会社設立・法人化

株式会社と合同会社どっち?性格診断で選ぶ「あなたに合う法人形態」決定版


「設立費用が安いから合同会社でいいか…でも、名刺交換で舐められないかな?」。
この葛藤、起業家の9割が通る道です。スペックだけで選ぶと、後で「やっぱり株式会社にしておけばよかった」と10万円以上の損をすることになります。


行政書士 小野馨
こんにちは!

行政書士歴20年、5000社以上の起業相談に乗り、「合同会社」を作った後に「代表取締役って名乗りたいから変えたい」と泣きついてくる社長を何人も見てきた小野馨です。

今回は、株式会社と合同会社、どっちを選ぶべきかを、あなたの「性格」と「懐事情」からズバリ診断します。

株式会社と合同会社(LLC)。

法律上の責任範囲や税金面では、実はほとんど違いがありません。

どちらも有限責任であり、法人税率も同じです。

では、決定的な違いは何なのか。

それは「設立コスト(金)」「社会的イメージ(見栄)」です。

「とにかく安く作りたい」という合理主義者が無理して株式会社を作る必要はありませんし、逆に「親や友人に『社長になった』と自慢したい」という承認欲求強めな人が合同会社を作ると、一生後悔します。

この記事では、綺麗なメリット・デメリット表だけでは見えてこない、経営者の「性格」を軸にした選び方の決定版をお届けします。

▼ この記事のポイント ▼

  • ✅ 株式会社は「初期費用20万〜」、合同会社は「6万〜」。差額はデカイ。
  • ✅ 合同会社の代表は「代表取締役」と名乗れない。「代表社員」になる。
  • ✅ 人を採用したい、大きく見せたいなら、迷わず株式会社を選べ。
  • ✅ 一人社長でBtoCビジネスなら、合同会社がコスパ最強。

【診断】あなたはどっち?性格とビジネスモデルで選ぶ「法人形態」

理屈を並べる前に、まずは直感で選んでみましょう。

以下のチェックリストで、当てはまる数が多い方が、あなたに適した形態です。

1分で判定!法人形態チェックリスト

🏢 株式会社向きの人

  • □ 「代表取締役社長」という肩書きが欲しい
  • □ 将来、従業員を雇って組織を大きくしたい
  • □ 取引先は大手企業や古い体質の会社が多い
  • □ 親や親戚に「会社を作った」と胸を張りたい
  • □ 設立費用の20万円は「必要経費」だと割り切れる

🤝 合同会社向きの人

  • □ 肩書きなんてどうでもいい、実利重視だ
  • □ 当面は一人、または家族だけでやるつもりだ
  • □ 飲食店、美容室、エンジニアなど「腕」で売る商売だ
  • □ 設立費用を1円でも安く抑えたい
  • □ 「代表社員」と名乗っても恥ずかしくない

【株式会社】採用重視、上場志向、親族に自慢したい人

株式会社を選ぶべき最大の理由は、**「社会的信用の高さ」**と**「採用力」**です。

日本人のDNAには「株式会社=ちゃんとした会社」という図式が刷り込まれています。

特に、求人を出す場合、親御さんが「就職先が合同会社? 大丈夫なの?」と心配するケースがいまだにあります。

また、あなたが「社長」と呼ばれたいなら、株式会社一択です。

飲み会で名刺を出した時、「代表取締役」と書いてあるのと「代表社員」と書いてあるのでは、相手(特にサラリーマン)の反応が目に見えて違います。

この「ドヤれる権利」に14万円を払う価値があると思うなら、迷わず株式会社にしてください。

【合同会社】一人社長、飲食・美容系、コスト削減こそ正義な人

合同会社を選ぶべき人は、**「実質重視の合理主義者」**です。

例えば、飲食店や美容室の場合、お客さんは「その店が株式会社か合同会社か」なんて気にしません。

「料理が美味しいか」「カットが上手いか」が全てです。

ITエンジニアやデザイナーなどのフリーランス法人成りも同様です。

あなたのスキルに対して報酬が支払われるのであれば、法人格は単なる「節税のための箱」に過ぎません。

箱代に20万円も払うのは無駄です。

6万円で済む合同会社を選び、浮いた14万円でパソコンを買った方が、よほど合理的です。

💡 3秒でわかるまとめ:

  • 「見栄」と「採用」を取るなら株式会社。
  • 「コスパ」と「実利」を取るなら合同会社。
  • BtoCビジネスなら、合同会社でもデメリットはほぼない。

【金と信用】株式会社vs合同会社 徹底スペック比較

では、具体的な数字と制度の違いを見てみましょう。

ここを知らずに選ぶと、後で「こんなはずじゃなかった」となります。

設立費用の壁(約14万円の差額)

一番の違いは、国に払う「登録免許税」と「公証人手数料」です。

項目株式会社合同会社
定款認証手数料約3万〜5万円
(公証役場へ支払)
0円
(認証不要)
登録免許税最低 150,000円最低 60,000円
法定費用合計約20万円〜約6万円〜

ご覧の通り、**約14万円**の差がつきます。

創業期の14万円は大金です。

合同会社は、公証人の定款認証が不要(これも大きなメリット)で、登録免許税も安いため、圧倒的に安く、早く作れます。

肩書きの罠(「代表取締役」と名乗れない)

肩書きコンプレックスとは、「合同会社の代表者は法的に『代表社員』と呼ばれ、名刺に『代表取締役』と書くと虚偽記載になるため、社長であることを説明するのに微妙なストレスを感じ続ける現象」のことです。

「代表社員? 平社員の代表ってこと?」

会社法を知らない一般の人には、こう勘違いされることがあります。

これが嫌で、英語表記の「CEO」や、通称として「社長」と書く人もいますが、正式な契約書には「代表社員」と書かなければなりません。

この「なんかカッコつかない感」を、あなたは許容できますか?

ここが、多くの人が最後に株式会社を選ぶ理由になっています。

決算公告の義務(形骸化しているが…)

もう一つの違いは「決算公告」です。

* **株式会社**: 毎年決算内容を官報などに公告する義務がある(掲載費 約7万円〜)。
* **合同会社**: 公告義務がない。

「えっ、株式会社だと毎年7万円もかかるの?」と驚くかもしれませんが、実態を言うと、中小企業の99%はこの決算公告をサボっています(※罰則規定はありますが、実際に科料を取られるケースは稀です)。

なので、コスト比較においてはこの点はあまり気にしなくて良いのが「大人の事情」です。

ただ、法律上は合同会社の方が「秘密主義(決算を晒さなくていい)」が認められている、という点は覚えておいてください。

💡 3秒でわかるまとめ:

  • 合同会社は設立費用が14万円も安い。これは最大の魅力。
  • ただし、「代表取締役」とは名乗れない。これが嫌なら金を出せ。
  • 決算公告の有無は、実務上あまり気にしなくていい。

【落とし穴】「とりあえず合同会社で」が一番損をする理由

「最初は安く合同会社で始めて、儲かったら株式会社に変えればいいや」。

多くの税理士やコンサルタントがこうアドバイスします。

一見、理にかなっているように聞こえますが、行政書士としての現場感覚から言わせてもらうと、これは**「情弱ビジネスのカモ」**にされかねない危険な思考です。

なぜなら、後から変更するのは、最初から株式会社を作るよりも遥かに高くつくからです。

後から株式会社にする「組織変更」は、手間も金も倍かかる

組織変更のコストとは、「合同会社から株式会社へ変更するには、登録免許税6万円に加え、官報公告費約3万円、司法書士報酬などを合わせると最低でも15万円〜20万円以上の出費が必要になり、設立時の差額(14万円)が完全に吹き飛ぶ現象」のことです。

計算してみましょう。

1. **設立時**: 合同会社で作って14万円節約した(やった!)。
2. **変更時**: 株式会社にするために約20万円払った。
3. **結果**: トータルで最初から株式会社を作るより**6万円以上損**をした。

さらに、組織変更の手続きには「債権者保護手続」といって、官報に公告を出してから最低1ヶ月待たなければならない期間があります。

その間、登記簿がロックされたり、銀行口座の名義変更手続きに追われたりと、恐ろしいほどの手間がかかります。

「将来、株式会社にするつもりがある」なら、借金をしてでも最初から株式会社にしておくのが、一番の節約です。

許認可の書き換えリスク(建設業などは要注意)

許認可のリスクとは、「建設業許可や運送業許可などを持っている場合、法人格が変わる(合同→株式)ことで、許可の『書き換え申請』や『新規取り直し』が必要になり、行政庁への手数料や行政書士報酬が追加で発生するトラップ」のことです。

許認可ビジネスをやっている方は特に注意が必要です。

例えば、合同会社で苦労して取った建設業許可。

株式会社に組織変更したら、自動的に引き継がれるわけではありません。

「許可業者の商号変更」などの届出が必要になります。

ここでまた数万円のコストと、大量の書類作成が発生します。

下手をすると、許可の空白期間ができて仕事ができない…なんてことにもなりかねません。

許認可が必要な業種なら、なおさら最初からゴールを見据えた法人形態を選ぶべきです。

💡 3秒でわかるまとめ:

  • 「あとで変更」は、金と時間の無駄遣い。トータルで損をする。
  • 変更手続きには最低1.5ヶ月かかり、その間ビジネスが停滞する。
  • 許認可業種は、変更手続きでさらにコストが嵩む。

【生存戦略】「器」は中身に合わせて選べ

最後に、よくある誤解を解いておきます。

「でも、AmazonやAppleの日本法人は合同会社ですよね? 大手が選んでるんだから、合同会社の方が優れているのでは?」

この質問、本当によく受けます。

Amazonが合同会社だからといって、あなたが真似すべきではない理由

外資系が選ぶ理由とは、「彼らが合同会社を選ぶのは、米国の税制(パススルー課税)上のメリットを享受するためという高度なグローバル税務戦略によるものであり、日本のスモールビジネスが14万円をケチるのとは次元が違う話」だからです。

Amazonにとっては、日本法人が株式会社だろうが合同会社だろうが、ブランド力に影響はありません。

誰もが知っているからです。

しかし、無名のあなたが合同会社を作った場合、「怪しい会社」というフィルターをかけられるリスクがあります。

Amazonの真似をして「うちは合同会社です(キリッ)」と言うのは、F1カーの真似をして軽トラックにウイングをつけるようなものです。

目的が違います。

あなたは、あなたのビジネスサイズと、相手にする顧客の属性に合わせて、「器(法人形態)」を選んでください。

* **BtoBで、日本の古い企業と取引する** ⇒ 株式会社
* **BtoCで、個人の腕で稼ぐ** ⇒ 合同会社

これが、失敗しない選び方の鉄則です。

🚀 今日から始める「3つの行動」

  • 「名刺交換する相手」の顔を思い浮かべ、株式会社である必要があるか自問する
  • 将来、上場やM&A(会社売却)を目指すなら、迷わず株式会社を選ぶ
  • 14万円の差額を「広告宣伝費」と考え、安いと思えるなら株式会社にする

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