電子定款・定款認証

電子定款のメリットとデメリット!4万円節約の落とし穴を解説

電子定款のメリット・デメリット

行政書士 小野馨

こんにちは

行政書士の小野馨です。

今回は、「電子定款のメリットとデメリットや紙の定款との違い」についてお話します。

会社を作ろうと決意して、まず最初に「電子定款」という言葉にたどり着いたのではないでしょうか。

紙で作ると4万円の印紙代がかかるけれど、電子データなら0円になる。創業期の4万円は本当に大きいですよね。

ただ、そこで「自分でやるには機材が必要」「設定が難しい」といった情報も目に入り、結局どちらがお得なのか迷われている方も多いはずです。

実は、費用の面だけでなく、手続きにかかる時間やリスクについても正しく理解しておかないと、逆に損をしてしまうことさえあるのです。

このページでは、私の実務経験をもとに、電子定款のリアルな実情を包み隠さずお話しします。

この記事のポイント

  • 電子定款導入による具体的なコスト削減効果と見落としがちな出費
  • 自分で作成する場合に直面する技術的なハードルとリスク
  • クラウドサービスや専門家を活用した際の費用対効果の比較
  • 2025年の最新事情を踏まえたあなたに最適な定款作成方法

電子定款のメリットやデメリットを徹底比較

電子定款は、単に「紙がデータになる」だけではありません。

それに伴い、法律上の扱いから準備すべき環境までがガラリと変わります。

ここでは、多くの創業者が気になっているコストや手間の面から、その実態を深掘りしていきます。

表面的なメリットだけでなく、裏側にある手間やリスクも知っておくことが、賢い起業への第一歩ですよ。

印紙代4万円が不要になるコスト面の利点

電子定款を選ぶ最大の理由は、やはり収入印紙代4万円の節約にあります。

これが電子定款普及の原動力と言っても過言ではありません。

「たかが4万円、されど4万円」ですよね。創業時のキャッシュフローにおいて、この金額は決して無視できません。

では、なぜ電子定款だと印紙代がかからないのでしょうか?

少し専門的な話をすると、これは「印紙税法」という法律の解釈によるものです。

印紙税法では、紙の「文書」に対して課税すると定められています。

定款は「第6号文書」という課税対象にあたり、紙で原本を作ると4万円の収入印紙を貼らなければなりません。

しかし、電子定款はPDFなどの「電磁的記録」です。情報は同じでも、物理的な「紙の文書」ではないため、印紙税法の課税対象外(非課税)となるのです。

これは法律の抜け穴のように感じるかもしれませんが、国税庁や法務省も認めている正式な運用ルールなんですよ。

ここがポイント

資本金の額や会社の規模に関わらず、株式会社でも合同会社でも、電子定款であれば一律で4万円が浮きます。

例えば資本金が100万円の小さな会社でも、1億円の大きな会社でも、削減効果は同じ4万円です。

この「4万円削減」は絶対的なメリットですが、後述するように、これを実現するために「別のコスト」がかかってしまっては本末転倒です。

まずは「電子にすれば無条件で4万円浮く権利が得られる」と理解しておいてください。

(出典:国税庁『請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について』

公証人の認証手数料は別途必要となる点

ここでよく誤解されるのが、「電子定款ならすべて無料になる」という点ですが、これは間違いです。

特に株式会社を設立する場合、定款の形態が紙であれ電子であれ、公証人による「認証」という手続きが必須となります。

「認証」とは、作成した定款が正当な手続きで作られたものであることを、公の機関である公証人に証明してもらう手続きのことです。

この認証手数料は、資本金の額に応じて約3万円〜5万円かかります。

これは公証人手数料令という政令で決まっているもので、電子定款にしたからといって免除されるものではありません。

資本金の額認証手数料
100万円未満30,000円(条件により15,000円)
100万円以上300万円未満40,000円
300万円以上50,000円

つまり、株式会社を作る場合、「印紙代4万円」は浮きますが、「認証手数料」は必ず財布から出ていくお金だと思ってください。

一方で、合同会社(LLC)の場合は、そもそも公証人の認証という手続き自体が不要です。

そのため、合同会社で電子定款を採用すれば、印紙代0円、認証手数料0円となり、定款にかかる費用を完全にゼロにすることができます。

また、紙の定款の場合、認証済み定款の謄本(控え)を受け取る際に、1枚あたり250円程度の紙代がかかりますが、電子定款の場合はデータで受け取るため、保存手数料(300円程度)やメディア代のみで済み、ここでも数百円〜数千円の微細な節約になります。

場所を選ばず手続きできる時間的な効果

電子定款は、オンライン申請システムを活用することで、手続きの場所的制約から解放されるメリットがあります。

従来、紙の定款認証では、発起人(または代理人)が管轄の法務局に所属する公証役場へ、平日の日中に直接出向く必要がありました。

これ、お勤めの方や地方在住の方には結構ハードルが高いですよね。

しかし、現在は電子定款と「テレビ電話方式」の認証を組み合わせることで、自宅やオフィスにいながら公証人の認証を受けることが可能になっています。

スマホやPCのビデオ通話機能を使って、画面越しに公証人と本人確認を行うのです。

特に以下のような方には、この時間的・場所的メリットは非常に大きいです。

  • 地方在住だが、東京都内に本店を置く会社を作りたい方(本来なら東京の公証役場まで行かなければなりません)
  • 副業で起業準備をしており、平日の日中に公証役場へ行く時間が取れない方
  • 小さなお子様がいて、外出が難しい方

もちろん、テレビ電話認証を行うためにも事前の予約や、電子署名済みデータの送信などの準備は必要ですが、「移動時間と交通費」を削減できるのは、忙しい創業者にとって4万円以上の価値があるかもしれませんね。

自分で作成する場合の複雑なやり方と要件

「4万円浮くなら自分でやろう」と考えた多くのチャレンジャーが、ここで挫折を味わいます。

電子定款を自力で作成し申請するためには、法務省のシステム要件を満たした高度なIT環境構築が必要になるからです。

「ただPDFにすればいいんでしょ?」と思っていると痛い目を見ますよ。

まず、電子定款として認められるためには、作成したPDFファイルに対して、マイナンバーカード等を用いて「電子署名」を付与する必要があります。

これは「このデータは私が作成し、改ざんされていません」ということを暗号技術を使って証明するものです。

この作業を行うためには、以下のような高いハードルを越える必要があります。

  1. 環境設定の難しさ:法務省の「登記・供託オンライン申請システム」を使うための事前登録や、専用ソフト「申請用総合ソフト」のインストールが必要です。このソフト、Windows専用でMacでは動かない機能があったり、ブラウザの設定を細かく弄る必要があったりと、PC初心者にはかなり厳しい仕様になっています。
  2. 署名プラグインの競合:PDFソフトに「署名機能」を追加するプラグインを入れるのですが、これがAdobe Acrobatのバージョン(32bit版か64bit版か)によって異なり、間違えると動作しません。
  3. ルート証明書のインストール:公的個人認証サービス(マイナンバーカード)の証明書をPCに認識させるための設定も必要です。

私自身、初めてこの設定を行ったときは半日以上費やしました。

PC操作に自信がある方でも、「署名が検証できません」というエラーが出て先に進めず、結局紙の定款に戻した……

というケースは後を絶ちません。

AdobeやICカードリーダー等の必要機器

自力で電子定款を作成する場合、以下の機材やソフトの準備が必須となります。

これらを新規に購入・契約すると、節約したはずの4万円に近い出費が発生してしまうことも珍しくありません。

「節約のために自作したのに、結局赤字だった」なんてことにならないよう、コスト感をしっかり把握しておきましょう。

必要なもの概要・費用の目安
Adobe Acrobat無料のReaderでは不可。有料版(Standard/Pro)の契約が必要。(月額1,500円〜2,000円程度)
ICカードリーダライタマイナンバーカードをPCに読み込ませるための機器。(3,000円〜5,000円程度)
マイナンバーカード電子証明書が格納されたもの。持っていない場合は発行に1ヶ月程度かかる。
Windows PC法務省ソフトの推奨環境。MacでもWebブラウザ申請は可能だが、制約が多い。

注意点:Adobe製品の罠

「無料のPDFソフトではダメなのか?」という質問をよく頂きますが、法務省のシステムで公式に動作確認されているのは実質的にAdobe Acrobat(有料版)のみです。

他の安価なPDF編集ソフトでは、法務省指定の署名プラグインが動かず、申請が通らないリスクが非常に高いです。

たった1回の申請のために、年間契約のAdobe製品を契約するのはコスパが悪いと言わざるを得ません。

申請後の修正が困難なリスクと手間

紙の定款であれば、誤字脱字が見つかっても、その場で「捨印」を使って訂正することが可能です。

公証役場の窓口で「あ、ここ住所間違ってますね」と言われても、二重線を引いて印鑑を押せば数分で解決します。

しかし、電子定款は「改ざんされていないこと」を電子的に証明する仕組みであるため、一度署名した後のデータ修正は一切できません。

1文字でもデータをいじると、電子署名の効力が消えてしまうからです。

もし申請後に「商号の漢字が違った」「住所の番地が抜けていた」といった重大なミスが発覚した場合、以下の地獄のようなプロセスを再度踏む必要があります。

  1. Wordで定款データを修正する
  2. 再度PDFに変換する
  3. 再度、Adobe Acrobatを開いて電子署名を付与する
  4. オンラインシステムで再申請する

これにより設立予定日がズレ込んだり、最悪の場合は公証人の認証手数料が二重にかかってしまったりするリスクも潜んでいます。

特に後述する「24時間以内処理」を目指している場合、一箇所の補正(ミス)でその要件から外れてしまうため、ミスの許容度は極めて低いです。

一発合格が求められるプレッシャーは、慣れていない方には大きなストレスになるでしょう。

電子定款と紙の定款の詳しい違いについては、こちらの記事でも解説しています。

定款のメリットやデメリットを踏まえた選択

ここまで読むと「電子定款、自分でやるのは大変そう……」と思われたかもしれません。

その感覚は正しいです。

しかし、現在は便利なツールやサービスが登場しており、個人の負担を極限まで減らして電子定款のメリット(4万円削減)だけを享受する方法が主流になっています。

ここでは、現代の賢い創業者が選んでいる具体的な方法をご紹介します。

行政書士に依頼する費用の相場と注意点

最も確実で安心な方法は、私のような行政書士に依頼することです。

専門家に依頼すれば、面倒な機器の準備は一切不要で、法的な記載ミスも防げます。

行政書士は業務用の電子署名環境を整えていますので、お客様は定款の内容を決めるだけでOKです。

行政書士が自身の電子証明書を使って代理署名を行うため、お客様自身がAdobeソフトやカードリーダーを用意する必要はありません

もちろん、印紙代4万円も不要です。

費用の相場としては以下の通りです。

  • フルサポート(定款作成〜設立登記まで提携司法書士と連携):10万円〜15万円程度
  • 電子定款作成・認証のみ(スポット依頼):2万円〜4万円程度

「お金がかかるなら意味がない」と思われるかもしれませんが、複雑な種類の株式(優先株など)を発行する場合や、現物出資を行う場合、発起人が複数いて権利関係が複雑な場合などは、テンプレート通りの定款では後々トラブルになります。

そうした「オーダーメイドの定款」が必要な場合は、コストをかけてでも専門家に依頼する価値は十分にあります。

会社設立クラウドサービスで代行する仕組み

現在、最も多くの創業者に選ばれているのが「会社設立クラウドサービス」です。

これは、Web上で情報を入力するだけで、システムが定款を自動生成し、提携している行政書士が電子署名を代行してくれる仕組みです。

ユーザーは高額なAdobeソフトやICカードリーダーを買う必要がなく、「機器不要」かつ「印紙代0円」で会社を作ることができます。

実質的な作業(署名・送信)はプロ(行政書士)が裏側で行っているため、法的なクオリティも一定水準担保されているのが特徴です。

自分でやる場合の「機材コスト」「設定の手間」「ミスのリスク」を全て解消しつつ、印紙代4万円カットの恩恵だけ受けられるため、一般的な株式会社・合同会社の設立であれば、この方法が最適解と言えるでしょう。

freeeやマネーフォワード等の主要サービス

代表的なサービスには「freee会社設立」や「マネーフォワード会社設立」、「弥生のかんたん会社設立」などがあります。

これらは、自社の会計ソフトを使ってもらうことを前提としているため、定款作成にかかる手数料(通常5,000円程度)を実質無料、あるいは極めて低額に設定しています。

なぜそんなに安いの?

「タダより高いものはない」と不安になるかもしれませんが、これは会計ソフト各社のマーケティング戦略です。設立後に有料の会計ソフトを契約してもらうことで、初期費用の赤字分を回収するモデル(LTVモデル)になっています。会社を作ればどうせ会計ソフトは必要になりますし、銀行口座の開設などもセットで申し込めるため、ユーザーにとっても非常に合理的な選択肢と言えます。

  • freee会社設立:ガイドが親切で初心者向け。年間契約で定款代行手数料5,000円が無料になるキャンペーンを頻繁に行っています。
  • マネーフォワード会社設立:マネーフォワードの会計ソフトを使う予定ならこちら。連携が強力です。
  • 弥生のかんたん会社設立:老舗の安心感。起業直後のサポートも手厚いです。

法務局の24時間以内処理を受ける条件

急いで会社を作りたい方にとって見逃せないのが、法務局による「24時間以内処理」です。

これは、特定の条件を満たしたオンライン申請について、原則として申請から24時間以内に登記を完了させるという運用です(繁忙期などを除く)。

この適用を受けるための必須条件の一つが、「定款を含む全ての添付書面が電磁的記録(電子データ)であること」です。

つまり、最速で会社を作るためにも、電子定款の採用は必須となります。

紙の定款では、郵送の時間や法務局での処理待ち時間が発生し、登記完了まで1週間〜2週間かかることもザラです。

銀行口座の開設や、オフィス契約など、登記簿謄本(履歴事項全部証明書)が必要な場面は山ほどあります。

ビジネスチャンスを逃さないためにも、電子化によるスピード設立は大きな武器になります。

株式会社と合同会社での手続きの違い

電子定款のメリットは会社形態によっても微妙に異なります。

前述の通り、株式会社の場合は公証役場での認証(手数料3〜5万円)が必要ですが、合同会社(LLC)の場合はこの公証人認証が不要です。

したがって、合同会社で電子定款を採用すれば、「公証人手数料0円」かつ「印紙代0円」となります。かかる法定費用は、法務局に支払う登録免許税の6万円のみです。

「とにかく初期費用を安く法人を作りたい」「プライベートカンパニーを作りたい」という方にとって、合同会社×電子定款の組み合わせは最強のコストパフォーマンスを発揮します。

ただし、合同会社であっても電子定款の作成には電子署名が必要ですので、自力でやるかクラウドサービスを使うかの判断基準は株式会社と同じです。

2025年の法改正によるデジタル化の展望

2025年現在、政府は行政手続きの「ワンスオンリー(一度の入力で済む)」化やデジタル完結を強力に推し進めています。

定款認証のプロセスにおいても、Web会議ツールの利用が標準化され、マイナンバーカードの活用範囲も広がっています。

また、2025年10月からは公証人の手数料令が改正される予定もあり、手続きのさらなる簡素化やデジタル対応が進む見込みです。

今後は紙の手続きが「例外」となり、電子定款が「標準」となる時代が完全に到来します。

今のうちからデジタル手続きに慣れておくことは、設立後の社会保険手続き(e-Gov)や税務申告(e-Tax)をスムーズに行うための良い予行演習にもなるでしょう。

(出典:法務省『商業・法人登記のオンライン申請について』

電子定款のメリットやデメリットまとめ

最後に、ここまでの内容を整理します。電子定款には「印紙代4万円削減」という強烈なメリットがある一方で、自力で行うには「機材コスト」と「技術的手間」という高い壁(デメリット)があります。

あなたへの最適解は?

  • コストと手間を両方抑えたい方(推奨):freeeやマネーフォワードなどのクラウドサービスを利用するのが正解です。機材なしで4万円の節約メリットを享受でき、専門家の署名代行により法的な安心感も得られます。
  • 複雑な定款を作りたい方:種類株式や特殊な機関設計を行う場合は、クラウドサービスの雛形では対応しきれません。行政書士などの専門家へ直接依頼してください。
  • ITスキルに自信があり勉強したい方:あえて自力で環境構築をするのも経験になりますが、Adobeの契約料などでコストメリットは薄いことを覚悟して挑んでください。

起業準備は、会社設立手続き以外にもやることが山積みです。

定款作成という事務手続きに時間を奪われすぎず、本業のビジネスプランのブラッシュアップにこそ時間を使っていただきたいなと思います。

これから始まるあ起業費用を抑えるために電子定款のメリットやデメリットについて調べていますか?印紙代4万円削減は大きな魅力ですが、自作には機材コストや修正不可のリスクも潜んでいます。行政書士が教える電子定款のメリットやデメリットを正しく理解し、クラウドサービス活用など、あなたにとって損のない最適な作成方法を2025年最新情報で解説します。なたの会社経営が、スムーズなスタートを切れることを心から応援しています。

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