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【行政書士徹底解説】創業期の「健康経営」とは?福利厚生ではなく「企業防衛」と「資金調達」のための生存戦略

【行政書士徹底解説】創業期の「健康経営」とは?福利厚生ではなく「企業防衛」と「資金調達」のための生存戦略

行政書士 小野馨

この記事の監修「会社設立・許認可の実績5000件越えの行政書士」

こんにちは 行政書士の小野馨です!

今回は「健康経営とは何か?経営戦略上のメリットとメンタルヘルスの重要性」についてお伝えします。

会社設立の準備や、定款の作成作業、日々の事業計画の策定にお忙しいことと思います。

「これから会社を作るぞ!」
「世の中に新しい価値を届けるぞ!」

という熱量のある時期、どうしても優先順位が下がってしまいがちなのが、社長ご自身や創業メンバーの「健康管理」や「労働環境の整備」ではないでしょうか。

「今は寝る間も惜しんで働く時期だ」
「健康経営なんて、余裕のある大企業がやる福利厚生でしょ?」
「売上も立っていないのに、そんなことにコストはかけられない」

そのように思っているあなたにこそ、この記事を読んでいただきたいのです。

断言します!

注意ポイント

その認識は、現代の経営環境においては致命的な「経営リスク」になり得ます。

実は、私たち行政書士のような法務の専門家から見ると、創業期こそ「健康経営」が必要不可欠なタイミングなのです。

ポイント

それは単なる「健康作り」や「優しさ」の話ではなく、倒産リスクを防ぐ「企業防衛(リスクマネジメント)」であり、同時に採用や資金調達を有利に進めるための「攻撃的な経営戦略」そのものだからです。

この記事では、運動や食事といった一般的な健康法の話は一切しません。

これから会社を作るあなたが、法的なリスクを回避し、最短距離で強い組織を作るための「実利」について、行政書士の視点で徹底的に解説します。

  • なぜ「電子定款の教科書」である当サイトで、あえて健康経営を語るのか?
  • 創業期の会社が直面する、たった一つのミスで退場となる「法的リスク」とは
  • 採用コスト削減や融資優遇など、数字で見る導入メリットと費用対効果
  • お金をかけずに「定款」と「宣言」だけで始める、賢いスタートアップ術

そもそも「健康経営」とは?行政書士視点での再定義と本質

世間一般で言われる「健康経営」は、従業員に運動を推奨したり、ヘルシーな食事を提供したりといった「活動内容」に目が行きがちです。

しかし、これから会社を作る経営者には、より経営の根幹に関わる視点を持っていただく必要があります。

「福利厚生」ではなく「人的資本への投資」である

行政書士として多くの起業家を見てきた私が定義するなら、創業期の健康経営とは「人的資本(社長と従業員)の価値を最大化し、毀損リスクを最小化する経営手法」です。

設立直後の会社にとって、最大の資産は何でしょうか?

工場もなければ、不動産もない。

ブランド力も信用実績もまだない。あるのは、創業者であるあなたの情熱と、それに共感して集まってくれた数名の創業メンバーという「人(Human Capital)」だけです。

ベンチャー企業において、「人」は代替不可能な資産です。

もし、過重労働でキーマンであるあなたが倒れたら?

創業メンバーがメンタル不調で離脱したら? 大企業なら代わりの人員を補充すれば済みますが、少人数のスタートアップでは、たった一人の離脱が即座に「事業停止(=倒産)」を意味します。

視点の転換が重要「健康経営」=「従業員へのサービス(コスト)」ではありません。
「会社という法人を存続させるための、サーバーメンテナンス費用(必須経費)」と捉え直してください。

サーバーがダウンしたらビジネスが止まるのと同じように、人がダウンすれば会社は終わります。

法律が定める「安全配慮義務」をご存知ですか?

少し堅い話をしますが、会社(使用者)には、法律上明確な義務があります。

それが「安全配慮義務」です。

労働契約法第5条には、次のように記されています。

「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」

これは努力目標ではありません。「義務」です。

もし、会社が長時間労働を放置したり、健康管理を怠った結果、従業員が倒れたりした場合、会社は「債務不履行」として損害賠償責任を負うことになります。

創業間もない会社で数千万円単位の賠償請求が発生すれば、それは即ち会社の死を意味します。

健康経営に取り組むということは、この「安全配慮義務」を確実に履行し、将来的な訴訟リスクや損害賠償リスクを未然に防ぐという、極めて法務的な意味合いも持っているのです。

(出典:厚生労働省『労働契約法のあらまし』

なぜ「会社設立時」がベストタイミングなのか?

「余裕ができたらやろう」「社員が増えてから考えよう」

そう思っていると、その「余裕」は永遠に来ないかもしれません。

実は、会社を作るこのタイミングこそが、最もコストをかけずに健康経営を導入できる最大のチャンスなのです。

「ブラック企業」のレッテルは一度貼られたら剥がれない

現代はSNS社会です。悪い噂は一瞬で拡散します。

創業期だからといって、「うちはベンチャーだから24時間働くのが当たり前」という昭和的な価値観を押し付けていると、すぐに口コミサイトやSNSで「ブラック企業」と書かれてしまいます。

一度ついた「ブラック企業」のイメージを払拭するには、膨大な時間と広告宣伝費がかかります。しかし、設立当初から「うちは健康経営を掲げているホワイトなスタートアップだ」というブランディングを行えば、そもそも悪い評判が立つリスクを最小限に抑えられます。

建物も基礎工事が重要なように、会社も最初の設計図(企業文化)が肝心なのです。

会社の「憲法」に最初から刻み込むことの重み

会社を設立する際には、必ず「定款(ていかん)」を作成しますよね。これは会社の憲法です。

後から社風を変えるのは大変ですが、最初から「従業員の健康保持増進」を会社の目的として定款に組み込んでおけば、それが当たり前の企業文化として根付きます。

「定款に書く」というのは、単なるスローガンとは次元が違います。

公証人の認証を受け、法務局に登記され、誰でも閲覧できる公的な文書として残るのです。

この「不可逆性」こそが、経営者の覚悟を示す最強の証明となります。

創業社長が健康経営に取り組むべき3つの「実利」と経済的メリット

「理念やリスク管理はわかったけど、実際の儲け(利益)に繋がるの?」

経営者なら当然の疑問です。

もちろん、綺麗事だけではありません。ビジネスとしての具体的な「勝ち筋」が3つあります。

ここでは数字を交えて解説しましょう。

1. 採用コストの劇的な削減と「選ばれる」差別化戦略

採用費用の現実

中小企業が人材紹介会社(エージェント)を使って一人採用する場合、一般的に年収の30〜35%の手数料がかかります。

年収400万円の人を採用するだけで、約120万円〜140万円のコストがかかる計算です。

しかも、創業期の無名企業には、そもそも応募すら来ないのが現実です。

求人媒体に数十万円払って掲載しても、応募ゼロというケースは珍しくありません。

「健康経営」という最強の求人キラーコンテンツ

今、求職者(特に20代〜30代の若手層)が企業選びで最も重視する項目をご存知でしょうか?

各種調査によると、給与額以上に「職場の雰囲気」「働きやすさ」「ブラック企業ではないこと(心理的安全性)」が上位を占めています。

ここで健康経営が武器になります。

「創業期ですが、当社は健康経営優良法人の認定取得を目指しており、定款にも健康経営を明記しています」

この一言があるだけで、求職者の不安は払拭されます。

「社員を使い捨てにする会社ではない」という強力な証明になるからです。

結果として、高額なエージェントを使わなくても、自社サイトや無料の求人媒体(ハローワークやSNS)経由で、「理念に共感した人材」を採用できる確率が高まります。

120万円の採用コストがゼロになれば、それだけで利益が出たのと同じことですよね。

(出典:厚生労働省『令和5年若年者雇用実態調査の概況』

2. 金融機関・投資家からの「格付け」向上と資金調達

銀行が見ているのは決算書だけではない

創業期は実績がないため、銀行融資の審査は厳しくなりがちです。

しかし、銀行員は決算書という「過去の数字」だけでなく、「将来性」や「経営者の資質」を必死に見極めようとしています。

この時、健康経営への取り組みは大きなプラス材料になります。

なぜなら、「従業員の健康管理を経営課題として捉え、仕組み化している」という事実は、銀行員に対して以下のようなポジティブなシグナルを送るからです。

  • 「この社長は、行き当たりばったりではなく、長期的な視点で経営を考えている」
  • 「労働トラブルによる損害賠償リスクが低そうだ(コンプライアンス意識が高い)」
  • 「組織基盤がしっかりしており、事業継続性が高い」

実利としての金利優遇

精神論だけではありません。実際に「実利」も発生しています。

日本政策投資銀行(DBJ)の「健康経営格付融資」をはじめ、多くの地方銀行や信用金庫が、健康経営優良法人の認定企業に対して「事業資金融資の金利優遇」「保証料の減免」といった優遇商品を提供しています。

例えば、借入金3,000万円で金利が0.1%優遇されるだけでも、返済総額には大きな差が出ます。

健康経営は、資金調達コスト(Cost of Capital)を下げるための、立派な財務戦略でもあるのです。

(出典:経済産業省『健康経営を評価する金融機関等の取組』

3. 助成金活用の土台ができる(コンプライアンスの副産物)

これは私たち行政書士のような士業ならではの視点ですが、国は「働き方改革」や「健康経営」を推進する企業に、様々な助成金を用意しています。

しかし、多くの創業社長が「助成金をもらいたい」と相談に来られますが、9割以上の方が門前払いになります。なぜだと思いますか?

それは、「労務管理の基礎ができていないから」です。

助成金の受給には、就業規則の整備、法定三帳簿(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿)の完備、残業代の適正な支払いなど、法律通りの労務管理が行われていることが絶対条件です。

健康経営に取り組むプロセスは、まさにこの「労務管理の整備」そのものです。

「健康経営優良法人」の認定要件には、定期健診の実施やストレスチェックの実施など、法令遵守項目が含まれています。
つまり、健康経営を目指して社内体制を整えることが、結果として「キャリアアップ助成金」や「両立支援等助成金」などが受給できる「ちゃんとした会社」への最短ルートになるのです。

具体的に何から始めればいいの?(コストゼロからのスタート)

「メリットはわかった。でも、ジムと契約したり、高いコンサルタントを雇うお金なんてないよ!」
ご安心ください。創業期の健康経営に、お金をかける必要はありません。

大企業のように豪華な社食やリラクゼーションルームを作る必要はないのです。必要なのは「トップの意思表示(宣言)」と「定款(ルール)」だけです。

ステップ1:協会けんぽ等の「健康宣言」を行う

まずやるべきは、加入している健康保険組合(多くの中小企業は全国健康保険協会=協会けんぽ)に対して、「わが社は健康経営に取り組みます」という宣言書を提出することです。

これにかかる費用は0円です。FAX一枚、郵送一通で完了します。

これだけで、都道府県ごとの「健康宣言チャレンジ事業所」として認定され、認定証(賞状)がもらえます。

これをオフィスの入り口に飾ったり、自社サイトに「当社は健康宣言企業です」とロゴマークを掲載したりすることができます。

これだけのことで、対外的な信用度はワンランクアップします。

ステップ2:会社の憲法「定款」に明記する

これが今回の記事で最もお伝えしたい、強力な一手です。

多くの会社は、健康経営を「社内ルール」や「社長の口癖」レベルで終わらせていますが、あなたはこれから会社を作る(あるいは作ったばかり)のですから、会社の憲法である「定款(ていかん)」の事業目的に入れてしまいましょう。

定款の「目的」欄に、「従業員の健康保持増進に関する事業」といった文言を追加します。

これにより、健康経営は一時のキャンペーンではなく、会社が永続的に追求する「公的なミッション」になります。

登記簿謄本(履歴事項全部証明書)にも記載されるため、誰が見ても(銀行も取引先も競合他社も)「この会社は本気だ」と分かります。

具体的な書き方は?「定款のどこに、どんな文言を入れればいいの?」「既存の会社でも変更できるの?」「手続きにかかる費用は?」といった具体的な疑問については、以下の記事で行政書士が作成した「そのまま使える記載例」と合わせて詳しく解説しています。電子定款作成のついでに、ぜひ実装してください。

>>【コピペOK】健康経営は定款から!目的変更の記載例とメリット

ステップ3:PDCAを回すための「担当者」を決める

社長一人で抱え込まないことが重要です。創業メンバーの中に、総務や人事の担当がいれば、その人を「健康づくり担当者」に任命しましょう。

大掛かりなことは必要ありません。

「定期健診の予約を一括で行う」「長時間労働が続いていないかタイムカードをチェックする」といった、当たり前のことを確実に実行する担当者を決めるだけで、組織の実効性は格段に上がります。

まとめ:健康経営は「守り」であり「攻め」である

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

ここまで解説してきた通り、創業期の健康経営とは、従業員を甘やかすことでも、無駄なコストをかけることでもありません。

  • 社長やキーマンの離脱という「一発退場」のリスクを防ぐ(鉄壁の守り)
  • 採用力と信用力を高め、資金調達を有利にする(果敢な攻め)
  • これらを、定款作成という設立時のプロセスに組み込む(効率的な実装)

これこそが、行政書士が提案する「スタートアップのための健康経営」の真髄です。

具体的なメンタルヘルス対策の手法や、ストレスチェック後のケア、医学的な健康増進のアプローチについては、専門の医療機関や、心理学的なアプローチを専門とするコンサルティング機関(例えばハートマス健康経営アカデミーなど)の領域となります。

しかし、その前段階にある「法的な枠組み作り」「経営リスクとしてのガバナンス構築」は、まさに今のあなたの仕事であり、私たち行政書士がサポートできる領域です。

定款という「会社の設計図」に健康経営のDNAを組み込み、10年、20年と続く強い会社の土台を、今この瞬間から築いていってください。

「電子定款の教科書」は、あなたの会社の健やかな発展を、法務の面から全力で応援しています。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的な正確性を保証するものではありません。具体的な法人設立手続き、定款変更、助成金の申請等については、管轄の法務局、労働局、または行政書士・司法書士・社会保険労務士等の専門家にご相談の上、自己責任で行ってください。

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