【結論】会社の解散・清算手続きとは?
会社の解散・清算手続きとは、事業を停止(解散)し、残った財産や借金を整理(清算)して、法的に会社を消滅(結了)させる一連の法的プロセスです。
単に営業を辞めるだけでなく、最低2ヶ月間の官報公告や法務局への登記を経て、経営者の法的責任をきれいに終わらせるための最重要実務です。

会社関連法務専門の 行政書士の小野馨です。
今回は、経営者にとって重く、しかし避けては通れない【会社の解散・清算手続き】について、実務の現場からお話しします。
「後継者がいない」
「事業の先行きが見えない」……
長年育ててきた会社を畳むという決断は、創業時以上にエネルギーを使うものです。
しかし、ここで注意していただきたいのは、「解散届を出せば終わりではない」という事実です。
注意ポイント
会社法には厳格なルールがあり、正しい手順で「清算」を行わなければ、いつまでも会社は残り続け、税金や維持費、そして「経営者としての責任」も消えることはありません。
この記事では、行政書士として数多くの法人の立ち上げと「しまい方」を見てきた私が、解散から完全消滅(結了)までの流れ、費用、そして「借金がある場合(債務超過)はどうすべきか」までを、専門用語を噛み砕いて解説します。
⚠️ 注意:手続きを放置すると「過料(罰金)」の対象になるだけでなく、最悪の場合、個人の財産まで脅かされるリスクがあります。「立つ鳥跡を濁さず」の精神で、最後の手続きを完璧に進めましょう。
この記事でわかる4つのポイント
- ✅ 解散と清算の違い・全体のスケジュール
- ✅ 必須となる「官報公告」と債権者保護
- ✅ 借金が残る場合(債務超過)の対処法
- ✅ 手続きにかかる費用と専門家の活用法
会社解散と清算の基礎知識|「解散」だけでは会社は消えない
「会社を辞める」と言ったとき、多くの経営者様が「解散」という言葉を使われます。
しかし、法律の世界では「解散」と「清算(せいさん)」は全く別の概念であり、この2つがセットになって初めて会社は消滅します。
まずは、この全体像を正しく理解することから始めましょう。

解散と清算の違いとは?(手続きの全体像)
結論から申し上げますと、「解散」とは営業活動の終了宣言にすぎません。
株主総会で解散を決議し、法務局で「解散の登記」を行ったとしても、会社という「法人格(法的な人格)」はまだ生きています。
なぜなら、会社にはまだ「在庫」や「現金」といった財産があり、逆に「借入金」や「未払金」といった債務が残っているからです。
これらをきれいに整理する手続きを「清算(Liquidation)」と呼びます。
- 解散(Dissolution):事業をストップすること。ここから会社は「清算会社」となります。
- 清算(Liquidation):財産をお金に換え、債権者へ借金を返し、残りを株主へ分ける作業。
- 結了(Conclusion):清算がすべて終わり、法的に会社が消滅すること。
会社法第475条では、解散した会社は「清算をしなければならない」と定められています。
つまり、「清算結了の登記」が完了するまでは、会社は法的に存在し続け、法人住民税の均等割(年間約7万円〜)などの納税義務も原則として続くことになります。
清算人とは? 誰がなるのか
会社が解散すると、それまでの「取締役」は退任し、代わりに「清算人(せいさんにん)」が就任します。
これ以降、会社の実権と責任は代表取締役ではなく、この清算人が握ることになります。
では、誰が清算人になるのでしょうか?
実務上は、以下の3つのパターンが一般的です。
- 法定清算人:定款や株主総会で特段の定めがない場合、従前の「取締役(代表取締役)」がそのまま清算人になります(会社法第478条1項)。ほとんどの中小企業はこのパターンです。
- 選任清算人:株主総会の決議で、別の人(弁護士や司法書士など)を選任する場合。
- 裁判所選任清算人:誰もなり手がいない場合など、利害関係人の申立てにより裁判所が選ぶ場合。
重要なのは、取締役が自動的に清算人になる場合でも、改めて「清算人の就任登記」が必要だという点です。
「私が社長だったから、そのまま手続きすればいいだろう」と登記を怠ると、過料(罰金)の対象となるため注意が必要です。
💡 行政書士の現場メモ(失敗回避の知恵)
以前、「10年前に事業を辞めたから、もう会社はないはずだ」と仰る元経営者様がいらっしゃいました。
しかし登記簿(登記事項証明書)を確認すると、会社は「解散」のまま止まっており、「みなし解散」の扱いを受けていました。
結果、不動産の売却時に「清算人を改めて選任し直す」という非常に煩雑な手続き(費用も数万円単位で加算)が発生してしまいました。
「放置は最大のコスト」です。記憶ではなく、登記簿で現状を確認しましょう。
📌 この章のポイント
- 「解散」はゴールではなく、清算手続きのスタート地点。
- すべての借金を返し、残余財産を分配して初めて「結了(消滅)」となる。
- 経営者は「代表取締役」から「清算人」へ立場が変わり、その登記も必須。
【図解】会社解散から清算結了までの具体的な流れ(スケジュール)
会社を畳む手続きは、どんなに急いでも「最短で約2ヶ月半〜3ヶ月」の期間が必要です。
なぜなら、法律で「解散することを世間に知らせる期間(官報公告)」として、最低2ヶ月間の待機期間が義務付けられているからです。
全体を4つのステップに分けて、時系列で解説します。

STEP 1:株主総会での決議と解散登記
まずは、会社の最高意思決定機関である「株主総会」を開き、会社の解散を正式に決定します。
これは経営上の極めて重要な決定であるため、普通決議ではなく、議決権の3分の2以上の賛成が必要な「特別決議(会社法第309条2項)」でなければなりません。
この総会で、同時に「清算人」(通常は代表取締役)の選任も行います。
- 期限:解散の日から2週間以内
- 提出先:本店所在地を管轄する法務局
- 提出物:「解散の登記」および「清算人選任の登記」の申請書
この登記申請により、登記簿上のステータスが「解散」に書き換わります。
STEP 2:債権者保護手続(官報公告と個別催告)
ここが最も重要、かつ時間がかかるステップです。
会社法第499条により、清算人は以下の2つの方法で、会社の借金などの債権者に対して「会社を畳むので、請求があるなら申し出てください」と知らせる義務があります。
- 官報公告(かんぽうこうこく):
国が発行する機関紙「官報」に解散公告を掲載します。掲載期間は「最低2ヶ月間」です。この期間を短縮することは法律上絶対にできません。 - 個別の催告(さいこく):
会社が把握している債権者(銀行、取引先、未払金のある相手など)に対して、個別に手紙等で通知します。
注意点:「うちは借金がないから公告しなくていい」は通用しません。
官報公告は、借金の有無に関わらず全法人に義務付けられた必須手続きです。
これを行わずに済ませた清算手続きは無効となり、将来的に賠償責任を問われるリスクがあります。
💡 行政書士の現場メモ(失敗回避の知恵)
「官報公告の申込み」は意外と時間がかかります。
官報販売所に原稿を送ってから実際に掲載されるまで、通常2〜3週間程度のタイムラグがあります。「2ヶ月待てばいい」と思っていても、実際には準備期間を含めると3ヶ月近くかかる計算です。
解散登記をしたら、すぐに(あるいは登記申請と並行して)官報掲載の手配をすることが、期間短縮の最大のコツです。
STEP 3:財産の換価・債務弁済と確定申告
2ヶ月間の公告期間を待つ間に、清算人は以下の実務を進めます。
- 財産の換価:不動産、在庫、有価証券などを売却して現金化します。売掛金もこの期間に回収します。
- 債務の弁済:公告期間が終了した後、回収した現金で債権者へ支払いをします。(※原則として、公告期間中は弁済が禁止されています)
- 解散確定申告:
解散日から2ヶ月以内に、解散事業年度(期首から解散日まで)の確定申告を税務署へ行う必要があります。
会社がなくなっても、最後の稼ぎに対する法人税や消費税の申告・納税義務は残ります。
これを忘れると延滞税が発生するため、税理士との連携が不可欠です。
STEP 4:残余財産の分配と清算結了登記
すべての債務を支払い終えて、それでも手元に残ったお金(資産)があれば、それを「残余財産(ざんよざいさん)」として、持ち株数に応じて株主へ分配します。
(※借金の方が多い「債務超過」の場合は、この分配ができず、後述する破産等の手続きが必要になります)
最後に以下の手続きを行い、会社の生涯は幕を閉じます。
- 決算報告の承認:清算人が「決算報告書」を作成し、再び株主総会を開いて承認を得ます。
- 清算結了の登記:株主総会の承認から2週間以内に、法務局へ「清算結了登記」を申請します。
- 税務署等への届出:「清算結了届」を税務署や都道府県税事務所へ提出します。
登記が完了し、登記簿(登記事項証明書)が閉鎖された時点で、法的に会社は完全に消滅(結了)します。
📌 この章のポイント
- 解散手続きは「官報公告」待ちのため、最低でも2ヶ月半〜3ヶ月かかる。
- 「官報公告」は借金がゼロでも必ずやらなければならない法的義務。
- 「解散登記」と「結了登記」、合計2回の登記申請が必要。
赤字でも解散できる? 債務超過の場合の注意点
ここまで解説してきた流れは、あくまで「会社の資産で、すべての借金を返しきれる場合(通常清算)」の話です。
では、会社の財産をすべて売り払っても借金が残ってしまう状態、いわゆる「債務超過(さいむちょうか)」の場合はどうなるのでしょうか?
結論から言うと、通常の清算手続きを進めることはできません。
もし、債務超過であるにもかかわらず、一部の債権者にだけ優先して返済を行ったりすると、他の債権者を害したとして損害賠償請求を受けたり、詐害行為取消権の対象となるリスクがあります。
通常清算と倒産手続き(破産・特別清算)の分岐点
清算人(経営者)は、会社の財産状況を調査し、以下の判断を行わなければなりません。
【運命の分岐点チェック】
- ✅ 資産 > 負債(資産の方が多い)
→ 「通常清算」へ。
これまで解説した通り、清算人主導で手続きを進められます。 - ⚠️ 資産 < 負債(借金の方が多い)
→ 「倒産手続き(特別清算 または 破産)」へ。
裁判所の監督下で厳格に処理する必要があります。
会社法第514条などの規定により、清算中に債務超過の疑いが生じた場合、清算人は直ちに「特別清算」または「破産」の申し立てを行う法的義務があります。
破産と特別清算の違い
「借金が返せない=破産」というイメージが強いですが、株式会社には「特別清算(とくべつせいさん)」という、破産よりも少し穏やかな選択肢が用意されています。
| 項目 | 特別清算 | 破産(通常破産) |
|---|---|---|
| 特徴 | 債権者との「話し合い(協定)」で解決を目指す。 | 裁判所が選任した管財人が、強制的に財産を処分・配当する。 |
| 経営者の地位 | 清算人(元経営者)がそのまま手続きを進められる場合が多い。 | 経営者は権限を失い、すべて「破産管財人(弁護士)」が管理する。 |
| 必要な条件 | 債権者の過半数(額面で3分の2以上など)の「同意」が必要。 | 債権者の同意は不要。(支払不能なら強制的に開始) |
| イメージ | 「倒産」のレッテルが比較的薄い。手続きがスピーディー。 | 厳格。「倒産」の代名詞。 |
どちらを選ぶべきか?
- 特別清算が向いているケース:
主な債権者が「親会社」や「役員自身(役員借入金)」のみである場合や、取引先が少なく話し合いで借金の免除に同意してくれそうな場合。費用や手間を抑えられます。 - 破産が向いているケース:
債権者が多数いて同意が得られない場合や、税金の滞納が著しい場合、粉飾決算などの複雑な事情がある場合。
💡 行政書士の現場メモ(専門家の選び方)
この「債務超過」の領域に入ると、行政書士や司法書士だけでは対応しきれない部分(裁判所での代理人業務)が出てきます。
特に「破産」を選択する場合は、弁護士への依頼がほぼ必須となります。「通常清算でいけるか、破産になるか際どい」という場合は、早めに弁護士との連携が可能な事務所に相談することをお勧めします。
最悪なのは「借金があるから無理だ」と諦めて、会社を放置することです。
放置しても借金は消えず、利息で膨らみ続けるだけです。
📌 この章のポイント
- 資産より負債が多い場合、「通常清算」は違法となるリスクがある。
- 債権者の同意が得られるなら「特別清算」、無理なら「破産」を選択する。
- 判断に迷ったら自己判断せず、直ちに法律の専門家(弁護士等)へ相談を。
会社解散にかかる費用と専門家への依頼
会社を設立する時にお金がかかったように、会社を畳む時にも一定の費用がかかります。
「自分で手続きすれば0円」ではありません。法務局や官報販売所へ支払う法定費用(実費)は、誰がやっても必ず発生します。
登録免許税や官報公告などの実費
最低限用意しなければならない実費の目安は、約7万5,000円〜8万円程度です。
内訳は以下の通りです。
| 費用の項目 | 金額の目安 | 支払先 |
|---|---|---|
| ① 解散の登録免許税 | 30,000円 | 法務局(収入印紙) |
| ② 清算人選任の登録免許税 | 9,000円 | 法務局(収入印紙) |
| ③ 官報公告掲載料 | 約35,000円〜40,000円 ※行数により変動 | 官報販売所 |
| ④ 清算結了の登録免許税 | 2,000円 | 法務局(収入印紙) |
| 合計(実費のみ) | 約76,000円 〜 | |
これらに加えて、会社の登記事項証明書(謄本)の取得費(1通600円)や、印鑑証明書の取得費、郵送費などが数千円かかります。
司法書士・税理士へ依頼するメリットと相場
上記の実費に「専門家への報酬」を上乗せすることで、面倒な書類作成や手続きを丸投げできます。
- 司法書士(登記のプロ):
- 依頼内容:株主総会議事録の作成、解散・清算人選任・結了の登記申請代理。
- 相場:約5万円〜10万円前後。
- メリット:法務局へ行く手間がゼロになります。記載ミスによる補正(やり直し)のリスクもありません。
- 税理士(税金のプロ):
- 依頼内容:解散確定申告、清算結了確定申告。
- 相場:顧問契約の有無によりますが、決算料として数万円〜15万円程度。
- メリット:最後の税務トラブルを防げます。
💡 行政書士の現場メモ(コスト削減の視点)
「少しでも安く済ませたい」という場合、私たち行政書士にご相談いただくのも一つの手です。
行政書士は、登記申請そのもの(司法書士の独占業務)はできませんが、「株主総会議事録」などの書類作成や、「官報公告」の手配代行、全体のスケジュール管理をリーズナブルに行うことが可能です。
※必要な場合のみ提携司法書士をご紹介するワンストップサービスなど)
ご自身の状況に合わせて、最適な依頼先を選びましょう。
📌 この章のポイント
- 自分で手続きしても約8万円の実費は必ずかかる。
- 司法書士へ依頼すれば+5〜10万円で手間と時間を買える。
- 税務申告だけは税理士への確認が必須(素人判断は危険)。
まとめ:立つ鳥跡を濁さず。きれいな「清算」で次のステージへ
会社の解散・清算手続きについて解説しました。
会社を設立する時は「希望」に満ちていますが、会社を畳む作業は「責任」との戦いです。
利益を生まない作業に時間とお金を使うのは気が重いかもしれませんが、ここを疎かにすると、いつまでも過去の会社に縛られ続けることになります。
- 解散するだけでは終わらない(清算が必要)。
- 官報公告(2ヶ月)は必須義務。
- 債務超過なら無理せず弁護士へ相談。
この3点を忘れずに、最後の手続きを粛々と進めてください。
きれいな終わり方は、経営者としての再出発(リスタート)のための準備運動でもあります。
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