会社設立・法人化

格安のバーチャルオフィスで登記するデメリット7選!法人口座と許認可の罠

行政書士 小野馨
こんにちは。行政書士の小野馨です。

今回は、「格安のバーチャルオフィスで登記するデメリット7選」というお話しです。

法人口座や許認可をするなら要注意です!

最後まで聞いてくださいね。

「会社を作るなら、まずは格安のバーチャルオフィスで!」と考えているあなた。

その選択、ちょっと待ってください。

注意ポイント

確かに初期費用は抑えられますが、安易に契約してしまうと、後から法人口座の審査に落ちたり、許認可が取れずに事業がスタートできなかったりと、思わぬ落とし穴にハマることがあるんです。

「違法じゃないの?」「自宅住所がバレる心配は?」「郵便物はちゃんと届く?」といった不安や疑問も尽きないですよね。

ここでは、専門家の視点からバーチャルオフィスのリアルなデメリットと、それを回避するための具体的な対策を包み隠さずお話しします。

この記事のポイント

  • 格安オフィス特有の法人口座開設リスクと審査の裏側
  • 許認可が必要な業種で陥りがちなオフィス要件の罠
  • 郵便物トラブルや突然の閉鎖リスクへの具体的な対抗策
  • 銀行や取引先からの信用を落とさない定款作成のコツ

格安のバーチャルオフィスで登記するデメリット

バーチャルオフィスデメリット

まずは、バーチャルオフィスを利用する上で避けては通れない「構造的なデメリット」について解説します。

これらを知らずに契約してしまうと、最悪の場合、会社としての機能を果たせなくなることもあるので要注意ですよ。

法人口座開設が難しいという最大の欠点

これがバーチャルオフィス利用者にとっての最大の壁ですね。

正直に言いますが、メガバンク(都市銀行)や一部の地方銀行では、本店所在地がバーチャルオフィスというだけで、口座開設の審査土俵にすら上げてもらえないことが多々あります。

「起業を応援します!」という銀行の看板とは裏腹に、現場の審査は驚くほどシビアなんです。

なぜ銀行はバーチャルオフィスを嫌うのか?

これには明確な理由があります。銀行は「犯罪収益移転防止法(犯収法)」という法律に基づいて、厳格な本人確認(KYC:Know Your Customer)と取引時確認を行う法的義務を負っているからです。

物理的な実体がないバーチャルオフィスは、過去に「振り込め詐欺」や「投資詐欺」などの犯罪グループが、足がつかないように拠点を転々とする際(いわゆる「トバシ」の拠点)に悪用された歴史があります。

そのため、銀行のリスク管理部門は「バーチャルオフィス=実体不明=マネーロンダリングのリスクが高い」というフィルターをかけざるを得ないのです。

(出典:金融庁『マネー・ローンダリング・テロ資金供与対策に関するガイドライン』)

現地確認で「不在」は致命的

銀行によっては、審査の一環として予告なしに登記住所へ「現地確認(突撃訪問)」を行うことがあります。

このとき、以下のような状況だと、ほぼ間違いなく審査落ちします。

ここが審査の落とし穴

  • ビルのエントランスやポストに社名の表示(表札)が一切ない。
  • 受付スタッフが常駐しておらず、呼び出しに応答がない。
  • 受付スタッフはいるが、「御社のこと(事業内容や担当者)を知らない」と答えてしまう。
  • そもそもシェアオフィスとしての体裁もなく、単なるマンションの一室で人の気配がない。

「実体がない」と判断されれば、どんなに素晴らしい事業計画があっても口座は作れません。

でも、諦める必要はありません。

きちんとした事業計画書や、取引の実態を示す資料(発注書や契約書)、そして自社のホームページを用意し、「なぜバーチャルオフィスなのか(コスト削減、リモートワーク中心など)」を論理的に説明できれば、審査を突破することは十分に可能です。

詳しくは、以下の記事で法人口座審査の突破口について解説しているので、あわせて読んでみてください。

法人口座の審査に落ちる理由と対策!定款の事業目的が合否を分ける?

許認可が取れない業種とオフィス要件の罠

ここ、意外と見落としがちなんですが、あなたのビジネスが「許認可」を必要とする場合、バーチャルオフィスでは絶対に開業できないケースがあります。

登記までは完了しても、肝心の営業許可が下りず、結局すぐにオフィスを借り直して本店移転登記(コスト増!)…

なんていう悲劇は絶対に避けたいですよね。

「独立性」と「占有スペース」の壁

行政庁が許認可を出す際、多くの業種で求められるのが「事業所の独立性」です。

つまり、他の会社や個人とは明確に区分された、あなた専用のスペースがあるかどうかが問われます。

業種(許認可名)バーチャルオフィスの可否・注意点
古物商許可

(リサイクル・転売)

原則不可の場合が多い

営業所としての実体が必要。「使用承諾書」があっても、独立した保管場所がないと警察署で受理されないケースが多発しています。

バーチャルオフィスではなく、レンタルオフィスは可能な場合があります。

宅地建物取引業

(不動産業)

ほぼ不可

専用の入口、固定電話、接客スペースが必須。他の事業者と空間が混ざっているバーチャルオフィスは要件を満たしません。

有料職業紹介事業

(人材紹介)

非常に厳しい

面談スペースの確保と、個人情報保護のための鍵付きキャビネット等を置く占有スペースが求められます。

建設業許可不可

営業所の実態確認が厳格で、看板の掲示や事務機器の設置状況を写真で提出する必要があります。

使用承諾書の「使用目的」に注意

たとえ許認可の要件が緩い業種であっても、バーチャルオフィス側が発行する「使用承諾書」の記載内容によっては申請が通らないことがあります。

参考

例えば、契約書の使用目的が「連絡先利用に限る」となっている場合、行政窓口で「これは営業所として使えませんよね?」と指摘されてしまいます。

事前に必ず確認を!

ご自身の事業に必要な許認可の要件を、管轄の役所や警察署に事前に電話で確認しましょう。

「バーチャルオフィスを検討しているのですが、御庁の管轄では申請可能ですか?」と聞けば、担当者がローカルルールを含めて教えてくれます。

この事前確認が命綱ですよ。

(出典:警視庁『古物商許可申請の手続き』)

ネット銀行の審査落ちリスクと対策の実情

「メガバンクは無理でも、ネット銀行なら楽勝でしょ?」と思っていませんか?

実はこれ、大きな間違いです。

かつては比較的緩やかだった楽天銀行や住信SBIネット銀行、GMOあおぞらネット銀行などのネット専業銀行も、ここ数年で犯罪対策のために審査をかなり厳格化しています。

「ネット銀行なら誰でも作れる」という神話はすでに崩壊していると思ってください。

AI審査とスコアリングの冷徹さ

ネット銀行の審査は、まずAIによる自動スコアリングが行われることが多いです。

ここで「ハイリスク」と判定されると、人間の担当者が見る前に自動的に否決メールが送られてきます。では、何がリスクとみなされるのでしょうか。

  • 資本金が極端に少ない:「1円」や「1万円」での設立は、会社法上は可能ですが、銀行からは「事業を行う体力がない」「いつでも捨てられる会社」と見なされ、大幅な減点対象になります。
  • 事業目的が不明瞭:定款の目的に「コンサルティング」「投資業務」「マーケティング」など、抽象的な言葉が並んでいると、実態が見えないため警戒されます。
  • 固定電話がない:090や080の携帯番号のみだと、信用スコアは低くなります。「03」や「06」、せめて「050」のIP電話でも良いので、固定回線を用意することが「実在性」のアピールに繋がります。

ホームページは「ある」だけではダメ

審査対策として「ホームページを作る」のは定石ですが、トップページに「Coming Soon」と書いてあるだけのサイトや、無料ブログのような簡易的なものでは逆効果です。

会社概要、詳細な事業内容、問い合わせフォーム、プライバシーポリシー、そして代表者のプロフィール。これらが揃って初めて、「ビジネスを行う準備ができている」と判断されます。

ネット銀行だからこそ、デジタル上の「見え方」には徹底的にこだわってください。

住所貸しは違法か?法的リスクの真実

結論から言うと、バーチャルオフィスの住所を使って登記すること自体は「違法ではありません」。会社法においても、本店所在地に物理的な実体や常駐するスタッフが必要だとは明記されていないからです。

現代において、リモートワーク中心の企業が物理オフィスを持たないのは合理的な経営判断であり、法もそれを否定してはいません。

商業登記法上の「具体的特定」の問題

ただし、商業登記法上、本店の所在場所は「具体的に特定できるもの」でなければならないとされています。

ここで問題になるのが、一部の格安バーチャルオフィスの運用実態です。

例えば、「東京都港区〇〇1-2-3 △△ビル5階」という同一の住所・同一の部屋番号に、500社以上の会社が登記されていたらどうでしょう?

郵便配達員も、訪問者も、どの会社がどこにあるのか物理的に判別できませんよね。

法務局によっては、部屋番号の後に「私書箱番号」や「管理番号」を付記しないと登記を受理しないケースもありますが、これを省略して登記してしまうと、実質的に「場所を特定できない」状態となり、将来的に法的なツッコミを受けるリスクがゼロではありません。

「みなし解散」のリスク

もっと怖いのが「みなし解散」です。

登記した住所で郵便物が受け取れず、「宛所不明」で法務局に戻るような状態が長期間続くと、法務局は「この会社はもう営業していない(休眠会社)」と判断します。

最後の登記から12年が経過し、法務局からの通知も届かない場合、登記官の職権で強制的に会社を解散させる手続き(みなし解散)が取られます。

「バーチャルオフィスの更新料を払い忘れて解約になったが、登記変更を忘れていた」というパターンで、気づいたら会社が消滅していた…

なんてことにならないよう、住所の管理は厳重に行う必要があります。

(出典:法務省『休眠会社・休眠一般法人の整理作業について』)

自宅住所がバレる可能性と特定商取引法

「自宅の住所を公開したくないからバーチャルオフィスを使う」という方は非常に多いです。

特に女性起業家や、ストーカー被害のリスクを懸念する方にとって、プライバシーの保護は切実な問題ですよね。

しかし、ECサイトやWEBサービスを運営する場合、「特定商取引法(特商法)」という法律の壁が立ちはだかります。

「特定商取引法に基づく表記」のジレンマ

特商法では、消費者を守るために、販売業者の「住所」と「電話番号」をサイト上に表示することを義務付けています。

ここでバーチャルオフィスの住所を使うことは、消費者庁のガイドラインでも認められています。

しかし、ここには重要な条件がつきます。

「消費者から請求があった場合には、遅滞なく実際の住所(自宅など)や電話番号を開示できる措置を講じていること」です。

つまりどういうこと?

普段はバーチャルオフィスの住所を表示しておいてOKですが、トラブルが発生した際や、お客様から「実際の住所を教えてください」と言われた場合は、隠さずに自宅住所を教えなければならない、ということです。

完全に自宅住所を秘匿できるわけではない、という点は理解しておく必要があります。

とはいえ、不特定多数が閲覧するWEBサイト上に自宅住所を晒すリスクに比べれば、開示請求があった相手だけに伝える形になるため、安全性は格段に高まります。

プラットフォーム(BASEやSTORESなど)によっては、プラットフォーム側の住所を記載することで個人の住所を非表示にできる機能も増えてきているので、これらを活用するのも一つの手ですね。

(出典:消費者庁『特定商取引法ガイド 利用可能な住所・電話番号の考え方

犯罪に使われた汚れた住所のリスク

これが、バーチャルオフィス選びで最も恐ろしく、かつ見えにくいデメリットかもしれません。

あなたが契約しようとしているその住所、過去に詐欺グループや悪質業者が使っていた、いわゆる「汚れた住所」ではありませんか?

ブラックリストによる「巻き添え」被害

銀行やクレジットカード会社、信用調査会社は、過去に口座凍結されたり、犯罪利用されたりした住所のデータベース(ブラックリスト)を共有しています。

もし運悪く、過去に犯罪組織が利用していたバーチャルオフィスの住所で登記してしまうと、あなた自身は潔白で健全なビジネスをしていても、「住所がブラック」という理由だけで、法人口座の開設を断られたり、法人カードの審査に落ちたりします。

これを「巻き添え」と言わずして何と言うでしょうか。

契約前に自分でできる防衛策

運営会社は「ウチの住所はクリーンです」と言うに決まっています。

だからこそ、自分の身は自分で守るしかありません。

契約前の必須チェックリスト

  • Google検索:「(検討中の住所) 詐欺」「(検討中の住所) 被害」「(検討中の住所) 迷惑メール」などのキーワードで検索してみてください。ネガティブな口コミや被害報告サイトがヒットしたら、その住所は危険信号です。
  • 国税庁法人番号公表サイト:その住所に現在どれくらいの数の法人が登記されているかを確認しましょう。異常な数(数千社など)が詰め込まれている場合、管理がずさんである可能性が高いです。

運営会社の倒産や突然の閉鎖

「月額500円!」のような激安バーチャルオフィスは魅力的ですが、その安さの裏には、運営会社の経営基盤の脆弱さが隠れていることがあります。

もし運営会社が資金繰りに詰まって倒産したり、入居しているビルのオーナーとのトラブルで撤退(サービス終了)することになったら、どうなると思いますか?

強制移転のコストと手間は甚大

ある日突然、「来月でサービスを終了します。

退去してください」という通知が来たら、あなたは強制的に「本店移転」を余儀なくされます。

これにかかるコストと労力は計り知れません。

発生するコスト・手間内容・金額の目安
登録免許税法務局に支払う税金。

管轄内移転なら3万円、管轄外への移転なら6万円。

司法書士報酬専門家に依頼する場合、3万円〜5万円程度。
各種変更手続き税務署、都道府県税事務所、年金事務所、労働基準監督署、銀行、カード会社への住所変更届出。
印刷物等の修正名刺、封筒、パンフレット、ホームページの修正費用。

これだけのコストがかかるなら、最初から少し月額が高くても、上場企業が運営しているオフィスや、自社ビルを所有している運営会社を選んだ方が、長期的には安上がりで安心だと言えます。

「安物買いの銭失い」にならないよう、運営会社の実績や信頼性はしっかりチェックしましょう。

バーチャルオフィス登記のデメリットを克服する戦略

デメリットばかり並べてしまいましたが、脅すつもりはありません。

ここからは、これらのデメリットを賢く回避し、バーチャルオフィスのメリットを最大限に活かすための「攻めの戦略」をお伝えします。

郵便物が届かないトラブルの回避策

バーチャルオフィスを利用する経営者が最も頭を抱えるのが、「郵便物」に関するトラブルです。

特に、会社設立直後は重要な書類が頻繁に届きますが、その多くが「転送不要」扱いや「書留」だったりするため、バーチャルオフィスの対応力次第では、受け取れずに返送されてしまうリスクがあります。

銀行キャッシュカードと「転送不要」の壁

法人口座を開設すると、キャッシュカードが送られてきますが、これは原則として「簡易書留(転送不要)」で発送されます。

これは、「登記された住所に会社が実在するか」を確認する意味合いも兼ねているため、郵便局の転送サービスを利用していても転送されず、差出人(銀行)に戻ってしまいます。

この際、バーチャルオフィスのスタッフが代理受領してくれれば良いのですが、格安プランや無人オフィスの場合、「書留の受取不可」となっているケースがあります。

受取拒否で銀行に戻った場合、最悪、口座開設の取り消しや利用停止措置が取られることもあります。

確認項目チェックポイント
書留・簡易書留の受取スタッフが常駐し、代理でサインして受け取ってくれるか?

(「不在票対応のみ」のオフィスは要注意)

本人限定受取郵便これは原則、受取人本人しか受け取れません。通知書だけ受け取り、本人が郵便局に取りに行くフローが可能か確認しましょう。
転送頻度とスピード「週1回まとめて転送」では遅すぎる場合があります。「即時転送オプション」があるか、届いた時点でメールやLINEで通知してくれるかを確認しましょう。

契約前に、必ず「転送不要郵便の取り扱い」について運営会社に確認してください。

ここがしっかりしている会社を選ぶだけで、運営上のストレスとトラブルの9割は防げます。

社会保険加入における住所の取り扱い

「バーチャルオフィスだと社会保険(健康保険・厚生年金)に入れない」という噂を聞いたことがあるかもしれませんが、これは半分正解で半分間違いです。

法人は原則として社会保険への加入義務がありますが、年金事務所も実態のない会社を加入させるわけにはいかないため、審査を行います。

賃貸借契約書の壁をどう突破するか

社会保険の新規適用届を出す際、年金事務所から「賃貸借契約書のコピー」の提出を求められることが一般的です。

しかし、バーチャルオフィスの契約は「賃貸借契約」ではなく、「利用規約に基づく施設利用契約」や「会員契約」という形式になることがほとんどです。

年金事務所の担当者によっては、「これでは場所を借りていることにならない(=事業所として認められない)」と判断されるリスクがあります。

こうした場合の突破口として有効なのが、以下の補足資料です。

  • 公共料金の領収書:代表者の自宅で作業している場合、自宅の公共料金領収書を添付し、「ここが実質的な執務スペースである」と説明する。
  • 事業の実態証明:請求書や発注書、営業活動の記録などを持参し、ペーパーカンパニーではないことを強く主張する。
  • 運営会社発行の証明書:バーチャルオフィスによっては、「社会保険加入用の所在証明書」を発行してくれるところもあります。

管轄の年金事務所によって判断基準(ローカルルール)が微妙に異なるため、書類を提出する前に一度窓口へ相談に行き、「バーチャルオフィスなのだが、何を用意すればスムーズか」を確認するのが最も確実な近道です。

(出典:日本年金機構『新規適用の手続き』https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150518.html

納税地変更の手続きと賃貸契約の注意点

法人税の納税地は、原則として「定款に記載された本店所在地」になります。つまり、バーチャルオフィスで登記した場合、そのエリアを管轄する税務署があなたの会社の管轄になります。

「本店」と「実務場所」が違う場合の税務署対応

注意したいのは、実際の作業場所が自宅(例:埼玉県)で、本店が都心のバーチャルオフィス(例:東京都港区)の場合です。

税務署からの重要なお知らせや納付書は、全てバーチャルオフィスに届きます。

転送のタイムラグで書類の確認が遅れ、納税期限や申告期限を過ぎてしまうと、延滞税などのペナルティが発生しかねません。

「納税地の異動」という選択肢

実は、「納税地の異動届出書」を提出することで、登記上の本店所在地ではなく、実質的に活動している場所(自宅など)を納税地として指定することが可能です。

これにより、税務署からの郵便物は直接自宅に届くようになり、管理が楽になります。

ただし、これをすると税務署からの郵便物に自宅住所が記載されることになるため、バーチャルオフィスの「住所を隠せる」というメリットとトレードオフになる点は考慮が必要です。

融資審査への影響と創業融資の高い壁

起業時に資金調達を考えている場合、バーチャルオフィスは正直言って不利になります。

特に、日本政策金融公庫などの創業融資を受ける際、融資担当者は必ずと言っていいほど「現地確認」を行います。

なぜ融資が降りにくいのか?

銀行がお金を貸す際、最も恐れるのは「貸した相手が夜逃げすること」です。

物理的なオフィスや店舗がないバーチャルオフィス企業は、パソコン一台あればどこへでも行けるため、銀行から見れば「逃げやすい状態」に見えてしまいます。

また、現地確認に行った際に、パソコンもデスクもなく、事業活動の痕跡が全くない状態だと、「事業実態なし」と判断され、審査のテーブルから落とされてしまいます。

バーチャルオフィスでも融資を通すコツ

それでも融資を受けているバーチャルオフィス企業は存在します。

彼らがやっている対策は以下の通りです。

融資審査を突破するポイント

  • 代替場所の提示:「普段は自宅兼事務所で作業しており、設備はそこにあります」と正直に申告し、自宅への訪問調査を受け入れる。
  • コワーキングスペースの活用:バーチャルオフィスだけでなく、実作業ができるコワーキングスペースの契約書を提示する。
  • 圧倒的な事業計画書:「オフィスが不要なビジネスモデルであること」を、高い利益率や具体的な受注見込みとともに論理的に説明し、担当者を納得させる。

(出典:日本政策金融公庫『創業計画書Q&A』https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html

資本金額の設定と社会的信用の関係性

バーチャルオフィスという「物理的な実体の見えにくさ」をカバーするためには、他の要素で信用を補強するのが賢い戦略です。

その際、最も分かりやすい指標となるのが「資本金」です。

「資本金1円」のリスク

会社法では資本金1円から会社を作れますが、バーチャルオフィス×資本金1円の組み合わせは、銀行や取引先から見れば「いつでも捨てられる会社」「覚悟が決まっていない会社」に見えてしまいます。

特に法人口座開設の審査において、資本金額は重要なスコアリング要素です。

資本金が極端に低いと、「事業を継続する資金力がない」とみなされ、門前払いされる確率が高まります。

推奨される資本金のライン

可能であれば、資本金は100万円以上、理想を言えば300万円程度に設定することをお勧めします。

消費税の免税事業者期間を最大限活用するために「1000万円未満」に抑えるのは定石ですが、あまりに低すぎると信用の毀損につながります。

ある程度のまとまった資本金を用意することで、「事業に対する本気度」を数字で示すことができます。

これが、見えにくいバーチャルオフィス企業の信用を底上げする、確実な投資となるのです。

まとめ:定款の目的と書き方で信頼獲得

バーチャルオフィスでの登記には、法人口座の開設難易度や許認可の壁といった明確なデメリットがあります。

しかし、初期コストを劇的に抑え、スピーディーに事業を開始できるというメリットは、現代の起業家にとって何物にも代えがたい武器でもあります。

重要なのは、これらのデメリットを「知らずに始める」のではなく、「知った上で対策を講じておく」ことです。

  • 銀行が納得するような、具体的で専門性のある「事業目的」を定款に記載する。
  • 100万円以上の資本金を設定し、本気度を示す。
  • 契約前に、住所の安全性や郵便対応を徹底的にチェックする。

特に定款の「事業目的」は、あなたの会社の履歴書のようなものです。

ここを「何でも屋」のように総花的に書くのではなく、専門性を持たせて具体的に書くことで、銀行や取引先からの信頼度はグッと上がります。

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