
その「領収書」、絶対に捨てないでください。
ゴミ箱行きのレシート一枚が、数年後にあなたの会社のピンチを救う「現金」に化けるからです。

こんにちは!
開業20年で会社設立の実績5000件、行政書士の小野馨です。
今回は、【創立費と開業費の違いと節税テクニック】というテーマでお話しします。
「会社ができる前の費用は、個人の持ち出しだから経費にならない」
そう勘違いしている起業家の方が非常に多いです。
しかし、それは大きな損失です。
ポイント
会社設立のために使った電車賃、打ち合わせのカフェ代、定款作成費用、パソコン購入費…これらは全て、会社の経費として計上可能です。
しかも、単なる経費ではありません。
「創立費」や「開業費」として正しく処理することで、好きな時に好きなだけ経費にして利益を圧縮できる「魔法のポケット(繰延資産)」になるのです。
この記事では、この2つの費用の明確な違いと、賢い経営者が実践している領収書の扱い方について、行政書士の視点で徹底解説します。
▼ この記事のポイント ▼
- ✅ 設立前の費用は「創立費」、設立後は「開業費」
- ✅ 宛名が個人名の領収書も経費になる
- ✅ 定款作成費用は「創立費」の代表格
- ✅ 「任意償却」を使えば赤字回避も節税も自由自在
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創立費と開業費を正しく使い分けるための基礎知識

ポイント
創立費と開業費とは、会社がビジネスを本格稼働させる前にかかった「準備費用」を、会計上のルールに従って分類した勘定科目のことです。
「どちらも同じ『準備費用』じゃないか」と思うかもしれません。
しかし、税務の世界では、この2つを明確に区別します。
その境界線はたった一つ、「会社の設立登記日」です。
多くの起業家が、この分類をおろそかにして、せっかくの節税チャンスを逃しています。
私が担当したお客様のDさんもそうでした。
参考
Dさんは「個人の財布から出したお金と、会社の通帳から出したお金が混ざると面倒だから」という理由で、設立前に買った15万円のパソコンや、打ち合わせの飲食代のレシートを全て破棄していました。
「小野さん、どうせ数万円の話でしょう? 面倒くさいですよ」
彼はそう笑っていましたが、私が集計し直すと、その総額はなんと80万円近くにのぼりました。
「Dさん、これは80万円のゴミではありません。将来、法人税を約20万円減らせる『金券』を捨てているのと同じですよ」
そう伝えると、彼は青ざめてゴミ箱をひっくり返そうとしました。
設立当初はお金が出ていくばかりで、経理処理まで気が回らないのは分かります。
ポイント
しかし、この「創立費」と「開業費」は、通常の経費とは異なり、赤字の年は経費にせず、黒字が出た年にドカンと経費にできる「繰延資産(くりのべしさん)」という特別な性質を持っています。
つまり、会社の寿命を延ばすための「貯金」のようなものなのです。
正しく使い分けることで、あなたの会社はより強く、賢く生き残ることができます。
設立登記日を基準にした費用の違い
では、具体的に何が「創立費」で、何が「開業費」になるのでしょうか。
その判断基準は「設立登記日(法務局に申請した日)」の前か後か、この一点です。
【創立費】= 登記日「より前」にかかった費用
ココがポイント
会社そのものを作るためにかかった費用です。
定款作成費用、登録免許税、司法書士・行政書士への報酬、発起人の打ち合わせ費用などが該当します。
【開業費】= 登記日「以後」〜営業開始までにかかった費用
ココがポイント
会社はできたけれど、まだ売上が立つ前の「開店準備」にかかった費用です。
事務所の家賃、チラシの印刷代、名刺作成費、パソコン等の備品購入費、挨拶回りの手土産代などが該当します。
この違いを理解しておかないと、決算の時に税理士さんに「これ、どっちですか?」と聞かれてパニックになります。
分かりやすく表にまとめましたので、レシート整理の参考にしてください。
| 区分 | 時期 | 具体的な費用の例 |
|---|---|---|
| 創立費 | 設立登記をする 【前】まで | ・定款認証手数料 ・登録免許税 ・専門家報酬(行政書士等) ・印鑑作成代 ・発起人の打合せ飲食代 |
| 開業費 | 設立登記の 【後】から 営業開始まで | ・名刺、チラシ作成費 ・事務所の賃料 ・パソコン、デスク等の備品 ・水道光熱費、通信費 ・挨拶回りの交通費 |
定款作成費用はどちらに含まれるのか
これから会社を作る方にとって、一番大きな出費の一つが「定款作成費用」でしょう。
ココがポイント
結論から言えば、定款作成にかかる費用は、すべて「創立費」に含まれます。
定款は、会社設立登記の申請時に必ず添付しなければならない書類ですので、必然的に「登記前」に費用が発生するからです。
具体的には以下のものが含まれます。
- 公証人の認証手数料: 約3万〜5万円(資本金による)
- 定款の謄本交付手数料: 約2,000円
- 収入印紙代: 4万円(※紙の定款の場合のみ。電子定款なら0円)
- 行政書士への作成報酬: 数万円〜
特に注意が必要なのは、「電子定款」を選択した場合の行政書士報酬です。
印紙代4万円を節約するために行政書士に依頼した場合、その報酬も「創立費」として計上できます。
つまり、4万円のコストカットをしつつ、支払った報酬も経費にして節税できるという、二重のメリットがあるわけです。
「定款なんて紙切れ一枚」と思わず、会社の憲法を作るための重要な投資であり、かつ貴重な「創立費」の一部であることを忘れないでください。
(領収書の仕訳や経理処理が面倒な方は、専門家への丸投げも可能です)
領収書の宛名が「個人名」でも大丈夫な理由
「でも小野さん、準備中の領収書は全部『自分の名前(個人名)』でもらっています。会社の名前じゃないと経費にならないのでは?」
この質問は本当によく受けます。
安心してください。
ココがポイント
宛名が個人名であっても、問題なく会社の経費(創立費・開業費)として認められます。
理由は単純です。
買い物をした時点では、まだ「会社が存在していなかった」からです。
存在しない法人の名前で領収書をもらうことは不可能ですから、発起人である個人名にならざるを得ません。
税務署もその事情は十分に理解しています。
ただし、何でもかんでも経費になるわけではありません。
「事業に関係がある支出であること」を説明できなければなりません。
参考
例えば、会社設立の打ち合わせで使ったカフェ代はOKですが、家族とのプライベートな食事代はNGです。
後で税務調査が入った時に堂々と説明できるよう、領収書の裏や余白にメモを残しておくことを強くお勧めします。
- 「○月○日 司法書士と定款の打ち合わせ」
- 「○月○日 開業用パソコン購入」
この一行があるだけで、そのレシートは「紙切れ」から「信頼できる証拠書類」へと変わります。
個人名の領収書は、会社設立後に「立替金精算書」などを作って、会社から個人へお金を返金する形をとるか、あるいは「役員借入金」として処理することになります。
少し専門的な話になりましたが、今の段階では「とにかく、事業に使った領収書は一枚たりとも捨てずに保管しておく」ことだけを徹底してください。
それが、将来のあなたを助けます。

創立費と開業費で利益をコントロールする「任意償却」
ここからが、本記事のハイライトであり、賢い経営者だけが知っている「裏ワザ」の解説です。
創立費と開業費は、単なる「経費」ではありません。
ポイント
会計上、これらは「繰延資産(くりのべしさん)」という特別な資産として扱われます。
通常の経費(消耗品費や交通費など)は、使ったその年に全額を経費計上しなければなりません。
しかし、繰延資産である創立費と開業費には、「任意償却(にんいしょうきゃく)」という特権が認められています。
これは、「いつ、いくら経費にするかを、会社が自由に決めていい」という最強のルールです。
例えば、創業1年目に100万円の創立費があったとします。
通常の経費なら、1年目に強制的にマイナス100万円として計上されます。
しかし、創業1年目は売上も少なく、もともと赤字(または利益トントン)であることが多いものです。
赤字の時にさらに経費を計上しても、税金は安くなりません
(法人税は利益に対してかかるため、赤字なら税金は最低額の7万円だけです)。
つまり、赤字の年に経費を使うのは「もったいない」のです。
そこで「任意償却」の出番です。
この100万円を、1年目は「0円」しか経費にせず、資産として温存しておきます。
ポイント
そして、ビジネスが軌道に乗って利益がドカンと出た3年目に、温存しておいた100万円を全額経費としてぶつけるのです。
これにより、3年目の法人税を大幅に圧縮することが可能になります。
[/st-mybox]私が顧問を務める建設会社のE社長は、創業時にかかった200万円近い開業費を、5年間ずっと使わずに「お守り」として持っていました。
そして6年目、大型案件を受注して大きな利益が出たタイミングで、この200万円を一気に償却。
結果として、約60万円もの税金を適法にキャッシュとして手元に残すことに成功しました。
「あの時の苦労(出費)が、今になって報われましたよ」と笑うE社長。
このように、過去の出費を未来の利益と相殺できるタイムマシンのような機能、それが「任意償却」なのです。
決算書を黒字にするための仕訳テクニック
では、実際に会計ソフトにどう入力すればよいのでしょうか。
具体的な仕訳の流れを見てみましょう。
まず、費用を支払った(または集計した)段階では、費用ではなく「資産」として計上します。
【1. 費用の発生時(または期首)】
(借方)創立費 1,000,000 / (貸方)役員借入金 1,000,000
※個人のお金で支払った場合は「役員借入金」として処理します。
次に、決算のタイミングで「今年はいくら経費にするか」を決めます。
もし1年目が赤字で、銀行融資のために少しでも決算書を良く見せたい(赤字幅を減らしたい)場合は、償却を「0円」にします。
【2. 決算時(赤字なので償却しない場合)】
仕訳なし。
(※結果、100万円は資産の部に残り、経費(P/L)にはヒットしません)
逆に、利益が出て税金を減らしたい場合は、必要な分だけ償却します。
【3. 決算時(利益が出たので全額償却する場合)】
(借方)創立費償却 1,000,000 / (貸方)創立費 1,000,000
この「創立費償却」という科目は、営業外費用として扱われます。
このように、自分の会社の懐事情に合わせて、蛇口をひねるように経費の量を調整できるのが最大のメリットです。
多くの会計ソフトでは、「減価償却資産の登録」画面などで登録することで自動計算できますが、設定を間違えると勝手に定額償却されてしまうこともあるため、税理士さんと相談しながら進めることをお勧めします。
参考:創業費の取扱い(国税庁タックスアンサー No.5460)
5年均等償却ではなく「任意償却」を選ぶ理由
ココがおすすめ
少し専門的な話をすると、会計上のルール(企業会計原則)では、繰延資産は「5年以内で均等に償却すること」が原則とされています。
つまり、100万円なら毎年20万円ずつ、5年間かけて経費にしていく方法です。
しかし、税法(法人税法)では、「いつでも償却してOK(任意償却)」という特例が認められています。
中小企業の実務においては、この税法のルールに従って処理するのが一般的です。
ポイント
なぜなら、「5年均等」よりも「任意」の方が圧倒的に有利だからです。
5年均等にしてしまうと、赤字の年にも強制的に20万円が経費計上され、赤字が拡大してしまいます。
銀行融資の審査において、赤字幅が大きいことはマイナス評価に直結します。
一方、任意償却であれば、赤字の年は償却をストップして黒字化(または赤字縮小)を図り、銀行からの評価を守ることができます。
つまり、任意償却を選択することは、単なる節税だけでなく、「決算書の見た目をコントロールして、融資を受けやすくする財務戦略」でもあるのです。
これから税理士と契約する方は、「創立費と開業費は任意償却でお願いします」と一言伝えてみてください。
それだけで「お、この社長は勉強しているな」と一目置かれるはずです。
あなたの会社を守る「魔法のポケット」
ここまで、創立費と開業費について解説してきました。
私がこれほどまでに「レシートを捨てないで」と訴える理由。
それは、これらの費用があなたの会社を守る「魔法のポケット」になるからです。
起業直後の数年間は、予想外のトラブルの連続です。
思ったように売上が上がらない年もあれば、逆に予想外に利益が出てしまい、多額の税金に頭を抱える年もあるでしょう。
そんな時、創業時に積み上げておいた「創立費」や「開業費」というポケットがあれば。
苦しい時はポケットを閉じて見守り、利益が出すぎた時はポケットを開放して税金を抑える。
まさに、経営の安定装置(スタビライザー)として機能してくれます。
定款作成費用も、パソコン代も、打ち合わせのコーヒー代も。
その一つ一つが、未来のあなたを助ける弾薬です。
どうか、一枚のレシートも無駄にせず、賢くしたたかに、会社経営という荒波を乗り越えていってください。
正しい知識と準備があれば、税金は敵ではなく、コントロール可能なコストになります。
あなたが作ったその会社が、10年後も20年後も続く強い組織になることを、心から願っています。
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よくある質問(FAQ)
Q. 領収書がない出費(電車賃など)はどうすればいいですか?
A. 「出金伝票」を作成すれば経費として認められます。100円ショップなどで売っている伝票に「日付」「支払先(JRなど)」「金額」「内容(会社設立打ち合わせのための交通費)」を記録し、保管しておいてください。
Q. 任意償却は何年以内に使い切らないといけないのですか?
A. 法人税法上、償却期間に期限はありません。5年を超えても資産として持ち越し、10年後や20年後に償却することも可能です。会社が存続する限り使える、非常に強力な権利です。
Q. 資本金を経費にすることはできますか?
A. いいえ、資本金自体は経費になりません。資本金は会社の「元手」であり、使って無くなるものではないからです。ただし、資本金を使って購入したパソコンなどは、減価償却費や消耗品費として経費になります。
この記事を書いた人
行政書士 小野 馨
会社設立・電子定款専門の行政書士。起業家の「面倒」を「武器」に変えるサポートを信条に、年間数百件の相談に対応。実務とマーケティングの両面から、失敗しない創業を支援しています。
## ■ 付属資料:H2見出し用・画像生成プロンプト(Powered by Banana)
**【H2-1: 創立費と開業費を正しく使い分けるための基礎知識 用】**
> **Prompt:** A split composition image. Left side shows a construction blueprint labeled "Founding", Right side shows an "Open" shop sign. A calendar with a red circle on "Establishment Day" divides them. White background, blue and gold accents, photorealistic style --ar 16:9 --v 6.0
> **Concept:** 登記日を境に、左側が「設計・準備(創立費)」、右側が「開店・営業(開業費)」であることを視覚的に対比させる。
**【H2-2: 創立費と開業費で利益をコントロールする「任意償却」 用】**
> **Prompt:** A smart business person adjusting a water faucet, water flows into a bucket labeled "Expenses". The faucet handle allows precise control. Clean white background with golden coins scattered, high quality 3D render --ar 16:9 --v 6.0
> **Concept:** 蛇口(任意償却)をひねることで、バケツへの水(経費)の量を自由にコントロールできる様子を表現。節税の自由度を暗示。
会社設立や電子定款認証のスペシャリスト!開業17年・年間実績500件以上。実は、電子定款の制度ができた10年以上前から電子定款認証の業務を行なっているパイオニアです!他との違いは、まず定款の完成度!内容はモデル定款のモデルと言われ全国数百箇所の公証人の目が入っている優れもの!そして電子署名はまるでサインのようなかっこいい電子署名です!その電子定款であなたの大切な会社設立を真心込めて応援します!
