電子定款・定款認証

不動産業の定款は事業目的が命!書き方と設立の注意点を解説

不動産業の定款の書き方

行政書士 小野馨
こんにちは!

「1番わかる電子定款の教科書」運営者で行政書士の小野馨です。

今回は、不動産業の定款の書き方についてお伝えします。

これから不動産会社を立ち上げる皆さん、準備は順調でしょうか?

定款を作る際、とりあえずネット検索で見つけた雛形をコピペしようと考えているなら、ちょっと待ってください。

実は不動産業界の定款作成は、一般的な会社よりも少し複雑なのです。

注意ポイント

一番怖いのは「事業目的」の書き方。

ここを間違えると、会社設立後の宅建業免許がスムーズに下りない……

なんてトラブルも珍しくありません。将来的に建設業や民泊などもやってみたい!

という夢があるなら尚更、最初の設計が大切ですよ。

スムーズに不動産業を開始するためにも、この記事を最後までお読みください。

  • 宅建免許を確実に取得するための事業目的の正しい書き方
  • 建設業や民泊など将来の事業拡大を見据えた定款戦略
  • 株式会社と合同会社における定款の違いと設立コストの比較
  • 電子定款を使って収入印紙代4万円を節約する具体的な方法

不動産業の定款における事業目的の書き方と戦略

不動産会社の設立において、定款の「事業目的」は単なる形式的な項目ではありません。

ここには、あなたがどのようなビジネスを行うかを明確に宣言する必要があります。

特に行政庁の許認可が必要な不動産業界では、この記載内容が一語一句チェックされるため、非常に戦略的な記述が求められます。

宅建免許取得に必要な事業目的の記載例

宅地建物取引業(宅建業)の免許を取得するためには、定款の事業目的に「宅地建物取引業を営むこと」が読み取れる文言が入っていなければなりません。

これは、免許申請の審査において最も基本的かつ重要なチェックポイントです。

ここで曖昧な表現をしてしまうと、免許申請の窓口で受理されず、最悪の場合、定款の変更登記(=追加費用と時間のロス)を行ってから再度申請に来るよう指導されてしまいます。

具体的には、「宅地建物取引業法」に定義される取引内容を網羅している必要があります。

よくある失敗例として、単に「不動産の管理」や「不動産コンサルティング」とだけ記載してしまうケースがあります。

これらは、宅建業法の免許が必要な「取引」には該当しない、あるいは解釈が分かれる業務とみなされるリスクが高いのです。

【推奨される記載例:最強の網羅セット】

  • 不動産の売買、交換、賃貸及びそれらの仲介、代理、管理
  • 宅地建物取引業法に基づく宅地建物取引業
  • 不動産の運用、保有及び有効活用に関するコンサルティング

最も一般的で安全なのは、「売買、交換、賃貸、仲介、代理、管理」という文言をセットで記載しておくことです。

これらは宅建業の基本となる業務ですので、たとえ当面は賃貸仲介しかやらない予定でも、あるいは買取再販(売買)しか行わない予定でも、すべて記載しておくことを強くおすすめします。

事業の方向転換はよくあることですし、銀行融資の審査においても「この会社は不動産業全般を行う能力がある」という包括的な事業性をアピールできるからです。

【注意!NGになりやすい表現の落とし穴】

「不動産に関する情報の提供」や「住生活に関する相談業務」といった、耳障りの良いソフトな表現だけでは、行政庁から「宅建業を行う意思が不明確」と判断される可能性が高いです。許認可においては「誰が見ても明らかであること」が求められますので、必ず法定の用語である「売買」や「仲介(媒介)」という言葉を含めるようにしましょう。

建設業許可やリノベーションを見据えた記述

最近の不動産業者は、物件の仲介だけでなく、中古物件を買い取ってリノベーションして再販したり、顧客からのリフォーム工事を請け負ったりする「不動産×建築」の複合モデルが増えていますよね。

ここで重要になるのが「建設業法」との兼ね合いです。

ご存知の方も多いかと思いますが、請負金額が500万円未満(建築一式工事の場合は1,500万円未満等)の「軽微な工事」であれば、建設業の許可は不要です。

しかし、事業が順調に拡大して、500万円以上の大規模なリノベーション工事を請け負うことになった場合、必ず建設業許可が必要になります。

その際、定款の事業目的に適切な「業種名」が記載されていないと、許可申請が却下されてしまうのです。

【建設業許可の29業種と定款の整合性】

建設業許可には「建築一式工事」や「内装仕上工事」など29種類の業種があります。定款には、取得したい許可に対応する業種名を記載する必要があります。

(出典:国土交通省『建設業の許可とは(許可の区分・有効期間・許可の要件)』

特に、マンションの一室をフルリノベーションして再販するようなビジネスモデルの場合、「内装仕上工事業」の記載は必須と言えます。「建築工事」という包括的な言葉でも認められるケースは多いですが、将来的に特定の専門工事(塗装工事や大工工事など)の許可を取りたい場合は、それらを具体的に列挙しておくか、「建築工事、大工工事、内装仕上工事、その他建設工事全般の請負…」のように網羅的に書いておくのが賢い戦略です。

また、リフォーム現場から出る廃材を自社で運搬・処分する場合は、「産業廃棄物収集運搬業」の許可も必要になります。これも定款に記載がないと許可が下りない代表例ですので、現場管理を行う予定があるなら、「産業廃棄物の収集、運搬及び処分」の一文を忘れずに入れておきましょう。

民泊や管理業など将来の拡張性を確保する

インバウンド需要の回復に伴い、不動産管理会社が民泊運営に乗り出す事例や、空き家管理ビジネスを始めるケースが急増しています。これらの新規事業は、従来の「不動産業」の枠組みだけではカバーしきれない法規制が存在するため、定款の記述にも工夫が必要です。

例えば、民泊を行う場合、それが「住宅宿泊事業法(民泊新法)」に基づくものなのか、「旅館業法(簡易宿所)」に基づくものなのかによって、適用される法律が異なります。単に「宿泊施設の経営」や「不動産の管理」と書くだけでは、行政の窓口で「具体的に何の法律に基づく事業ですか?」と突っ込まれる可能性があります。

【民泊・宿泊事業向けの記載例】

  • 住宅宿泊事業法に基づく住宅宿泊事業
  • 住宅宿泊事業法に基づく住宅宿泊管理業(他人の物件を管理する場合)
  • 旅館業法に基づく旅館業
  • 簡易宿所の経営

また、民泊の運営代行を行う場合は「住宅宿泊管理業」の登録が必要になることがあります。これは宅建業とは別の登録制度ですので、定款にも明確に分けて記載しておくことで、プロフェッショナルとしての信頼性が高まります。

さらに、最近注目されている「空き家管理」についても、「空き家等の管理、巡回、清掃及び保守点検業務」のように具体的に書いておくと、地域の自治体や所有者に対してサービス内容が伝わりやすくなり、営業ツールとしての定款の価値も上がりますよ。

金融や保険代理店業務も網羅する重要性

不動産仲介の現場では、物件の契約と同時に「火災保険」の加入手続きを行うことが一般的ですよね。この保険代理店手数料は、不動産会社にとって馬鹿にならない重要な収益源(クロスセル)となります。

しかし、いざ損害保険会社と代理店契約を結ぼうとしたときに、定款の事業目的に「損害保険代理業」の記載がないと、コンプライアンス上の理由から契約を断られてしまうケースがほとんどです。同様に、住宅ローンに関連して生命保険(団信代わりの保険など)を提案する場合は、「生命保険の募集に関する業務」の記載も必要です。

不動産クラウドファンディングへの対応

また、近年では「不動産特定共同事業法」に基づく不動産クラウドファンディングや、小口化商品を扱う不動産会社も増えています。これらは金融商品取引法などが絡む高度な分野ですが、将来的に自社でファンドを組成したり、信託受益権を扱ったりする可能性があるなら、以下の文言を入れておくと会社の「格」がグッと上がります。

  • 不動産特定共同事業法に基づく事業
  • 信託受益権の売買、保有及び仲介
  • 第二種金融商品取引業

これらは設立当初には不要かもしれませんが、後から追加する手間を考えれば、最初から記載しておいて損はありません。

雛形利用の注意点と営利性の判断基準

インターネット上には無料の定款雛形がたくさん転がっていますが、これを何も考えずにコピペして使うのは非常にリスクが高いです。なぜなら、会社法上の会社(株式会社や合同会社)は「営利」を目的とする法人であり、その事業目的も営利性(利益を上げること)が前提となっていなければならないからです。

例えば、創業者の想いが強いあまり、事業目的に「地域社会への奉仕」や「ボランティア活動の推進」といった非営利活動をメインに掲げてしまう方がいらっしゃいます。しかし、これを定款のトップに書いてしまうと、法務局での登記は通ったとしても、その後の銀行口座開設時の審査(KYC)で「この会社は事業実態が不明瞭だ」「NPO法人と混同していないか」と疑われ、口座が作れないという事態に陥ることがあります。

【CSR活動の記載方法】

社会貢献活動(CSR)を行うこと自体は素晴らしいですが、定款の事業目的はあくまで「どうやってお金を稼ぐか」を書く場所です。どうしても記載したい場合は、具体的な収益事業(不動産売買など)をすべて列挙した後の最後に、「前各号に附帯関連する一切の事業」のさらに前あたりに、付随的な活動としてさらりと記載するか、あるいは定款には書かずに会社のウェブサイトの理念ページで熱く語るのが正解です。

不動産業の会社設立で失敗しない定款の手続き

最強の事業目的リストができあがったら、次は定款の作成と認証、そして登記手続きです。ここでは、コストを最小限に抑えつつ、法的なミスを防いでスムーズに手続きを進めるための実務的なポイントを深掘りします。

株式会社と合同会社の定款の違いと費用

不動産業界では、取引額が大きく「信用」が何よりも重視されるため、伝統的に「株式会社(KK)」が選ばれることが圧倒的に多いです。しかし、最近はAmazonやGoogleが合同会社であることの認知も広まり、初期費用を抑えられる「合同会社(GK)」を選ぶ不動産起業家も増えています。

定款手続きにおける最大の違いは、公証人による「定款認証」が必要かどうかです。株式会社の場合、作成した定款が法的に正しいものであることを公証人にチェック(認証)してもらう義務があり、これに手数料がかかります。一方、合同会社はこの認証手続きが不要です。

会社形態定款認証の有無認証手数料登録免許税(最低額)設立実費の合計目安
株式会社必要約3万~5万円15万円~約20万~24万円
合同会社不要0円6万円~約6万円~

このように、合同会社を選ぶだけで、設立費用を約14万円以上も節約できる計算になります。不動産業は物件の仕入れや事務所の契約にお金がかかるので、この差額を運転資金に回せるのは大きなメリットです。ただし、「代表取締役」という肩書きが名乗れない(合同会社は「代表社員」)点や、年配の地主さんからの認知度がやや低い点は考慮する必要があります。

電子定款を活用して印紙代を節約する方法

ここが設立コスト削減の最大のポイントです。従来のように紙で定款を作成・印刷すると、そこには「課税文書」として4万円分の収入印紙を貼らなければなりません。しかし、定款をPDFファイルで作成し、電子署名を付与した「電子定款」であれば、印紙税法上の課税文書には該当しないため、この4万円が全額免除(0円)になります。

これについては国税庁も見解を示しており、電子データ等の電磁的記録により作成されたものは印紙税の課税対象外であることが明確になっています。(出典:国税庁『請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の取扱い』※定款についても同様の解釈が適用されます)

【電子定款の作成に必要なツール一覧】

「4万円浮くなら自分でやろう!」と思うかもしれませんが、以下の準備が必要です。

・マイナンバーカード(署名用電子証明書付き)

・ICカードリーダライタ(3,000円前後)

・Adobe Acrobat ProなどのPDF作成・署名ソフト(月額数千円~)

・法務省の申請用総合ソフトのセットアップ

正直なところ、一度きりの会社設立のためにこれらの環境を整えるのは、手間もコストも見合いません。PDFソフトの契約料やカードリーダー代で数千円~1万円近くかかってしまうこともあります。ここは私たち行政書士のような、電子定款対応の専門家に依頼して、手数料を払ってでも印紙代4万円を浮かせたほうが、結果的に安く済み、かつ内容の保証も得られるので賢い選択だと言えます。

資本金の額や公証役場の管轄ルールを解説

定款の認証を受ける公証役場は、実はどこでも良いわけではありません。「本店所在地を管轄する法務局・地方法務局の所属公証人」でなければならないという厳格なルールがあります。例えば、東京都千代田区に本店を置く会社を作るなら、東京都内にある公証役場(どこでも可)に行く必要がありますが、川を渡ってすぐの神奈川県や千葉県の公証役場では認証できません。

資本金の設定戦略:1,000万円の壁

また、定款に記載する「資本金」の額も戦略的に決める必要があります。会社法上は1円でも設立可能ですが、不動産業界で資本金1円は信用面で厳しいのが現実です。さらに、宅建業免許の要件とは別に、税制面での大きな分岐点があります。

資本金を1,000万円未満(999万円以下)に設定すると、設立1期目(条件によっては2期目も)の消費税納税義務が免除されるという特例があります。不動産取引は動く金額が大きいため、消費税の負担も莫大になります。初期の資金繰りを守るためにも、特段の事情がない限りは、資本金は1,000万円未満でスタートするのが鉄則です。

株式譲渡制限の規定や公告方法の選び方と注意点

中小規模の不動産会社を作るなら、定款に必ず入れておくべき条項があります。それが「株式の譲渡制限」に関する規定です。具体的には、「当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を要する」といった文言です。これを入れておくことで、会社にとって好ましくない第三者が勝手に株主になることを防げます。これがないと、創業メンバーが仲違いして株を売却した際などに、見ず知らずの人が経営に口出ししてくるリスクが生じます。

公告方法は「官報」が無難な理由

また、会社は決算などの情報を公に知らせる「公告」を行う義務があります。定款ではその方法を「官報」「日刊新聞」「電子公告(自社ウェブサイト)」から選べます。 「ウェブサイトなら無料だから電子公告がいい!」と思われがちですが、電子公告を選ぶと、毎年の決算公告において「貸借対照表の全文」をウェブ上で5年間開示し続けなければなりません。設立間もない会社にとって、財務内容をネットで全世界に晒すのは抵抗がある場合も多いでしょう。

一方、官報公告を選んでおけば、決算公告の掲載料(約7〜8万円)はかかりますが、実務上、多くの中小企業が決算公告をサボっている(事実上の黙認状態にある)現状を鑑みると、設立当初は「官報」としておくのが最も手間がなく、リスクも管理しやすい選択と言えます。

設立後の定款変更にかかるコストとリスク

「とりあえず急いで設立して、あとで事業目的を追加すればいいや」と軽く考えるのは非常に危険です。設立後に定款の内容(事業目的など)を変更するには、株主総会の決議を経て、法務局で「変更登記」を行う必要があります。

【定款変更にかかるコストの目安】

  • 登録免許税(法務局に支払う税金):3万円
  • 司法書士への報酬相場:2万円~5万円程度
  • 株主総会議事録の作成等の手間

つまり、たった一行「損害保険代理業」という文字を入れ忘れただけで、後から追加しようとすると合計5万円~8万円程度の無駄な出費になってしまうのです。これだけあれば、立派なオフィス家具が買えてしまいますよね。設立時の定款にいかに漏れなく、将来を見据えた記載をしておくかが、無駄なコストを抑える最大のポイントです。

自分で作成するか専門家に依頼するかの判断

最近は、質問に答えるだけで定款が作れる無料の会社設立サービスも充実しており、自分で手続きを行うハードルは下がっています。しかし、不動産業のような「許認可」が絡む業種では、慎重な判断が必要です。

自分で作った定款で法務局の登記は無事に完了したとしても、その後の県庁での宅建免許申請で「この事業目的の書き方では免許が出せません」と言われてしまえば、先ほど説明した定款変更コスト(登録免許税3万円+α)が即座に発生します。無料サービスを使ったつもりが、結局高くついてしまった…という失敗事例は後を絶ちません。

「時間はたっぷりあるし、法務局や県庁と何度やり取りしても苦にならない」という方以外は、最初から不動産業の設立に詳しい行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。電子定款による印紙代削減メリット(-4万円)と、専門家への報酬(数万円〜)を相殺すれば、実質的な負担はほとんどなく、プロによる「免許保証付き」の定款が手に入ります。開業準備で忙しいあなたが、書類作成に時間を奪われるのは機会損失(オポチュニティ・コスト)でしかありません。

不動産業の定款を戦略的に作成するまとめ

不動産業における定款は、単なる会社設立の添付書類ではなく、あなたの会社の将来の拡張性と安全性を担保する重要な設計図です。宅建免許の要件を確実に満たすことはもちろん、建設業や民泊、金融ビジネスへの展開を見据えて網羅的に記述しておくことで、チャンスを逃さずに事業を拡大できます。

この記事で解説したポイントを押さえて、あなたのビジネスモデルに最適な「強い定款」を作ってくださいね。もし不安があれば、いつでも専門家を頼ってください。あなたの不動産ビジネスの成功を心から応援しています!

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