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共同経営の株式比率|50:50は自殺行為?失敗しない決め方と黄金比

行政書士 小野馨
こんにちは

電子定款と会社設立の実績5000件、行政書士の小野馨です。

今回は、起業前に必ず知っておいてほしい『共同経営の株式比率』についてです。

非常にデリケートなお話になります。

「学生時代の親友と一緒に起業しよう!夢は大きく!」
「元同僚と2人で独立して、利益も権限も完全に半分こ(50:50)にしよう!」

もしあなたが今、このように考えてワクワクしているなら、数々の会社の「修羅場」を見てきた行政書士として、そして経営コンサルタントとして、心を鬼にして言わせてください。

ココがダメ

「株式比率50:50の共同経営は、99%の確率で失敗する『自殺行為』です。」

これ、決して大げさな話ではないんです。

仲が良いのは、会社を作る前まで。

いざお金が絡み、経営方針が食い違った瞬間、対等であるはずの「50:50」という数字が牙を剥きます。

注意ポイント

何も決められない植物状態(デッドロック)に陥り、相手を解任することもできず、黒字なのに会社の銀行口座が凍結されて倒産……

そんな地獄のようなケースを、私は嫌というほど見てきました。

「まさか親友とそんなことになるわけがない」と思いますよね?

でも、ビジネスとお金は人を変えてしまうんです。

この記事では、なぜ仲の良い友人同士の起業が失敗するのか、その法的なカラクリと、揉めずに事業を成長させるための「株式比率の黄金ルール」について、プロの視点で徹底解説します。

転ばぬ先の杖として、ぜひ最後まで読んでみてください。

▼この記事の重要ポイント

✅ 株式比率50:50は「何も決められない(デッドロック)」状態を招く
✅ 33.4%(3分の1超)を持たれると重要事項を「拒否」される権利が発生する
✅ 代表者の持株比率は「67%(3分の2以上)」が絶対的な黄金比である
✅ 揉めた時のために「株主間契約書」という裏の契約が必須になる
共同経営の株式比率が50:50で失敗する理由

まずは、なぜ「対等なパートナーシップ」がビジネスにおいて致命傷になるのか、その構造的な欠陥について解説します。

これは感情論ではなく、会社法(日本の法律)というルールに基づいた冷徹な現実です。

「俺たちは親友だから話し合えばわかる」という甘い期待は、お金の前では通用しません。

仲が良い今のうちだからこそ、最悪のシナリオを直視する必要があります。

共同経営の失敗で多いデッドロックの恐怖

株式会社において、物事を決める最高機関は「株主総会」ですよね。

この株主総会での決議(普通決議)は、原則として「発行済株式総数の過半数(50%超)」の賛成が必要です。

具体的には、役員の選任や解任、役員報酬の決定、決算の承認といった、会社の運営に関わる重要な決定事項です。

では、株式比率があなたとパートナーで「50:50」だったらどうなるでしょうか?

二人の意見が一致しているうちは平和です。「右に行こう」「そうだね」で済みますから。

しかし、経営方針で「A案で行こう」「いや、絶対にB案だ」と意見が割れた瞬間、悲劇が起きます。

どちらも「50%」しか持っておらず、過半数(51%以上)に届かないため、何一つ決定できなくなるのです。

これを専門用語で「デッドロック(膠着状態)」と呼びます。

この状態がいかに恐ろしいか、想像できますか?

例えば、「社長、今すぐ新しい事業を始めないと競合に負けます」と言われても予算承認ができない。

「あの役員は横領をしているからクビにしたい」と思っても、相手が同意しなければ解任できない。

まさに会社が植物状態に陥ります。

注意ポイント

実際に私が見たことがある事例でも、些細な喧嘩からデッドロックに陥り、株主総会議事録が作れないために銀行融資がストップし、業績は絶好調なのに資金ショートして廃業寸前に追い込まれたケースがあります。

この「何も決められない状態」こそが、共同経営の失敗の典型パターンなのです。

(出典:e-Gov法令検索『会社法第309条(株主総会の決議)』)

拒否権の割合は33.4%|何も変えられないリスク

「じゃあ、51:49にすればいいんでしょ?過半数は取れるし」

そう思う方も多いのですが、実はそれでもまだ安心できません。

なぜなら、会社法には通常の決議よりもさらに重要な案件を決める「特別決議」というルールがあるからです。

定款(会社のルールブック)の変更、会社の合併・解散、事業譲渡など、会社の運命を左右する超重要事項を決めるには、株主総会で「3分の2(約66.7%)以上」の賛成が必要だと法律で決まっています。

これを逆の視点から見るとどうなるか。

「3分の1超(33.4%)」の株式を持っている人は、単独でこれらの決定を「拒否」できる権利(拒否権)を持つということです。

これが、いわゆる「拒否権の割合(33.4%)」の壁です。

もしパートナーが34%以上の株を持ったまま仲違いしたら、どうなると思いますか?

「俺をクビにするなら、定款変更も合併もすべて拒否するぞ」と、会社を人質に取られることになります。

あなたは社長なのに、定款の一行すら変えられない、手足を縛られた「お飾り社長」になってしまうのです。

「増資をして相手の比率を下げよう」と思っても、そもそも第三者割当増資をするための定款変更が、相手の拒否権によってブロックされる。

この「詰み」の状態を作らないためにも、33.4%という数字は絶対に意識しなければなりません。

【株式保有割合と権限の早見表】
保有割合 名称 できること
33.4%超 拒否権 特別決議(定款変更など)を阻止できる
50.1%超 支配権(弱) 普通決議(役員の選任・解任)を単独で可決できる
66.7%以上 支配権(強) 特別決議を単独で可決できる(ほぼ全ての決定権)
会社乗っ取り対策が不可欠な役員解任の難しさ

共同経営でトラブルになった時、多くの社長が考えるのが「相手を役員から解任して追い出したい」ということです。

しかし、株式比率の問題がここでも大きく立ちはだかります。

前述の通り、50:50では解任決議を通すことすらできませんが、仮に過半数を持っていて解任できたとしても、地獄は続きます。

会社法第339条では、株主総会の決議でいつでも役員を解任できるとしていますが、同時に「正当な理由」がない場合は、解任された役員は会社に対して損害賠償を請求できると定めているのです。

ここで言う損害賠償とは、一般的に「残りの任期でもらえるはずだった役員報酬の総額」です。

もし設立時に「とりあえず任期は最長の10年にしよう」と設定していて、2年目で仲違いして解任した場合、残り8年分の報酬を一括で支払わなければならない可能性があります。

例えば年収500万円なら、4000万円の支払いです。これは中小企業にとっては倒産級の出費ですよね。

相手が株主として残り続け、さらに多額の賠償金を請求してくる……これは実質的な会社乗っ取り対策の不備と言えます。

共同経営を行う場合、役員任期はあえて「1年」と短く設定し、ダメなら「任期満了で退任(再任しない)」という平和的な逃げ道を作っておくことが、泥沼の紛争を避けるための鉄則です。

▼役員任期や資本金の設定で失敗したくない方はこちらもチェック

【会社設立の失敗事例】完璧な計画でも1年で消える理由と5000社の結論

金と労働の不一致|出資者と実務者の深い溝

よくあるトラブルの種が、出資(お金)と労務(労働)のバランスのズレです。
例えば、「Aさんは資金500万円を出す(経営には口を出さないオーナー型)」「Bさんはお金がないけど社長として現場で働く(労働型)」というケースで考えてみましょう。

創業当初は「お金を出してくれてありがとう、頑張るよ」という感謝で始まります。
しかし、会社が軌道に乗って儲かってくると、現場で働くBさんは次第にこう思い始めます。

「毎日汗水垂らして、休日もなく働いているのは俺だ。なんで会社に顔も出さないAさんに、多額の配当を払わなきゃいけないんだ? 俺の働き損じゃないか?」

一方、出資者のAさんはこう思います。

「最初に何の実績もない会社に500万円もリスクマネーを出したのは俺だぞ。その金があったから今の会社があるんだ。リターンをもらって当然だ。」

この「貢献度の評価」のズレが、決定的な亀裂を生みます。
株式比率を決める際は、「今の仲の良さ」で決めるのではなく、「誰が金銭的リスクを取り、誰が経営責任を負うのか」というドライな視点で設計する必要があります。
人間は、自分の貢献を過大評価し、他人の貢献を過小評価する生き物です。
感情論ではなく、資本の論理で最初から決めておかないと、後で修正するのは不可能です。

出口戦略の欠如|辞めた人間が株を持つ恐怖

結婚する時に離婚の話をするカップルはいませんが、共同経営では「離婚(撤退・喧嘩別れ)」のルールを最初に決めておく義務があります。
最も厄介なのが、「会社を辞めるけど、株は持ったままにするよ」と言われるケースです。

辞めた人間が株(権利)を持ったままだと、どうなるでしょうか。
会社が成長して将来M&A(バイアウト)やIPO(上場)を目指す際に、その元パートナーが「俺の株は絶対に売らない」「俺の承認印が欲しければ1億円払え」と邪魔をする可能性が高くなります。

外部の投資家や買収企業は、所在不明の株主や、経営に関与していない敵対的な株主(元役員など)がいる会社を極端に嫌います。
つまり、株の所在が整理されていないだけで、会社の成長機会がすべて潰れてしまうのです。

「会社を辞める時は、必ず保有している株式を経営陣(または会社)に、あらかじめ決めた価格(簿価など)で買い戻させる」
このような「強制買取条項」を定款や契約書に入れておかないと、将来、あなたの会社が元パートナーに人質に取られることになります。

共同経営の株式比率の決め方と黄金比の防衛策

ここまで怖い話ばかりしてしまいましたが、絶望する必要はありません。
最初から「こうなる可能性がある」と分かっていれば、対策は打てます。
ここでは、万が一喧嘩別れしても会社本体が生き残るための「株式比率の黄金ルール」と、法的拘束力のある具体的な防衛策について、プロの視点で解説します。

株式比率の決め方は代表者が67%以上が鉄則

結論から言います。
代表取締役(社長)となる人間、つまりあなたが、「3分の2以上(66.7%以上、できれば70%以上)」の株式を持つこと。
これが、共同経営において唯一「安全」と言える黄金比率であり、正しい株式比率の決め方です。

なぜ67%なのか。
それは、先ほど説明した通り、相手の同意がなくても「特別決議」を単独で通せるラインだからです。
最悪の場合、定款を変えて相手を排除したり、組織再編を行ったりして、会社を守るためのあらゆる手が打てるようになります。

「そんな独裁的なやり方、相手が納得しないよ」と思われるかもしれません。
しかし、船頭が二人いる船は必ず沈みます。最終的な責任を取る社長が、権限も全て握る。
これこそがビジネスの鉄則であり、投資家や銀行からの評価も高くなります。
逆に、どうしても50:50にこだわる相手とは、そもそも起業すべきではありません。それくらい、株式の配分は経営の根幹に関わる問題なのです。

【株式保有割合とできること(権限)】
保有割合 可能なこと(支配力) リスク
33.4% (1/3超) 拒否権(特別決議の阻止) 相手に持たれると重要決定ができない
50.1% (過半数) 普通決議(役員の選任・解任) 定款変更やM&Aは単独でできない
66.7% (2/3以上) 特別決議(ほぼ全ての決定権) 【推奨】完全な支配権の確立
種類株式のメリットを活用した経営権の確保

「でも、資金の半分は相手が出すから、どうしても株を半分渡さないといけない…」
そんな時に使えるプロの裏技が「種類株式(しゅるいかぶしき)」の活用です。
これは、通常の株式(普通株式)とは権利の内容が異なる株式を発行できる制度です。

具体的には、「議決権制限株式(無議決権株式)」を使います。
これは、「配当は普通株の2倍もらえるけれど、株主総会での議決権(経営に参加する権利)はゼロですよ」という株式です。
この種類株式のメリットは計り知れません。

例えば、出資者であるパートナーにはこの「無議決権株式」を持ってもらえば、相手は経済的なメリット(配当)を享受でき、あなたは経営の支配権(議決権100%)を維持できます。
「お金は出すが口は出さない」という理想的な関係を、法的に作り出すことができるのです。
電子定款を作成する際に、この種類株式の設定を盛り込むことで、将来のトラブルを未然に防ぐことができます。
この設計は非常に専門的ですが、私たちのようなプロに依頼すればスムーズに導入できますよ。

共同経営の契約書(株主間契約書)の必須項目

定款は法務局で誰でも閲覧できる可能性があるため、あまり過激なことや個人的な約束は書けません。
そこで、創業者同士だけで結ぶ非公開の契約、「共同経営の契約書」、専門的には「株主間契約書(Founder’s Agreement)」の締結が必須になります。

この契約書には、以下のような生々しいルールを具体的に定めます。

譲渡制限(ロックアップ):創業から○年間は、勝手に第三者に株を売ってはいけない。
強制買取(創業メンバー退任時):役員を辞める時、または解任された時は、保有株を全て代表者に「1株〇円(または簿価)」で売却すること。
専念義務:役員在任中は競合他社の仕事をしたり、個人の副業をしてはいけない。
デッドロック条項:意見が割れた時は、代表者の意見を優先する(または、代表者が相手の株を買い取る権利を持つ)。

この契約書があるだけで、トラブル時の解決スピードが劇的に早まります。
「口約束」で終わらせず、必ず法的効力のある「書面」に残すこと。これが大人の友情の守り方です。
(出典:経済産業省『スタートアップの株主間契約に関するモデル契約書』)

資本金不足でも融資を活用して株を守る

そもそも、なぜ株式比率で悩むことになるのでしょうか。
その根本原因は、厳しいようですが、社長であるあなた自身の「自己資金不足」にあることが多いです。
「お金がないから友達に出してもらう」というスタンスだと、どうしても相手の顔色を伺い、株を渡さざるを得なくなります。

自分の城(会社)は、自分の金で建てるのが筋です。
もし手元資金が少ないなら、無理に大きな資本金を目指すのではなく、資本金を下げてでも、自分ひとりで100%出資する形からスタートすべきです。

そして、足りない運転資金は「創業融資」で調達してください。
融資であれば、銀行は「債権者」にはなりますが「株主」にはなりません。つまり、経営権(議決権)を奪われることなく資金を調達できるのです。
安易に株式を切り売りして資金調達をするのは、自分の腕を切り落として肉を売るようなものです。支配権を売るのは最後の手段にしてください。

▼資本金はいくらが正解?自分のお金で始める重要性

資本金はいくらが正解?1円起業のデメリットと融資に通る最適額

専門家を行政書士などに依頼するメリット

「契約書を作ろう」と友人に切り出すのは、正直気まずいですよね。
「俺のことを信用していないのか?」と言われそうで怖い気持ち、よく分かります。
そんな時こそ、私たちのような行政書士や専門家という「第三者」をうまく利用してください。

「俺は信用してるんだけど、専門家に相談したら『今の会社法ではこの契約書が必要不可欠だ』って言われたんだ」
「融資を通すために、銀行の審査基準でこの株式比率じゃないとダメらしい」

と、プロを悪者(言い訳)にすることで、角を立てずにドライで安全な契約を結ぶことができます。
私たちが提供する電子定款作成サービスでは、単なる設立代行だけでなく、こうした「共同経営のリスクヘッジ」や「種類株式の設計」といった高度なコンサルティングも行っています。
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