専門家に丸投げすると、手数料だけで10万円以上飛びます。そのお金、資本金に回しませんか?
「役所の手続きは難しそう…」今はクラウドツールを使えば、プラモデル感覚で会社が作れる時代です。

「自分の会社は自分で作る。それが最初の経営判断だ」と考える、行政書士の小野馨です。
今回は、マイクロ法人(合同会社)を【誰の手も借りずに、自分で安く作る方法】について、実務家の視点でガイドします。
マイクロ法人を検討している方の多くは、「コスト意識」が高いはずです。
せっかく社会保険料を削減するために法人を作るのに、設立手続きで司法書士や行政書士に10万円、20万円と報酬を払っていては本末転倒です。合同会社であれば、構造は非常にシンプルです。
ポイントさえ押さえれば、法律知識のない素人でも、法務局での登記を完了させることは十分に可能です。
そこで本記事では、プロに依頼せず、最低限の法定費用(6万円)だけでマイクロ法人を立ち上げるための「完全自力ロードマップ」を公開します。
各工程で必要な「決定事項」については、専門の解説記事への案内板(リンク)も用意しました。迷わずゴールまで走り抜けましょう。
▼ この記事のポイント ▼
- ✅ 合同会社なら、自分でやれば「総額6万円」で設立可能
- ✅ 紙の定款は4万円損する。「電子定款」が必須条件
- ✅ 期間は準備から登記完了まで「最短2週間」見ておく
- ✅ 事業目的などの「中身」は、専門記事でカンニングせよ
※なお、まだマイクロ法人の仕組みやメリット・デメリットを把握していない方は、
を先に読んで、全体像を掴んでおくことをお勧めします。
マイクロ法人の作り方・全体ロードマップ(期間と費用)
まずは全体像を把握しましょう。
登山と同じで、ルートを知らずに歩き出すと遭難します。
マイクロ法人(合同会社)の設立は、以下の5ステップで進みます。
[画像指示: 5つのステップのフローチャート。1.基本事項決定 → 2.定款作成(電子) → 3.出資金払込 → 4.登記申請 → 5.事後届出。期間バーとして「トータル約2週間」と表示 (推奨ファイル名: micro-corp-setup-roadmap.jpg, alt: マイクロ法人設立ロードマップ)]【準備〜登記】完了までは「最短2週間」のスケジュール感
「明日会社を作りたい!」と思っても、それは不可能です。
役所(法務局)の審査には一定の日数がかかりますし、その前の書類作成や印鑑作成にも物理的な時間が必要です。
スムーズにいって、準備開始から登記完了(謄本が取れる状態)まで、約2週間を見ておいてください。
- 📅 1週目(準備): 会社名の決定、印鑑発注、定款作成、出資の払込み
- 📅 2週目(申請): 法務局へ申請(登記)、審査待ち(約1週間)
なお、法務局に書類を出した日(申請日)が、あなたの会社の「設立記念日(誕生日)」になります。大安などのこだわりがある場合は、逆算して準備を進める必要があります。
費用は「合同会社」×「電子定款」なら総額6万円のみ
次に予算です。自分でやる場合と、専門家に頼む場合、そして「株式会社」で作ってしまった場合の比較です。
| パターン | 会社形態 | 法定費用(税金等) | 専門家報酬 | 合計コスト |
|---|---|---|---|---|
| 自分(電子定款) | 合同会社 | 60,000円 | 0円 | 約6万円 |
| 自分(紙定款) | 合同会社 | 100,000円 | 0円 | 約10万円 |
| 専門家に依頼 | 合同会社 | 60,000円 | 約5〜10万円 | 約11〜16万円 |
| 参考:株式会社 | 株式会社 | 約200,000円 | (+報酬) | 20万円超 |
ご覧の通り、「合同会社」を「自分で(電子定款で)」作るのが、最強のコスパです。株式会社にするだけで、コストは3倍以上に跳ね上がります。見栄を捨てて実利を取るマイクロ法人なら、迷わず一番上のパターンを選んでください。
Step1:基本事項の決定(商号・本店・印鑑)
ここから具体的な作業に入ります。まずは会社の「基本スペック」を決めます。
会社名は「英語」でもOK? 意外と自由な商号ルール
会社名(商号)は、基本的に自由につけられます。
漢字、ひらがな、カタカナはもちろん、ローマ字(ABC…)やアラビア数字(123…)も使えます。例えば「合同会社Smart-Life 2025」のような名前も登記可能です。
【注意点】
・「合同会社」という文字は必ず前後どちらかに入れなければなりません。(例:合同会社〇〇、または〇〇合同会社)
・同一住所に同一の商号は登記できません(自宅兼事務所にする場合、家族が既に会社を作っていないか確認してください)。
本店住所は「自宅」でいい? 賃貸契約の注意点
マイクロ法人の本店所在地は、コスト削減のため「自宅」にするのが一般的です。
ただし、自宅が「賃貸マンション」の場合は注意が必要です。多くの賃貸契約書には「居住専用」「事務所不可」という条項があります。勝手に法人登記をして、郵便物が届くようになると、大家さんに見つかって契約解除になるリスクがあります。
リスクを避けたい場合は、大家さんに承諾を取るか、月額数千円の「バーチャルオフィス」を借りて、そこを本店所在地として登記するのが安全です。
会社実印を作るタイミングと「ネット注文」の安さ
会社名が決まったら、すぐに「会社実印(代表者印)」を発注してください。これが手元にないと、次のステップである定款作成や登記申請に進めません。
街のハンコ屋さんで作ると数万円することもありますが、今はネット通販で十分です。「会社設立印鑑セット(実印・銀行印・角印)」で検索すれば、3,000円〜5,000円程度で立派なものが作れます。こだわりがなければ、安い素材(柘など)で全く問題ありません。
Step2:定款作成(※ここで4万円の差がつく)
最難関の「定款(会社のルールブック)」作成です。ここで「事業内容」を決め、「電子定款」を作る必要があります。
紙の定款はNG!「電子定款」で印紙代を0円にする仕組み
定款の中身(文章)ができたら、それを「定款」として仕上げます。ここで運命の分かれ道です。
紙に印刷して製本すると、印紙税法により「4万円の収入印紙」を貼らなければなりません。しかし、PDFデータで作る「電子定款」なら、印紙代は0円です。
「じゃあPDFにするだけか」というと、そう簡単ではありません。電子定款には「電子署名」が必要で、これにはマイナンバーカード、ICカードリーダー、そして有料のAdobe Acrobat(署名プラグイン対応版)が必要です。たった一回の設立のためにこれらを揃えるのは、逆に高くつきます。
【正解:クラウド設立ツールを使う】
素人が安く電子定款を作る唯一の解は、「会社設立freee」や「マネーフォワード会社設立」などのクラウドツールを使うことです。これらのサービスを使えば、月額料金や少額の手数料(5,000円程度)で、行政書士が電子署名を代行してくれます。
自分で機材を買う必要もなく、紙の4万円も払わなくて済む。これが現代の「賢い自力設立」のスタンダードです。
【重要】事業目的の書き方は「専門記事」をカンニングせよ
定款には「この会社は何をして稼ぐのか」という事業目的を記載する必要があります。
ここで「個人事業と同じ内容」を書いてしまうと、税務署に否認されるリスクがあることは、以前お話しした通りです。また、書き方を間違えると法務局で修正を命じられます。
失敗しない事業目的の選び方と、そのまま使える文例については、以下の専門記事で徹底解説しています。必ずこちらを確認し、文言を選んでから戻ってきてください。
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【コピペOK】マイクロ法人の定款「事業目的」書き方・文例集20選|行政書士が教える資産管理会社の鉄板ルール
例(A):定款の事業目的は「会社の憲法」です。適当に書くと、後で銀行口座が作れません。 例(B):個人事業と全く同じことを書こうとしていませんか? その瞬間、税務署のターゲットロックオンです。 行政書 ...
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Step3〜4:出資と登記申請(法務局)
定款(会社のルール)が決まったら、次は「資本金の準備」と、本丸である「法務局への申請」です。ここが正念場です。
[画像指示: 銀行通帳のコピーと、6万円分の収入印紙が貼られた登記申請書のイラスト。法務局の窓口に提出している様子 (推奨ファイル名: registration-application-process.jpg, alt: 登記申請と資本金払込)]資本金の払込みは「個人の通帳」を使うのが正解
会社を作る前なので、当然まだ「会社の銀行口座」はありません。では、資本金はどこに入れるのか?
正解は、「発起人(あなた自身)の個人の銀行口座」です。
手順は以下の通りです。
1. あなたの個人口座(普段使っているものでOK)を用意する。
2. その口座に、資本金全額(例:10万円)を「振込」または「預入」する。
3. 記帳されたら、「通帳の表紙」「表紙の裏(支店名などが載っているページ)」「振込が記帳されたページ」の3枚をコピーする。
4. 「払込証明書」という表紙を作り、コピーと一緒にホッチキスで留める。
これが「資本金が確かに存在します」という証明書になります。
行政書士 小野馨の「ここだけの話」
ここで一番多いミスが「日付」です。お金を入金するのは、必ず「定款作成日(電子署名日)以降」でなければなりません。定款ができる前に入れたお金は「ただの貯金」とみなされ、法務局で突き返されます。必ず「定款作成→入金」の順序を守ってください。
登記申請書の作り方と法務局への提出方法(郵送可)
いよいよラストスパートです。「合同会社設立登記申請書」を作成します。
これは法務局のホームページに雛形(Word)がありますが、初心者は前述の「会社設立freee」などのツールで自動生成されたPDFを印刷するのが確実です。
【申請セットの内容】
1. 登記申請書(6万円の収入印紙を貼る台紙付き)
2. 本店所在地決定書
3. 代表社員就任承諾書
4. 払込証明書(先ほど作った通帳コピーの束)
5. 電子定款の入ったCD-R(または磁気ディスク提出用フォルダー)
これらをまとめてホッチキスで留め、会社実印を押します。そして、管轄の法務局へ提出します。
「平日に法務局なんて行けないよ」という方も安心してください。「郵送」でOKです。封筒の表に「設立登記申請書在中」と赤書きし、書留(レターパックプラスなど追跡できるもの)で送れば完了です。
法務局に到着した日が、あなたの会社の「設立日」になります。そこから約1週間〜10日後、何も連絡がなければ無事に登記完了です(※不備がある時だけ電話がかかってきます)。
Step5:設立後の届出(税金・社会保険)
登記が終わっても、まだ終わりではありません。最後に「会社ができました」と各役所に知らせる必要があります。これを忘れると、青色申告ができなかったり、社会保険に入れなかったりと、大惨事になります。
[画像指示: 設立後の手続きリスト。税務署、都道府県、年金事務所の3つのルートが示されている図 (推奨ファイル名: post-incorporation-procedures.jpg, alt: 会社設立後の届出)]これで完了!税務署と年金事務所への「開業セット」提出
登記完了後、法務局で「履歴事項全部証明書(謄本)」と「印鑑証明書」を数通取得したら、以下の3箇所へ届出を行います。
| 提出先 | 主な書類 | 期限 |
|---|---|---|
| ① 税務署 | 法人設立届出書 青色申告承認申請書 給与支払事務所等の開設届 | 設立から2ヶ月以内 |
| ② 都道府県・市町村 | 事業開始等申告書 | 設立から15日〜1ヶ月以内 |
| ③ 年金事務所 | 健康保険・厚生年金保険 新規適用届 | 事実発生から5日以内 (※実務上は多少遅れてもOK) |
特に③の年金事務所への届出が、マイクロ法人のゴールです。ここで「役員報酬をいくらに設定したか」を申告する必要があります。
ここで「月額45,000円」で申請することで、初めて社会保険料削減が実現します。この手続きの際に必要な「決定書」の書き方や、年金事務所での立ち回りについては、以下の専門記事でテンプレートを配布しています。
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【コピペOK】マイクロ法人の定款「事業目的」書き方・文例集20選|行政書士が教える資産管理会社の鉄板ルール
例(A):定款の事業目的は「会社の憲法」です。適当に書くと、後で銀行口座が作れません。 例(B):個人事業と全く同じことを書こうとしていませんか? その瞬間、税務署のターゲットロックオンです。 行政書 ...
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青色申告の承認申請書を忘れると大損する
最後に一つだけ、致命的な注意点です。
税務署に出す「青色申告承認申請書」。これだけは絶対に期限(設立から3ヶ月以内)を守ってください。
マイクロ法人は、設立初年度は赤字になることが多いです。青色申告をしておけば、この赤字を翌年以降に繰り越して、将来黒字が出た時に相殺(節税)することができます(欠損金の繰越控除)。
しかし、申請書を出し忘れて「白色申告」になってしまうと、赤字はただの垂れ流しになり、繰り越せません。紙一枚出すだけで数万円〜数十万円の税金が変わります。必ず提出してください。
あなたが得られる未来(まとめ)
自分の城を持ち、手取り最大化の旅へ出発しよう
お疲れ様でした。以上が、マイクロ法人を自分で作るための全ロードマップです。
「意外とやることが多いな」と思いましたか? それとも「これなら自分でもできそうだ」と思いましたか?
確かに手間はかかります。しかし、この一連の作業は、たった一度きりです。この数週間の努力を乗り越えれば、この先ずっと「年間数十万円の社会保険料削減」という果実を受け取り続けることができます。
自分で設立手続きを行うことは、単なるコスト削減ではありません。自分の会社の定款を読み、ハンコを押し、役所に届ける。そのプロセスを通じて、「経営者としての自覚」が芽生えるのです。さあ、準備は整いました。あとは行動あるのみです。
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記事の内容は執筆時点の法令・情報に基づいています。法改正や自治体の条例により最新の要件と異なる場合がありますので、実務の実行にあたっては、必ずご自身で管轄の行政庁または専門家へ確認を行ってください。
会社設立や電子定款認証のスペシャリスト!開業17年・年間実績500件以上。実は、電子定款の制度ができた10年以上前から電子定款認証の業務を行なっているパイオニアです!他との違いは、まず定款の完成度!内容はモデル定款のモデルと言われ全国数百箇所の公証人の目が入っている優れもの!そして電子署名はまるでサインのようなかっこいい電子署名です!その電子定款であなたの大切な会社設立を真心込めて応援します!