合同会社を閉じるには、解散を決めて登記するだけでなく、債権者への公告、会社の財産・債務の整理、清算に係る計算の承認、清算結了の登記まで進めます。解散登記をした時点で、すべての手続きが終わるわけではありません。
一般的な流れは「総社員の同意で解散 → 清算人を確認して登記 → 官報公告と債権者への個別通知 → 財産・債務の整理 → 計算の承認 → 清算結了登記」です。官報公告で設ける債権申出期間だけでも2か月以上必要になるため、同日中に会社を閉じることはできません。
この記事では、総社員の同意で解散する合同会社の通常の清算を中心に、自然人が清算人となる場合の決め方と主な必要書類を説明します。社員の死亡、裁判による解散、法人が清算人となる場合などは、必要な手続き・書類を個別に確認してください。

まず定款・社員構成・資産負債を確認する
解散日を決める前に、次の3点をそろえると、その後の同意や書類を整理しやすくなります。
- 定款:業務を執行する社員、清算人、残余財産の分配について定めがあるか。
- 現在の社員構成:誰の同意が必要か。定款と、入退社などの変更を確認できる資料を照合する。
- 資産と負債の一覧:預金・売掛金・不動産などの財産と、借入金・買掛金・未払金・税金などの支払義務を把握する。
ここでいう「社員」は、会社に出資する構成員のことで、従業員という意味ではありません。従業員がいない合同会社でも、出資者である社員は存在します。
清算中も会社は清算の目的の範囲で存続します。解散によって借入れや未払金がなくなるわけではありません。財産を換金しても債務を完済できないことが明らかになったときは、清算人に破産手続開始の申立て義務が生じます。支払不能が疑われる場合も、通常清算を前提に財産を分ける前に弁護士へ相談してください。合同会社に、株式会社の「特別清算」をそのまま使うことはできません。
根拠:会社法644条・645条・656条、裁判所の特別清算の説明。
総社員の同意で解散し、清算人を確認する
解散には代表社員だけでなく、総社員の同意が必要
この記事で扱う解散方法では、出資者である社員全員の同意が必要です。社員が複数いる場合、代表社員が単独で決めれば足りるわけではありません。解散する意思と解散日を確認し、総社員の同意を証する書面にまとめます。
一人合同会社では、その一人が同意することになります。ただし、一人であることを理由に解散登記、官報公告、清算結了登記などを省略できるわけではありません。
清算人は「元の代表社員一人」とは限らない
清算人は、未了の事務を終え、債権を取り立て、債務を支払い、残った財産を分配する役割を担います。誰が清算人になるのかは、定款と選任の有無を次のように確認します。
- 定款に清算人として定められた人がいるか。
- 社員の過半数の同意で清算人を定めるか。
- いずれもない場合は、業務を執行する社員が清算人となる。
2の同意は、定款で業務を執行する社員を定めている場合、その業務執行社員の過半数によります。解散に必要な「総社員の同意」とは、同意の対象・人数を分けて整理しましょう。
複数の業務執行社員がそのまま清算人になる場合もあります。誰が清算人かという問題と、誰が会社を代表する清算人かという問題は別なので、従前の代表社員の定めも確認してください。
小野馨の一言
必要書類の名前を先に集めるより、まず定款で業務執行社員と清算人の定めを確認しましょう。「会社を解散する同意」と「清算人を定める同意」を別々に整理すると、自社に必要な書類を選びやすくなります。
就任後は財産目録・貸借対照表を作成し、各社員へ通知する
清算人は就任後、遅滞なく会社の財産の現況を調査し、解散の日における財産目録と貸借対照表を作成して、各社員にその内容を通知します。作成した資料は、清算結了の登記まで会社で保存します。
これは清算の出発点となる資料です。清算事務が終わった後の「清算に係る計算と社員の承認」とは別に、就任後の予定に入れておきましょう。
根拠:会社法658条。
解散・清算人の登記を行う
期限は「何の日から2週間か」を分ける
総社員の同意によって解散した場合、解散の登記は2週間以内に行います。清算人の登記は、業務執行社員が法律上そのまま清算人となる場合には解散の日から2週間以内、清算人を選任した場合には選任から2週間以内です。
解散日と清算人の就任・選任の経緯を整理し、管轄の法務局に提出する書面を確認します。解散と清算人の登記は関連しますが、起算点を混同しないようにしてください。
根拠:会社法926条・928条。
必要書類は清算人の決まり方で変わる
総社員の同意による解散では、登記申請書に加え、総社員の同意を証する書面を準備します。清算人に関する主な添付書面は、次のように分かれます。
| 清算人の決まり方 | 主な添付書面 |
|---|---|
| 業務執行社員が法律上そのまま清算人になる | 定款 |
| 定款で定められた人が清算人になる | 定款、就任を承諾したことを証する書面 |
| 過半数の同意で清算人を定める | 選任に係る同意を証する書面、就任を承諾したことを証する書面 |
これは、自然人が清算人となる一般的な場合の主な書面の整理であり、すべての会社に共通する完成セットではありません。代表する清算人の定めや、別の変更登記を伴う場合などは追加の確認が必要です。代理人に申請を依頼する場合は、代理権限を証する書面も用意します。
法務局の商業・法人登記の申請書様式では、合同会社の「解散及び清算人選任」と「清算結了」の項目を選んでください。株式会社用の株主総会議事録を、名称だけ変えて使うのは避けましょう。
書面で、自然人である代表する清算人の印鑑を法務局へ届け出る場合は、届出書に押した印鑑について、市区町村長が作成した3か月以内の印鑑証明書を添付します。オンライン申請を含め、申請方法によって確認事項が異なるため、使用する様式の案内に沿って印鑑届の要否と提出方法を確認してください。
根拠:商業登記法18条・93条・99条・118条、商業登記規則9条。
官報公告を行い、債権者への対応と財産整理を進める
官報公告に加え、分かっている債権者へ個別に通知する
合同会社では、清算開始後、遅滞なく官報で債権者に債権の申出をするよう公告し、会社が把握している債権者には個別に催告します。官報に掲載しただけで、分かっている債権者への通知を省略できるわけではありません。
債権の申出期間は2か月以上にする必要があります。この期間は清算全体の所要期間ではありません。公告の掲載準備、売掛金回収、資産売却、契約の終了、税務申告などに時間がかかれば、完了はさらに先になります。
一人合同会社や、現在売上げのない会社も、公告を省略できる前提で予定を組まないでください。
申出期間中の支払いと、社員への財産分配には制限がある
清算人は財産や債務を整理しますが、債権申出期間中は債務の弁済が原則として制限されます。少額の債権などについて裁判所の許可を得て弁済できる例外はあるものの、「公告を出したので、あとは順に振り込めばよい」とは考えないでください。
また、社員への残余財産の分配は、原則として会社の債務を弁済した後です。争いのある債権に必要な財産を留保する場合などの例外を、自己判断で広げないことが大切です。
口座の維持、借入れ、賃貸借、許認可など、清算中に残りやすい実務上の確認は、会社の解散・清算で確認することで整理しています。
清算に係る計算の承認を受け、清算結了を登記する
債権の回収や債務の支払いを終え、残余財産がある場合は分配を行います。分配の割合に定款の定めがなければ、各社員の出資の価額に応じて分配します。
清算事務が終了したら、清算人は遅滞なく清算に係る計算を行い、社員の承認を受けます。合同会社では、株式会社の「株主総会で決算報告を承認する」という説明をそのまま当てはめず、清算に係る計算と、社員が承認したことを証する書面を整理してください。
清算結了の登記は、計算の承認の日から2週間以内に行います。登記申請には、清算に係る計算の承認を証する書面を添付します。承認した日が分かるよう、計算書類と承認の記録をそろえておきましょう。
なお、会社法には、清算に係る計算について社員が1か月以内に異議を述べなかったときは承認とみなす規定があります。ただし、清算人の職務に不正があった場合は除かれます。明示的に承認を得た場合まで、必ず追加で1か月待つという意味ではありません。承認の日付や扱いが不明なまま申請しないでください。
清算結了後も、清算人には、清算結了の登記の時から10年間、会社の帳簿と事業・清算に関する重要な資料を保存する義務があります。定款や社員の過半数で別の保存者を定める場合などもあるため、保管先と担当者を整理しておきましょう。
税務署・自治体への届出や申告、適用対象の事業所における社会保険等の終了手続きは、登記と別に確認します。会社全体の流れと役所への手続きは、会社の解散・清算手続きの全体ガイドもあわせて確認してください。
根拠:会社法666条・667条・672条・929条、商業登記法121条、日本年金機構の適用事業所全喪届。
登録免許税は3つの登記で合計4万1,000円
ここまで説明した通常の3つの登記にかかる登録免許税は、次のとおりです。
| 登記 | 登録免許税 |
|---|---|
| 解散 | 3万円 |
| 清算人 | 9,000円 |
| 清算結了 | 2,000円 |
| 合計 | 4万1,000円 |
4万1,000円は、会社を閉じる総費用ではありません。 官報公告の掲載料、証明書の取得費、郵送費、専門家に依頼する場合の報酬、納税や会社の債務の支払いなどは別です。他の変更登記を伴う場合も、別途確認が必要になります。
依頼先の見積りを見るときは、登記だけなのか、公告の手配や税務が含まれるのか、各専門家への費用が別なのかを分けて確認しましょう。
根拠:登録免許税法・別表第一第24号。
自分で準備することと、専門家へ確認することを分ける
最初に自分で整理したいのは、次の3点です。
- 定款と現在の社員構成をそろえ、誰が解散に同意するのかを確認する。
- 誰が清算人となるかを整理し、解散日・選任日・登記期限を記録する。
- 財産と債務、債権者、終了する契約や許認可の一覧を作る。
そのうえで、判断が必要な内容ごとに相談先を分けます。
- 司法書士:解散・清算人・清算結了の登記に関する書類作成や申請代理。
- 税理士:解散後の申告、残余財産に関係する税務、個別の税務相談。
- 弁護士:債務を支払えない場合、債権者や社員間に争いがある場合などの法的対応。
- 行政書士:事業の許認可に関する廃止届など、他の法律で制限されない範囲の行政手続き。
登記、税務、許認可では専門家の担当範囲が異なります。行政書士に相談すれば登記や税務の代理も当然に含まれる、とは考えず、依頼する業務と担当者を確認してください。
合同会社の清算で最初に重要なのは、株式会社の書式を集めることではなく、自社の定款、社員構成、清算人の決まり方を確かめることです。この3点と資産負債が整理できれば、必要な書類と相談先を具体的に絞れます。
参考:日本司法書士会連合会の業務案内、国税庁・税理士の業務、日本行政書士会連合会の業務案内。
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