電子定款・手続き

【完全保存版】株式会社の定款作成マニュアル|絶対的記載事項から条文例・認証まで行政書士が全解説

記載事項を一つでも間違えると、公証役場で認証されず、全て作り直しになります。

行政書士 小野馨
こんにちは!

行政書士歴20年、5000社以上の会社設立をサポートし、定款作成の現場で「一文字の重み」を見続けてきた小野馨です。

今回は「株式会社の定款作成マニュアル」について、実務の正解を解説します。

「定款なんて、ネットの雛形をコピペすれば終わりだろう」と思っていませんか。

しかし、定款は会社の憲法です。ここに書かれたルールは、設立後の経営、株主との関係、そして税務や許認可にまで直結します。安易なコピペ定款は、将来のトラブルや無駄な登記費用を生む「時限爆弾」になりかねません。

そこで本記事では、法的な要件を完全に満たしつつ、経営者の利益を最大化するための「定款作成の全手順」を網羅しました。絶対的記載事項から認証の流れまで、プロの実務をそのままお渡しします。

▼ この記事のポイント ▼

  • ✅ 絶対に外せない「3つの記載事項」を完全分類
  • ✅ 将来のコストを削減する「戦略的条文」の設計法
  • ✅ 印紙代4万円を節約する電子定款の損益分岐点
  • ✅ 公証役場での認証を「一発パス」する事前確認のコツ

※なお、会社設立の全体像や、電子定款認証サービスの仕組みを知りたい方は、

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株式会社における「定款」とは? 設立手続きでの位置づけ

定款(ていかん)とは、会社を運営していく上での「根本規則」を定めた書面のことです。人間で言えば「戸籍」と「憲法」を合わせたようなものであり、これを作成し公証人の認証を受けない限り、株式会社を設立することは法的に不可能です。まずはその役割と法的効力を正しく理解しましょう。

[画像指示: 定款作成の位置づけを示すフロー図。商号決定→定款作成→認証→資本金払込→登記申請の流れを可視化したもの (推奨ファイル名: articles-incorporation-flow.jpg, alt: 株式会社設立における定款作成のフローチャート)]

定款の法的効力(これがないと会社は生まれない)

定款とは、会社法に基づき作成が義務付けられた、組織の活動規則を定めた「最高法規」のことです。

実務の現場では、多くの起業家が「登記申請書」ばかりを気にされますが、実は登記申請書はあくまで「定款の内容を法務局に届けるための表紙」に過ぎません。会社の実体そのものは定款にあります。会社法第26条により、発起人は株式会社の設立に際して定款を作成し、署名または記名押印しなければならないと定められています。つまり、定款がない会社は存在し得ないのです。

定款の効力は絶大です。一度定款で定めたルールは、社長の一存で勝手に変えることはできません。変更するには「株主総会の特別決議(議決権の3分の2以上の賛成)」という厳格な手続きが必要となり、さらに項目によっては法務局での変更登記(登録免許税3万円〜)が必要になります。「とりあえず」で決めたルールが、後々経営の足を引っ張ることは珍しくありません。例えば、「株券を発行する」と定款に書いてしまえば、実際に紙の株券を印刷・発行する義務が生じ、その管理コストや紛失リスクを負うことになります。

逆に言えば、定款を適切に設計することで、会社法が認める範囲内で「自社に有利なルール」を作ることができます。取締役の任期を伸ばして登記費用を節約したり、相続による株式分散を防ぐ条項を入れたりと、定款は経営を守るための「盾」としての法的効力を持つのです。

決定のタイミングと発起人の役割(誰が作るのか)

定款を作成するタイミングとは、「商号(会社名)・事業目的・本店所在地・資本金額」といった基本事項が確定した後、かつ「資本金の払い込み」を行う前のことです。

順序を間違えてはいけません。よくある間違いが、定款認証を受ける前に、発起人の個人口座へ資本金を振り込んでしまうケースです。実務上、金融機関への出資払込みは「定款作成日(認証日)」以降に行われたものでなければ原則として認められません(※現在は定款作成日以降であれば認証前でも有効とする運用もありますが、原則通りに進めるのが安全です)。したがって、まずは発起人全員で基本事項を合意し、定款案を固めることがスタートラインになります。

定款を作成するのは「発起人(ほっきにん)」です。発起人とは、会社の資本金を出資し、設立手続きを行う人のことです。中小企業の場合、社長自身が100%出資して発起人兼社長になるケースがほとんどでしょう。定款の末尾には、この発起人全員の実印での押印(電子定款の場合は電子署名)が必須となります。

もし発起人が複数いる場合、定款の内容について全員の同意が必要です。出資比率や役員構成でもめたまま定款を作ると、いざ押印という段階で「話が違う」となり、設立がストップしてしまいます。定款作成は、ビジネスパートナーとの最初の契約書を交わすようなものだと認識してください。発起人全員の印鑑証明書を取得し、一字一句間違いのないように住所・氏名を記載する必要があります。

定款認証が必要な理由(なぜ公証人がチェックするのか)

定款認証とは、作成した定款が正当な手続きで作られ、その内容が法令に違反していないことを「公証人」という公務員が証明する手続きのことです。

株式会社の場合、単に定款を作っただけでは効力を持ちません。公証役場へ行き、認証を受けて初めて法的に有効な定款となります(合同会社の場合は認証不要です)。なぜこのような面倒な手続きがあるのでしょうか。それは、株式会社という仕組みが社会に与える影響が大きいためです。出資者(株主)と経営者が分離し、多数の利害関係者が関わる可能性がある株式会社において、その根本ルールである定款が適当に作られたり、偽造されたりしていては、取引の安全が害されます。

公証人は、元裁判官や元検察官などの法律のプロフェッショナルです。彼らが「この定款は確かに発起人の意思に基づいて作成され、内容も会社法に適合している」とお墨付きを与えることで、その後の登記手続きや銀行口座開設がスムーズに進むのです。

実務的な視点で言うと、定款認証は「最初の法務チェック」の役割を果たします。もし認証制度がなければ、法務局での登記申請時に定款の不備が見つかり、補正や却下の嵐になるでしょう。公証人が事前にフィルターをかけることで、登記所の負担を減らし、正確な会社登記を実現しているのです。なお、認証には手数料として約3万円〜5万円(資本金額による)がかかります。これは避けて通れない必要経費です。

💡 3秒でわかるまとめ

  • 定款は「会社の憲法」。作成し認証を受けないと会社は作れない。
  • 作成順序は「基本事項決定」→「定款作成」→「認証」→「資本金払込」。
  • 公証人の認証は、法的適合性を担保するための必須関門。

これだけは外せない!定款の「3つの記載事項」完全解説

定款に記載する文章は、何でも自由に書いていいわけではありません。法律上、記載の重要度によって「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3つに明確に分類されています。これらを混同すると、定款が無効になったり、書いたルールが無視されたりと、致命的なミスにつながります。

[画像指示: 定款の3つの記載事項(絶対的・相対的・任意的)をピラミッド構造または包含関係で図解したもの (推奨ファイル名: articles-incorporation-requirements.jpg, alt: 定款の絶対的記載事項・相対的記載事項・任意的記載事項の分類図)]

絶対的記載事項(商号・目的・本店・資本金・発起人)

絶対的記載事項とは、会社法第27条により定められた、定款に必ず記載しなければならない5つの事項のことです。

これらが一つでも欠けていたり、違法な内容であったりする場合、その定款は全体が無効となります。つまり、認証を受けることすらできません。最も基礎的かつ重要な項目です。

具体的には以下の5点です。

1. 目的(事業内容):

会社が何を行うかです。「適法性」「営利性」「明確性」が求められます。「宇宙海賊」のような違法・公序良俗に反するものは不可です。

2. 商号(会社名):

「株式会社」という文字を入れること、使用できる文字種(漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベット、一部の記号)などの制限があります。

3. 本店の所在地:

最小行政区画(市区町村)まで記載すれば足りますが、実務上は「東京都港区六本木一丁目○番○号」と詳細住所まで記載するか、「東京都港区」として別途発起人決定書で詳細を決めるかの2パターンがあります。

4. 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額:

これからいくらの資本金で会社を作るかです。現在は1円から設立可能ですが、実務上は信用面から一定額(100万円〜など)を設定することが多いです。

5. 発起人の氏名または名称および住所:

印鑑証明書の記載と一字一句、完全に一致している必要があります。「1丁目」を「一丁目」と書くだけでNGになることもあるため、徹底的な確認が必要です。

これらに加え、実務上は「発行可能株式総数」も定款認証の時までに定めておく必要があります(正確には定款認証後の発起人決定でも可能ですが、定款に記載してしまうのが一般的です)。

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行政書士 小野馨の「ここだけの話」

「本店の所在地」は、定款には「東京都〇〇区」といった最小行政区画(市区町村)までにしておくことを強くお勧めします。もし詳細な番地まで定款に書いてしまうと、同じ区内で近距離の引っ越しをしただけでも、定款変更(株主総会決議)が必要になってしまうからです。定款には市区町村まで、詳細な住所は「本店所在地決議書」で定める。これがプロの定石です。

相対的記載事項(譲渡制限・役員任期など戦略的条項)

相対的記載事項とは、定款に記載しなくても定款自体は有効だが、記載しなければその効力が認められない事項のことです。

ここは「会社の守備力」に関わる部分です。記載がなくても会社は作れますが、中小企業の実情に合わせた運営をするためには、事実上の必須項目と言えます。記載しない場合、会社法の「原則ルール」が適用されてしまうからです。会社法の原則ルールは大企業向けに作られている部分も多く、中小企業には不便なことがあります。

代表的なものは以下の通りです。

1. 株式の譲渡制限:

これを記載しないと、株主は自由に株式を他人に売却できてしまいます。見ず知らずの第三者が経営に入り込むのを防ぐため、「株式を譲渡するには会社の承認が必要」という文言を必ず入れます。

2. 取締役の任期の伸長:

会社法の原則では、取締役の任期は2年です。しかし、非公開会社(譲渡制限会社)であれば、定款に定めることで最長10年まで伸ばせます。これにより、2年ごとの重任登記(登録免許税1万円)と手続きの手間を削減できます。

3. 株券不発行の定め:

現在は会社法により「原則不発行」となりましたが、念のため「当会社は株券を発行しない」と記載しておくことで明確化します。

4. 現物出資:

お金ではなく、パソコンや自動車、不動産などを出資する場合、その旨を定款に記載しなければ効力を持ちません。

これらは「書き忘れたから後で」というわけにはいきません。設立後にルールを追加するには定款変更の手続きが必要になり、余計なコストがかかります。最初からしっかり設計しておくべき項目です。

任意的記載事項(事業年度・定時株主総会の時期)

任意的記載事項とは、定款に記載しなくても有効であり、かつ公序良俗や会社法の強行規定に反しない限り、自由に定めて記載できる事項のことです。

ここには、会社の事務運営上のルールを記載します。定款に書いておけば「明確なルール」として機能しますが、逆に言うと、変更するたびに定款変更の手続きが必要になるというデメリットもあります。そのため、あまり細かすぎる社内規定(給与規定など)は定款には書かず、別途「社内規則」として定めるのが一般的です。

定款に記載すべき代表的な任意的事項は以下の通りです。

1. 事業年度(決算期):

「毎年4月1日から翌年3月31日まで」のように定めます。消費税の免税期間(最大2期)を最大限活用できるよう、設立日から1期目の決算までの期間を長く取る(1年弱にする)設定がセオリーです。

2. 定時株主総会の招集時期:

「毎事業年度の終了後3ヶ月以内に招集する」と記載するのが通例です。これは法人税の申告期限(決算後2ヶ月以内)とも連動するため、実務に合わせた記載が必要です。

3. 公告の方法:

会社が決算公告などを行う方法です。「官報に掲載する方法」とするのが最も低コストで一般的です。電子公告や日刊新聞への掲載も選べますが、掲載費用が高額になるため、中小企業ではあまり選ばれません。

4. 役員の員数:

「取締役1名以上」など、最低人数を定めておきます。

💡 3秒でわかるまとめ

  • 絶対的記載事項(商号・目的など)は一つでも欠けると無効。
  • 相対的記載事項(譲渡制限・任期)は経営戦略上、事実上の必須。
  • 本店の所在地は「市区町村まで」に留めるのがプロの知恵。

【実務の急所】後悔しないための「条文設計」のポイント

定款作成は、単なる「穴埋め作業」ではありません。ここでの条文設計が、将来の「許認可取得」や「役員解任」、「相続トラブル」に直結します。ネット上の無料雛形には、汎用性を重視するあまり、個別の経営リスクをカバーしていないものが多々あります。

ここでは、特に行政書士として相談を受けることが多い「事業目的」「譲渡制限」「役員任期」の3点について、プロの条文設計テクニックを公開します。

[画像指示: 定款の条文(目的、譲渡制限、任期)を虫眼鏡で拡大し、チェックポイントを指摘しているイメージ (推奨ファイル名: articles-incorporation-details.jpg, alt: 定款作成における重要条文のチェックポイント)]

「事業目的」の書き方(許認可と将来性を見据えて)

事業目的とは、その会社がビジネスとして何を行うかを社会に対して公言し、法務局に登録する「業務範囲」のことです。

多くの起業家が「今はこれしかやらないから」と、現在の事業だけをシンプルに書きがちです。しかし、これは実務上、非常にリスキーな判断です。なぜなら、事業目的は「将来行う可能性があるビジネス」も含めて記載しておくのが鉄則だからです。後から新しい事業を始めたくなった時、もし定款にその目的が書かれていなければ、わざわざ株主総会を開いて定款を変更し、法務局で変更登記(登録免許税3万円)を行わなければなりません。たった数行の記載漏れで、3万円と数週間の時間を失うことになるのです。

さらに重要なのが「許認可」との連動です。建設業、宅建業、運送業、古物商、人材派遣業など、許認可が必要なビジネスを行う場合、定款の目的に「正しい文言」が入っていなければ、許可が下りないケースがあります。

例えば、建設業許可を取りたい場合、単に「建設業」と書くだけでは不十分な自治体もあり、「土木建築工事業」や「内装仕上工事業」など、具体的な工種が読み取れる記載を求められることがあります。また、介護事業(指定居宅サービス事業など)では、介護保険法に基づいた正確な用語の使用が必須です。私が過去に担当した案件でも、「文言が曖昧だ」として役所の窓口で申請を受け付けてもらえず、急遽、定款変更登記(3万円の出費)を余儀なくされたお客様がいらっしゃいました。この「許認可ブロック」を避けるためにも、目的条項は管轄行政庁の手引きを確認するか、専門家に相談して作成する必要があります。

【行政書士の現場会話】

お客様:「とりあえず『全各号に附帯関連する一切の事業』って書いておけば何でもできますよね?」

私:「その条文は必須ですが、魔法の杖ではありません。特に許認可ビジネスの場合、主たる目的として明記されていないと、『実態がない』と判断されて許可が下りないリスクが高いです。具体的に『〇〇業』と書きましょう」

「株式の譲渡制限」の定め方(会社の乗っ取り防止)

株式の譲渡制限とは、株主が保有する株式を第三者に譲渡する際、会社の承認(通常は株主総会または取締役会)を必要とするルールのことです。

上場企業のように、誰でも自由に株を売買できる会社を「公開会社」、譲渡に制限がある会社を「非公開会社(譲渡制限会社)」と呼びます。中小企業の99%は後者の非公開会社です。なぜなら、全く見ず知らずの第三者が株を買い集め、経営に口出ししてくる事態を防ぐ必要があるからです。

条文としては、以下の文言を入れるのが定石です。

「当会社の株式を譲渡により取得するには、当会社の承認を要する。」

この条文があることで、会社にとって好ましくない人物が株主になることをブロックできます。これは、創業メンバーが仲違いして株を売り抜けようとした時や、株主が亡くなって相続が発生した時(※相続自体は譲渡ではないため防げませんが、その後の売渡請求権と組み合わせる等の対策が可能)に効力を発揮します。

また、この譲渡制限規定を入れることには、もう一つの大きなメリットがあります。それは「役員の任期を最長10年まで伸ばせる」という特例が使えるようになることです(公開会社は原則2年)。さらに、取締役会の設置義務がなくなる、監査役を置かなくてもよいなど、機関設計(組織図)を自由に簡素化できるメリットもあります。つまり、中小企業が低コストで身軽な経営をするためには、この譲渡制限規定は「必須装備」なのです。

「役員の任期」の設定(2年か10年か、コストとリスクの天秤)

役員の任期とは、取締役や監査役がその職務に就く期間のことで、原則は2年(監査役は4年)ですが、定款で定めることで最長10年まで伸長可能です。

多くの起業家が悩むのが「2年にするか、10年にするか」という問題です。それぞれのメリット・デメリットを金額換算して比較してみましょう。

【選択肢A:任期10年(コスト削減重視)】

メリットは、登記費用の節約です。役員の任期が満了すると、同じ人が再任する場合でも「重任登記」が必要で、登録免許税が1万円(資本金1億円以下の場合)かかります。司法書士報酬を含めると3〜5万円の出費です。10年任期にすれば、このコストが10年に1回で済みます。

デメリットは、解任の難しさです。もし役員と対立して解任したくなった場合、正当な理由(不正行為など)がなければ、残りの任期分の役員報酬を損害賠償として請求されるリスクがあります。10年任期で就任1年目に解任しようとすると、残り9年分の報酬を請求されかねません。

【選択肢B:任期2年(リスク管理重視)】

メリットは、不適格な役員を「任期満了」という形で自然に退任させやすい点です。2年ごとに「次の2年もお願いするかどうか」を見直すタイミングが来るため、損害賠償リスクを負わずにメンバーチェンジが可能です。

デメリットは、2年ごとに登記費用と手続きの手間が発生することです。

【結論:どちらを選ぶべきか?】

「自分一人」または「家族経営」で、裏切られるリスクがゼロに近い場合は、10年任期でコストカットを狙うのが賢明です。

一方で、「友人と共同創業」や「外部から役員を招く」場合は、関係悪化のリスクを考慮して2年任期(または長くても4年程度)に設定し、いつでも切れる状態にしておくのが安全策です。目先の数万円の節約よりも、将来の数百万円の賠償リスクを回避することを優先してください。

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行政書士 小野馨の「ここだけの話」

「とりあえず10年」にして後悔するパターン、実は多いんです。特に「友人と起業」する場合。最初は意気投合していても、2〜3年で方向性の違いが出るのはよくある話。その時、相手が取締役として居座ると、10年任期が「足かせ」になります。「他人」を入れるなら任期は短く。これが鉄則です。

紙の定款 vs 電子定款|コスト4万円の分かれ道

定款の内容が決まったら、次は「作成形式」を選びます。昔ながらの「紙」で印刷して製本する方法と、PDFデータで作る「電子定款」の方法です。この選択は、設立費用の総額に直結します。

[画像指示: 紙の定款(収入印紙あり)と電子定款(収入印紙なし・PC画面)を天秤にかけ、コスト差を比較しているイラスト (推奨ファイル名: electronic-vs-paper-articles.jpg, alt: 電子定款と紙の定款の費用比較)]

収入印紙4万円の有無と初期費用の比較

紙の定款と電子定款の最大の違いは、「印紙税法上の課税文書にあたるかどうか」による4万円のコスト差です。

紙の定款は「課税文書」とみなされ、原本に4万円分の収入印紙を貼らなければなりません。これは税金なので、節約の余地はありません。一方、電子定款はPDFデータという「電磁的記録」であり、紙の文書ではないため、印紙税法上の課税対象外となります。つまり、印紙代0円です。

単純に比較すると、電子定款の方が4万円お得に見えます。しかし、電子定款を「自分(DIY)」で作成・認証するには、専用の機器やソフトを揃える必要があり、その導入コストがかかります。「4万円浮くから」と飛びつくと、かえって高くつく場合もあるため注意が必要です。

電子定款作成に必要な機材とソフト(DIYのハードル)

自分で電子定款を作成・認証申請する場合、以下の環境を整える必要があります。

1. マイナンバーカード(署名用電子証明書付き):

発起人本人の電子署名を行うために必須です。

2. ICカードリーダライタ(3,000円〜):

マイナンバーカードをPCに読み込ませる機器です。

3. PDF作成ソフト(Adobe Acrobat Proなど):

単にPDF化するだけでなく、「電子署名プラグイン」に対応した有料版が必要です。Adobe Acrobat Proの場合、月額約2,000円〜(年間契約等の縛りあり)がかかります。

4. 電子署名ソフト(PDF署名プラグイン):

法務省指定の署名ソフトをインストールし、設定する必要があります。設定難易度はやや高く、PC操作に慣れていないとつまずくポイントです。

5. 申請用ソフトウェア:

法務省の「登記・供託オンライン申請システム」の専用ソフトをダウンロードし、操作を覚える必要があります。

これらの準備にかかる時間と、ソフト代や機器代を合計すると、実質的な節約額は1〜2万円程度に縮小してしまうこともあります。「一生に一度の会社設立のために、わざわざ機材を買ってソフトの操作を覚えるのは割に合わない」と感じる方が多いのが現実です。

行政書士に依頼する場合のコスパ判定(実質コストの差)

ここで登場するのが、電子定款に対応した行政書士に依頼するという選択肢です。

行政書士は、すでに電子定款作成の環境(電子証明書や専用ソフト)を完備しています。そのため、行政書士に依頼すれば、お客様は4万円の印紙代を払う必要がありません。その浮いた4万円の一部を「報酬」として支払う形になります。

【損益シミュレーション】

A:自分で「紙」定款を作成

印紙代:40,000円

手間:大(勉強・作成・製本)

プロのチェック:なし(リスク大)

合計出費:40,000円 + 手間

B:行政書士に「電子」定款作成を依頼

印紙代:0円

報酬相場:10,000円〜30,000円(※電子定款作成のみの場合)

手間:小(ヒアリングに答えるだけ)

プロのチェック:あり(安心)

合計出費:10,000円〜30,000円

ご覧の通り、「自分で紙で作る」よりも「専門家に依頼して電子で作る」方が、トータルの現金出費が安くなる(または同等で済む)という逆転現象が起きます。さらに、プロによる条文チェックと作成代行が付いてくるため、コスパ最強の選択肢と言えます。「自分でやった方が安い」という常識は、定款作成に関しては当てはまらないのです。

💡 3秒でわかるまとめ

  • 紙の定款は印紙代4万円が必須。電子定款は0円。
  • 自力での電子定款は機材・ソフト導入でコストと手間がかさむ。
  • 行政書士に依頼すれば、印紙代0円の恩恵を受けつつ、実質コストを最安に抑えられる可能性がある。

定款作成から公証役場での認証までの具体的フロー

定款の原案ができあがり、形式(紙か電子か)が決まったら、いよいよ公証役場での認証手続きです。ここは「一発本番」ではありません。事前の段取りさえ間違えなければ、当日はスムーズに完了します。

[画像指示: 公証役場のカウンターで、公証人と発起人が書類を確認しているシーン。落ち着いた雰囲気 (推奨ファイル名: notary-office-procedure.jpg, alt: 公証役場での定款認証手続き)]

公証役場との事前確認(FAX・メールでの添削)

事前確認とは、認証を受ける予定の公証役場へ定款案を事前に送付し、公証人に法的な不備がないかチェックしてもらうプロセスのことです。

これは法律で義務付けられているわけではありませんが、実務上は「必須」の手順です。いきなり予約もせずに公証役場へ行って「認証してください」と言っても、その場での認証はまず断られます。定款の内容確認には時間がかかるからです。

手順としては、まず管轄内(本店所在地と同じ都道府県内)の公証役場を選びます。電話で「会社設立の定款認証をお願いしたいので、原案を送ります」と伝え、FAXまたはメールで定款案を送付します。数日以内に公証人から連絡があり、「この条文の表現は直してください」「印鑑証明書の住所と少し違いますね」といった修正指示が入ります。この「添削」を受けることで、認証当日のミスをゼロにできるのです。

この事前確認が完了し、公証人から「これでOKです」と言われて初めて、認証当日の来所予約を取ります。この段取りを飛ばさないことが、最短で設立するコツです。

認証当日の持ち物と流れ(発起人が行く場合・代理人の場合)

事前確認が完了したら、予約した日時に公証役場へ向かいます。所要時間は通常20〜30分程度です。当日の持ち物は、誰が行くかによって異なります。

【発起人全員が行く場合】

定款の原本(電子定款の場合は不要だが、紙の場合は3通)

発起人全員の実印

発起人全員の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)

認証手数料(約3万円〜5万円、現金のみ)

謄本交付手数料(1通あたり約2,000円前後)

空のCD-R(電子定款の場合、データを受け取るため)

身分証明書(運転免許証など)

【代理人が行く場合(発起人のうち1人が代表して行くなど)】

上記に加え、

委任状(来ない発起人の実印が押されたもの)

代理人の実印と印鑑証明書

当日は、公証人の面前で「嘱託人(発起人)」が定款の内容を確認し、署名などを求められます。電子定款の場合は、公証人が電子署名の確認を行い、持参したCD-Rに認証済みのデータを入れて返却してくれます。これで定款認証は完了です。

認証後の謄本取得と登記申請への接続

認証が終わったら、必ず「定款の謄本(とうほん)」を2通ほど取得しておきましょう。

1通は法務局への登記申請用、もう1通は銀行口座開設用や会社保管用です。原本は公証役場に20年間保管されますが、手元には謄本が必要です。電子定款の場合でも、法務局へはCD-Rのデータではなく、紙に出力された「同一情報の提供(謄本)」を提出するケースが一般的(オンライン申請の場合はデータ送信)ですが、銀行などでは紙の定款謄本を求められることが多いため、認証時に紙でもらっておくのが無難です。

認証を受けた日から、いよいよ資本金の払込みが可能になります。定款認証日より前に振り込まれたお金は、資本金として認められないリスクがあるため、必ず「認証日以降」に発起人の口座へ振り込みを行ってください。ここまで来れば、あとは登記申請書類を揃えて法務局へ提出するだけです。

あなたが得られる未来

ここまで、定款作成の細部まで解説してきました。これらを実践することで、あなたは以下の未来を手にします。

まず、「法的に完璧で、かつ自社に有利な最強のルールブック」を持つことができます。これは、将来の株主間トラブルや、不測の事態(役員の死亡や解任)が発生した際に、会社とあなた自身を守る強力な武器となります。また、電子定款を活用することで、無駄な税金(印紙代4万円)を払うことなく、賢くコストを抑えたスタートダッシュが可能になります。

定款は、ただの書類ではありません。あなたの会社の「志」と「戦略」を詰め込んだ設計図です。この設計図さえしっかりしていれば、あとは自信を持って経営という荒波に漕ぎ出すことができるでしょう。

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⚠️ 免責事項と画像について

本記事内で使用している画像は、すべて生成AIによって作成されたイメージです。

記事の内容は執筆時点の法令・情報に基づいています。法改正や自治体の条例により最新の要件と異なる場合がありますので、実務の実行にあたっては、必ずご自身で管轄の行政庁または専門家へ確認を行ってください。

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