「持ち物は財布とハンコだけでしょ?」
その油断が、公証役場の窓口で「認証不可」を突きつけられ、設立予定日を変える羽目になる最大の原因です。

「電子定款の作成も終わったし、あとは公証役場で受け取るだけだ!」
そう思って気を抜いていませんか?
実は、会社設立手続きの中で最も「アナログ」で、かつ「厳格なルール」が支配している場所こそが公証役場です。
たった一つの忘れ物、たった一枚のCD-Rの不備で、あなたは門前払いされ、その日の会社設立は不可能になります。
この記事では、行政書士である私が普段、クライアントに渡している「門外不出の持ち物リスト」と、公証人と対峙した際の「一発クリアの振る舞い」を完全公開します。
これを読めば、あなたは公証役場で緊張することなく、堂々と「社長としての第一歩」を踏み出せるはずです。
▼ この記事のポイント ▼
- ✅ CD-Rは「新品」でなければならない本当の理由
- ✅ 現金は「52,000円」では足りない!正確な内訳
- ✅ 代理人が行く場合の「委任状」の落とし穴
- ✅ 所要時間20分を無言で乗り切るシミュレーション
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【準備編】公証役場に電子定款認証に行く前に確認すべき「3つの前提」
公証役場は、コンビニのように「行けばなんとかなる場所」ではありません。
ここは元裁判官や元検察官である「公証人」が法律の番人として鎮座する、極めて厳粛な場です。
持ち物を揃える以前に、以下の3つの前提をクリアしていなければ、そもそも土俵に立つことすら許されません。
まずは、基本中の基本を確認しましょう。
[画像指示: スーツを着た起業家が公証役場の看板の前で時計を見ている様子 (推奨ファイル名: notary-office-entrance.jpg, alt: 公証役場の入り口)]完全予約制の罠(アポなし突撃はNGな理由)
公証役場での定款認証は、原則として「完全予約制」であり、事前のオンライン申請と日程調整が完了していない限り、当日いきなり訪問しても対応してもらえない手続きのことです。
「役所なんだから、窓口に行けば番号札で呼んでくれるだろう」
実は、多くの起業家がこの勘違いをして、予約なしで突撃し、受付で静かに断られるという失態を演じています。
私の依頼者でも過去に、「急いでいるから」と直接公証役場に向かおうとした方がいましたが、私は電話口で必死に止めました。
なぜ予約が必須なのか。
それは、公証人が定款の内容を事前にチェック(リーガルチェック)し、法務省のシステム上で「認証」の準備を整えるために、物理的な時間が必要だからです。
具体的には、以下のフローを経て初めて「訪問」が許可されます。
1. テレビ電話または対面認証の希望を伝える
2. 法務省の登記・供託オンライン申請システムで定款データを送信する
3. 公証人(または書記)から「内容確認OK」の連絡が入る
4. **電話で訪問日時を確定させる**
極論を言えば、この「4番」の電話予約が完了していない段階で公証役場に行っても、あなたの定款データはシステムの中で眠ったままであり、公証人は何もできません。
必ず、事前に電話で「〇月〇日の〇時に伺います」という確約を取り付けてください。
繁忙期(3月や12月)は1週間先まで予約が埋まっていることも珍しくないため、設立希望日がある場合は、逆算して早めに動くのが生存戦略です。
オンライン申請済みか?(持参するのは「データ」ではなく「空のメディア」である理由)
ここでの「オンライン申請」とは、公証役場に行く前に、法務省の専用ソフトを使って電子署名付きの定款PDFを送信しておく手続きのことです。
よくある誤解がこれです。
「電子定款なんだから、USBメモリに定款のPDFを入れて持っていけばいいんでしょ?」
あえて厳しいことを言いますが、その認識では窓口で「申請が来ていませんね」と言われて終了です。
公証役場での「受け取り」の本質は、持参したメディアにデータを書き込んでもらうことではなく、「事前にネットで送ったデータが正しいことを本人確認し、そのデータの『真正性』を証明してもらうこと」にあります。
つまり、あなたが当日に持参するCD-RやUSBメモリは、定款データを入れるためのものではなく、**「認証後のデータを受け取って持ち帰るための箱」**なのです。
顧客:「先生、USBに定款PDFを保存しました!これで完璧ですよね?」
私:「いえ、それは違います。そのUSBは『空(から)』にして持っていってください。定款データは、今から私のパソコンからオンラインシステムで送信します。」
顧客:「えっ?じゃあ、僕は空っぽのUSBを持っていくんですか?」
私:「その通りです。公証人が認証済みのデータをそこに入れて返してくれるんです。」
この仕組みを理解していないと、当日パニックになります。
「事前送信(申請)」と「当日の受け取り」は別物だと叩き込んでください。
申請をしていないのにメディアだけ持って行っても、公証人は「認証すべきデータ」を持っていません。
管轄の確認(本店所在地と公証役場の絶対ルール)
管轄の確認とは、会社の本店所在地と同じ都道府県内にある公証役場でなければ、定款の認証ができないという法的ルール(公証人法)のことです。
これは意外と盲点です。
例えば、あなたが東京都町田市(東京の端)に本店を置く会社を作るとします。
すぐ近くに「相模原公証役場(神奈川県)」があったとしても、そこでは認証できません。
必ず「東京都内」の公証役場に行く必要があります。
「近いから」「空いているから」という理由で、県境を越えた公証役場を予約してしまうと、当日になって「管轄外です」と告げられ、全ての手続きが白紙に戻ります。
特に、大阪と兵庫、東京と神奈川・千葉・埼玉の境界エリアで起業される方は要注意です。
**【正しい公証役場の選び方】**
* **東京都に本店** → 東京都内のどの公証役場でもOK(例:新宿、丸の内、渋谷など)
* **大阪府に本店** → 大阪府内のどの公証役場でもOK(例:梅田、難波など)
* **NG例** → 東京都港区に本店があるのに、横浜の公証役場に行く。
誤解を恐れずに言えば、同じ都道府県内であれば、どこの公証役場を選んでもサービス内容は同じです。
ただし、「対応が親切」「アクセスが良い」「予約が取りやすい」といった差はあります。
私はいつも、クライアントのオフィスから最も行きやすく、かつ対応がスムーズな公証役場をピンポイントで指定しています。
この「場所選び」もまた、無駄な移動時間を削るための重要な生存戦略の一つです。
行政書士 小野馨の「ここだけの話」
公証役場によっては、事前のオンライン申請をした後に「FAXで定款の下書きを送ってください」と言われることがあります。「え、電子なのにFAX?」と思うかもしれませんが、これは公証人が事前に誤字脱字を目視でチェックしてくれるという「親切心」です。面倒くさがらずに対応しましょう。これで当日の訂正リスクがほぼゼロになります。
💡 3秒でわかるまとめ:
- 必ず電話で「訪問日時」を確定させること(アポなしは門前払い)。
- 定款データは事前にオンラインで送信しておくこと。
- 公証役場は「本店と同じ都道府県内」から選ぶこと。
【完全リスト】当日の持ち物チェックシート(CD-R・現金・印鑑)
準備が整ったら、いよいよ「当日の装備」を整えます。
公証役場では、コピー機を借りたり、近くのコンビニに走ったりすることは基本的に「恥」だと思ってください。
プロの起業家として、スマートに手続きを終えるための「完全装備」を伝授します。
以下のリストをスクリーンショットに撮り、出発前に必ずチェックしてください。
新品のCD-Rか?(USBメモリが拒否されるケースと、その回避策)
持ち物の最重要アイテムである「電子定款保存用メディア」とは、**認証された電子定款のデータを受け取るために持参する、ウィルス未感染かつデータの入っていない空のCD-R(またはUSBメモリ)**のことです。
「今どきCD-R? USBメモリじゃダメなの?」
誰もがそう思います。しかし、ここには公証役場特有の「セキュリティ事情」が絡んでいます。
実は、USBメモリはウィルス感染のリスクがあるため、多くの公証役場(特に地方や保守的な役場)では**「未開封の新品CD-Rに限る」**という運用を続けているケースがあるのです。
私の経験上、USBメモリを持参して「セキュリティポリシーにより使用できません」と断られ、慌てて近くの電気屋を探して走り回った起業家を何人も見てきました。
このタイムロスは致命的です。
また、CD-Rであれば何でも良いわけではありません。
以下の条件を満たす必要があります。
* **種類:** CD-R(CD-RWは不可の場合あり)
* **状態:** 新品・未開封(または完全にデータが空であること)
* **枚数:** 予備を含めて2枚(書き込みエラー対策)
「ISO規格がどうこう…」と難しいことを考える必要はありません。
家電量販店やコンビニで売っている一般的なCD-Rで十分です。
最近はUSBメモリ対応の公証役場も増えていますが(特に都心部)、**「生存戦略」としてはCD-Rを選ぶのが正解**です。
なぜなら、CD-Rを拒否する公証役場は存在しないからです。
「大は小を兼ねる」ではありませんが、「古い規格は新しい規格のリスクを回避する」のです。
現金52,000円の内訳(クレジットカード不可の現実と小銭の重要性)
公証役場で支払う費用とは、**定款認証手数料(約3万〜5万円)に加え、定款の謄本交付手数料やCD-R書き込み手数料を含めた、現金のみで支払うべき総額**のことです。
「手数料は5万円って聞いたけど?」
この認識で5万円札1枚だけ財布に入れていくと、窓口で冷や汗をかくことになります。
実際には、以下の細かい費用が加算されるからです。
**【費用のリアルな内訳(資本金300万円未満の合同会社・株式会社の例)】**
| 項目 | 金額(目安) | 備考 |
|---|---|---|
| 定款認証手数料 | 30,000円〜50,000円 | 資本金額によって変動 |
| 謄本交付手数料 | 約1,500円〜2,000円 | 2通取得する場合(250円×枚数) |
| 電磁的記録保存手数料 | 300円 | CD-Rへの書き込み代 |
| 合計持参額 | 約52,000円〜53,000円 | ※全て現金 |
ここで重要なのは、**「クレジットカードや電子マネーは一切使えない」**という点です(一部例外を除くが、ほぼ不可)。
さらに、公証役場ではお釣りの準備が少ないこともあります。
万札を出すと、書記官の方が困った顔をして金庫へ走る…という気まずい空気になりがちです。
私はいつもクライアントにこう伝えています。
「千円札を多めに、そして小銭も用意して、53,000円ほど財布に入れておいてください。」
この「見えないレシート」を予測して準備できるかどうかが、経営者としての段取り力を示します。
身分証明書と印鑑(「個人の実印」が必要な場面と不要な場面)
当日の本人確認に必要なセットとは、**顔写真付きの身分証明書(運転免許証等)と、発行後3ヶ月以内の印鑑登録証明書、そしてそれに対応する個人の実印**のことです。
「会社の印鑑(会社実印)はいらないの?」
よくある質問ですが、公証役場での定款認証の段階では、**会社の実印は必須ではありません**。
なぜなら、まだ会社は存在しておらず、定款を作るのは「発起人(あなた個人)」だからです。
ここで証明すべきは、「発起人であるあなたが、間違いなくあなた自身であること」です。
**【必須アイテム】**
1. **印鑑登録証明書(個人):** 発行から3ヶ月以内のもの。定款認証用に1通必要ですが、その後の法務局への登記申請でも1通使うため、役所で**「2通」**取っておくのがプロの定石です。
2. **実印(個人):** 上記の証明書と同じ印鑑。これがなければ、訂正印が押せず、即アウトです。
3. **運転免許証(またはマイナンバーカード):** 顔写真での本人確認に使用します。
ここで注意すべき「時限爆弾」があります。
それは、**「電子署名に使った印鑑証明書」と「当日持参する印鑑証明書」の整合性**です。
もし、電子署名をした後に引っ越しをして住所が変わっていたり、実印を改印していたりすると、データと当日の証明書の内容が食い違い、認証を受けられません。
「電子署名をした日」と「公証役場に行く日」の間には、住所変更や改印を行わないでください。
これはシステム上、誤魔化しがきかない致命的なエラーになります。
代理人が行く場合の追加書類(委任状という名の命綱)
代理人受取とは、**発起人(あなた)本人が公証役場に行けず、家族や行政書士などが代わりに行く場合に必要となる、厳格な権限委任の手続き**のことです。
忙しい起業家にとって、平日の昼間に公証役場に行くのはハードルが高いものです。
そこで「妻に行ってもらおう」「パートナーに行かせよう」と考える方も多いでしょう。
しかし、ここには最大の落とし穴があります。
単に「行ってきて」と頼むだけでは、窓口で100%拒否されます。
代理人が行く場合、以下の**「完全セット」**が追加で必要になります。
1. **委任状(定款認証用):** あなた(発起人)の実印が押されたもの。
2. **発起人の印鑑証明書:** 発行3ヶ月以内。
3. **代理人の身分証明書:** 免許証など。
4. **代理人の認印:** 訂正等に必要(念のため実印推奨)。
特に**「委任状」**の記載内容は一言一句間違ってはいけません。
「定款の認証に関する一切の件」といった包括的な文言に加え、定款の案(嘱託する定款の内容)を特定できる情報を正確に記載する必要があります。
もし委任状に不備があれば、その場で修正することは不可能です(本人の実印がないため)。
代理人を立てる場合は、**「本人が行く場合の3倍のリスクがある」**と認識し、委任状の作成には細心の注意を払ってください。
私の経験上、最もトラブルが多いのがこの「代理人派遣」のパターンです。
行政書士 小野馨の「ここだけの話」
実は、印鑑証明書は「定款認証用」と「登記申請用」でそれぞれ有効期限の起算点が異なります。定款認証では「認証日」から遡って3ヶ月以内。登記申請では「申請日」から遡って3ヶ月以内です。あまりに早く取りすぎると、登記申請の時に期限切れになる「時限爆弾」が作動します。公証役場に行く直前に2通取得するのが、最も安全で無駄のない生存戦略です。
💡 3秒でわかるまとめ:
- メディアは「新品のCD-R」が最強(USBはリスクあり)。
- 現金は約52,000円+小銭を用意(クレカ不可)。
- 代理人を立てるなら「委任状」の不備は絶対に許されない。
【当日シミュレーション】到着から認証完了までの20分間
いよいよ決戦の日です。
公証役場のドアを開けると、そこは静まり返った図書館のような、あるいは病院の待合室のような独特の緊張感が漂っています。
多くの起業家がここで「場違いな場所に来てしまった」と萎縮しますが、安心してください。
あなたはすでに完璧な準備を整えています。
ここでは、到着してから「認証済み定款」を受け取って退室するまでの、約20分間の出来事を分単位でシミュレーションします。
「何が起こるか知っている」ことこそが、最大の鎮静剤です。
受付〜公証人との面談(何を聞かれるのか?「嘱託人」としての振る舞い)
公証役場での面談とは、**事前にオンラインで送付された電子定款の内容について、発起人(あなた)が間違いなく自分の意思で作成したものであることを、公証人が対面で最終確認する法的プロセス**のことです。
「面談って、何か難しい法律の質問をされるんですか?」
「事業計画についてプレゼンしなきゃいけないの?」
私のクライアントも、当日はまるで就職面接に行くかのような緊張面持ちで電話をかけてきます。
しかし、実はここで聞かれることは極めて事務的で、シンプルです。
公証人が確認したいのは、「あなたのビジネスモデル」ではなく、「あなた自身がそこに存在し、会社を作る意思があるか」という一点のみだからです。
実際の現場での会話劇を再現してみましょう。
**【リアル会話シミュレーション】**
**受付事務官:**「〇〇時に予約の田中様ですね。身分証と印鑑証明書をお預かりします。」
(数分後、個室またはブースに呼ばれる)
**公証人:**「やあ、田中さん。今回の株式会社設立の定款ですね。事前にデータは確認済みです。」
**あなた:**「はい、よろしくお願いいたします。」
**公証人:**「本店は東京都渋谷区〇〇、資本金は100万円、事業目的はITコンサルティング他ですね。間違いありませんか?」
**あなた:**「はい、間違いありません。」
**公証人:**「では、こちらの嘱託人署名簿に署名をお願いします。」
拍子抜けするかもしれませんが、基本的にはこれだけです。
しかし、ここで挙動不審になったり、質問に対して曖昧な返答をしたりすると、公証人は「名義貸し」や「犯罪収益移転防止法上の疑義」を疑う義務が生じます。
堂々と、相手の目を見て「はい」と短く答える。
余計な世間話は不要です。
あくまで「事務手続きの確認」であることを理解し、スムーズに進行に協力する姿勢を見せることが、最短で終わらせるコツです。
もし公証人が年配の方で、少し世間話をしてきたとしても、笑顔で相槌を打つ程度に留め、手続きを最優先してください。
署名・捺印の儀式(ここでのミスは修正がきかない)
署名・捺印の儀式とは、**公証人が用意した「嘱託人署名簿」や「電磁的記録の保存に関する委任状(復代理用)」等の書類に、個人の実印を鮮明に押印し、手続きを法的に確定させる瞬間**のことです。
「ただハンコを押すだけでしょ?」
そう思われるかもしれませんが、公証役場での押印は、人生で最も緊張する押印の一つになるでしょう。
なぜなら、公証人の目の前で、失敗が許されない書類に、朱肉をたっぷりつけて押さなければならないからです。
ここで手が震えて印影が二重になったり、かすれたりすると、最悪の場合「押し直し(訂正印)」を求められ、書類が朱色で汚れていくことになります。
**【絶対に失敗しない押印の作法】**
1. **印鑑マットを確認する:** 必ずゴム製のマットが敷かれているか確認してください。なければ「マットをお借りできますか?」と聞きましょう。これがないと綺麗に押せません。
2. **「の」の字を書くように:** 印鑑を垂直に下ろし、紙に接したら、ゆっくりと「の」の字を書くように重心を移動させます。グリグリと回してはいけません。
3. **確認してから離す:** すぐにパッと離さず、紙を押さえている手で紙がズレないように固定しながら、ゆっくりと垂直に引き上げます。
また、ここで押すのは「会社の実印」ではなく、**「個人の実印」**です。
間違って会社印を出してしまうと、公証人に「いえ、個人の実印をお願いします」と冷静に突っ込まれます。
この些細なミスが、あなたの「経営者としての信頼度」を(公証人の心の中で)微妙に下げてしまいます。
「どのハンコを出すべきか」を事前にシミュレーションし、ケースから出しておくとスマートです。
この「署名・捺印」が完了すれば、手続きの9割は終わったも同然です。
謄本の受け取り(2通もらうべき理由と、その後の法務局提出への繋がり)
謄本の受け取りとは、**公証人の認証文が入った定款の写し(紙)と、データが入ったCD-Rを受け取り、最後に手数料を支払うクロージングの場面**のことです。
ここで行政書士として強く推奨したい「生存戦略」があります。
公証役場の受付で「定款の謄本(写し)は何通必要ですか?」と聞かれたら、迷わず**「2通ください」**と答えてください。
多くの初心者は「え? 1通あればいいんじゃないの?」と考え、数百円をケチって1通にしてしまいます。
しかし、これは後で必ず後悔します。
**【なぜ2通必要なのか?】**
* **1通目(法務局提出用):** 会社設立登記の際、法務局には「CD-R(または磁気ディスク)」の内容を提供しますが、場合によっては紙の謄本を参照資料として求められることや、補正対応で使うことがあります(現在はオンライン登記申請が主流ですが、書面申請の場合は必須)。
* **2通目(銀行・保存用):** 会社設立後、**法人口座を開設する際に、銀行から「認証済みの定款のコピー」を求められます**。また、税務署への届出や、許認可申請でも定款の写しは頻繁に使います。
もし1通しか持っていないと、その大切な原本を銀行に提出してしまったり、コピーを取るためにホッチキスを外してしまったり(※認証定款はホッチキスを外すと無効になります)といった事故が起きます。
「1通は金庫で保管、もう1通は実務で使い倒す用」として確保するのが、リスク管理の鉄則です。
CD-Rを受け取り、謄本を2通受け取り、領収書をもらって退室する。
これで、公証役場でのミッションはコンプリートです。
所要時間はスムーズにいけば15分〜20分。あっという間です。
行政書士 小野馨の「ここだけの話」
謄本を受け取る際、必ずその場で「認証文の日付」と「ページ数」を確認してください。ごく稀にですが、公証役場側での製本ミス(ページの落丁や順番間違い)があります。家に帰ってから気づいても、また出向いて差し替えてもらう手間が発生します。「プロは現場で検品する」。これを徹底しましょう。
💡 3秒でわかるまとめ:
- 面談は「本人確認」がメイン。堂々と事務的に対応せよ。
- ハンコは「個人の実印」。印鑑マットを使い、慎重に押印せよ。
- 定款謄本は「2通」取得が鉄則(銀行口座開設用)。
もしものトラブル対処法(忘れ物・訂正・システム障害)
どれだけ完璧に準備しても、魔物は潜んでいます。
「ハンコを忘れた!」「定款に誤字が見つかった!」
そんな絶体絶命のピンチに陥った時、パニックになって諦めるか、冷静に対処してリカバリーできるか。
ここに経営者としての「底力」が試されます。
現場で使える「裏ワザ」とも言えるトラブル対処法を授けます。
印鑑を忘れた・間違えた時の「捨印」の魔力
印鑑トラブルにおける「捨印(すていん)」とは、**書類の欄外にあらかじめ実印を押しておくことで、軽微な誤字脱字があった場合に、公証人の職権で訂正してもらうことを許可する「事前承諾のハンコ」**のことです。
まず、「実印そのものを家に忘れた」場合。
これは残念ながら**「帰宅」一択**です。
公証役場では、実印がない限り何もできません。速やかに謝罪し、予約を取り直してください。
しかし、「委任状の住所を一文字間違えていた」や「捨て印を押し忘れていた」というレベルなら救済措置があります。
もし、あなたが代理人として行き、発起人(依頼者)の実印を持っていない場合でも、持参した委任状に**「捨印」**が押してあれば、その場で事務官が訂正してくれます。
逆に、捨印がない委任状で誤字が見つかると、一度持ち帰って発起人に押し直してもらう必要があり、その日の認証は不可能です。
**【サバイバル・テクニック】**
書類を作成する際は、どんなに自信があっても、必ず書類の上部余白に「捨印」を押しておくこと。
これは「間違いを認める」ことではなく、「万が一の際、現場での修正権限を与える」という高度なリスクヘッジです。
公証役場の職員も、捨印があると「ああ、この人はわかっているな」と安堵し、スムーズに対応してくれます。
「捨印は恥ではない、保険である」と心得てください。
定款内容に誤字が見つかった時の緊急対応(誤記証明書とは)
認証直前、あるいは認証後に発覚した定款の誤字に対する「誤記証明書」とは、**公証人が「これは明らかに単純な入力ミス(誤記)であり、本来の意図とは異なる」ことを証明し、定款の効力を維持したまま訂正するための公的書類**のことです。
例えば、定款の中で「株式会社」と書くべきところを「株式会社会」と打ってしまったとします。
通常、認証後の定款は一文字たりとも変更できません。
しかし、このような明白な誤字のために、再度3万円〜5万円の手数料を払ってやり直すのはあまりに酷です。
そこで公証人に相談すると、**「誤記証明書」**を作成してくれる場合があります(無料または数千円程度)。
これを定款に合綴(がってつ)することで、「株式会社会」は「株式会社」として読み替えられ、法務局でも問題なく受理されます。
**【注意点】**
ただし、これが通用するのは「客観的に見て明らかな誤字」だけです。
「資本金を100万円にするつもりだったけど、やっぱり500万円にしたい」といった**「意思の変更」には使えません**。
この場合は、残念ながら定款の作り直し(再認証・手数料再払い)となります。
ミスが発覚した瞬間、青ざめるのではなく、即座に「先生、これは誤記証明で対応可能でしょうか?」と交渉する。
この知識があるだけで、数万円の損失と数日の遅れを防ぐことができます。
行政書士 小野馨の「ここだけの話」
公証役場のシステム障害や、マイナンバーカードの読み取りエラー等で、どうしても電子定款が処理できないトラブルが稀に起きます。その場合、最終手段として「紙の定款」に切り替えることも可能ですが、そうすると「印紙代4万円」が復活してしまいます。「今日は諦めて、システム復旧を待つ」か「4万円払ってでも今日設立することにこだわるか」。その決断をするのも経営者の仕事です。
💡 3秒でわかるまとめ:
- 実印忘れは即撤退。ただし「捨印」があれば軽微なミスは救える。
- 定款の誤字は「誤記証明書」でリカバリーできるか交渉せよ。
- システムトラブル時は「4万円(紙)」vs「延期」の決断を迫られる。
あなたが手にする「未来」:定款認証はゴールではない
ここまで、公証役場での立ち回りを徹底的に解説してきました。
しかし、誤解しないでください。
**定款認証は、会社設立という登山における「登山口」に立ったに過ぎません。**
無事に公証役場を出たあなたの手元には、認証済みの定款とCD-Rがあるはずです。
その重みを感じてください。
それは単なる書類ではありません。
「私はこれから、社会に対して価値を提供し、責任を持って事業を行う」という、あなた自身の**「覚悟の結晶」**です。
多くの人が手続きの面倒さに忙殺され、この「覚悟」を忘れてしまいます。
しかし、あなたは違います。
ここまで入念に準備し、リスクを想定し、プロとしての振る舞いを予習しました。
その姿勢があれば、この後の「法務局への登記申請」も、「銀行口座開設」も、そして待ち受ける「日々の経営課題」も、必ず乗り越えていけるはずです。
さあ、胸を張って公証役場を出ましょう。
そして、その足で法務局へ向かう準備を始めましょう。
あなたの会社が、10年後も、20年後も輝き続ける「生存する企業」になることを、私は確信しています。
🚀 公証役場から帰ったら即やる「3つの行動」
- 資本金の払込み(個人の口座に入金・記帳)を行う
- 登記申請書類(設立登記申請書など)を最終チェックする
- 法務局へ行く日(会社設立日)を決める
>>【極秘】手続きだけで満足していませんか?設立1年目の「死亡率」を下げる裏マニュアルはこちら
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⚠️ 免責事項と画像について
- 本記事内で使用している画像は、すべて生成AIによって作成されたイメージです。
- 記事の内容は執筆時点の法令・情報に基づいています。法改正や自治体の条例により最新の要件と異なる場合がありますので、実務の実行にあたっては、必ずご自身で管轄の行政庁または専門家へ確認を行ってください。
会社設立や電子定款認証のスペシャリスト!開業17年・年間実績500件以上。実は、電子定款の制度ができた10年以上前から電子定款認証の業務を行なっているパイオニアです!他との違いは、まず定款の完成度!内容はモデル定款のモデルと言われ全国数百箇所の公証人の目が入っている優れもの!そして電子署名はまるでサインのようなかっこいい電子署名です!その電子定款であなたの大切な会社設立を真心込めて応援します!
