えてくれます。

あまり難しく考えすぎず、「現時点でのオーナー構成」を素直に書けば大丈夫です。

たった1枚の紙で、つまづかないために

実質的支配者リストは、名前こそ厳ついですが、中身は単純なアンケートのようなものです。

この記事の「記入例」を見ながら、該当する箇所にチェックを入れれば、5分もかからずに完成します。この書類をサッと仕上げて、会社設立のメインイベントである定款認証をスムーズにクリアしてください。

🚀 今日から始める「3つの行動」

  • 自分の会社の「株の持ち分(%)」を再確認する
  • 公証人連合会HPから「申告書(Word版)」をダウンロードする
  • 判定に迷う場合は、プロに「正しい書き方」を無料で相談してみる

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本記事内で使用している画像は、すべて生成AIによって作成されたイメージです。

記事の内容は執筆時点の法令・情報に基づいています。法改正や自治体の条例により最新の要件と異なる場合がありますので、実務の実行にあたっては、必ずご自身で管轄の行政庁または専門家へ確認を行ってください。

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