

行政書士の小野馨です。
今回は「現物出資」について徹底解説したいと思います。
会社を作りたいけれど手元の現金が少なくて資本金どうしよう、と悩んでいませんか。
あるいは、持っている車やパソコンを会社の資本金に組み込みたいけれど、現物出資の手続きや税金が複雑そうで不安を感じているかもしれませんね。
注意ポイント
実は、現物出資は資金不足を解消する強力な手段ですが、やり方を間違えると消費税やみなし譲渡所得税といった思わぬ税金が発生したり、会社設立の手続きがストップしてしまったりするリスクがあります。
特に500万円以下の特例や仕訳のルールを正しく理解していないと、後で大きな損失を出してしまうことも。
この記事では、現物出資のメリットやデメリットから、具体的な手続きの流れ、そして絶対に知っておきたい税務上の注意点まで、専門家の視点でわかりやすく解説します。
- 現物出資を利用して現金なしで資本金を増やす具体的な方法
- 検査役の調査を省略できる500万円以下の特例と手続き
- 個人から法人への資産移転で発生するみなし譲渡や消費税のリスク
- 法人成りにおける売買や賃貸との比較と賢い節税スキーム
現物出資のメリットや手続きと会社設立
ここでは、現金を使わずに会社の資本金を充実させる「現物出資」の基本的な仕組みとメリット、そして会社設立時に避けて通れない具体的な手続きについて解説します。
どのような財産が出資できるのか、定款には何を書くべきなのか、実務の現場でよくある疑問を解消していきましょう。
資金不足でも資本金を増やせるメリット
会社を作る時、「資本金はいくらにすればいいんだろう?」と多くの起業家さんが悩みます。
今の会社法では、極端な話、資本金1円からでも株式会社や合同会社を作ることができます。
しかし、実際に1円で会社をスタートさせるとどうなるでしょうか。
まず、法人口座の開設でつまずくことが多いんです。
注意ポイント
銀行は「この会社、本当に事業をやる気があるのかな?すぐに倒産しないかな?」と厳しく審査しますから、元手が1円だと信用を得るのは難しいのが現実です。
また、取引先との契約時にも、登記簿(履歴事項全部証明書)を見られて「資本金が少なすぎるので取引を見送りたい」と言われてしまうリスクもあります。
そこで非常に役に立つのが現物出資という手法です。
これは、その名の通り「現金」の代わりに「モノ(現物)」を出資して、その対価として会社の株式を受け取る方法です。
参考
たとえば、あなたの手元に現金が50万円しかなくても、仕事で使う予定の時価150万円の営業車を持っていれば、それを現物出資することで、合計200万円の資本金として会社を登記することができるんですよ。
最大のメリットは、何といっても手元のキャッシュアウトなしで、会社の対外的な信用力(資本金の額)を底上げできることでしょう。
特に、建設業や運送業、人材派遣業などの許認可事業では、「財産的基礎要件」として数千万円単位の資産が求められることがあります。
ポイント
こうした場合に、機械設備や土地を現物出資して要件をクリアするのは、実務上とてもよく使われるテクニックなんです。
また、金融機関から融資を受ける際も、自己資本比率は重要な審査項目になります。
「現物出資だから評価が低い」ということは基本的になく、適正に評価された資産であれば、立派な自己資本として認められます。
手元の現金を温存したまま、会社の財務体質を強化できる点は、スタートアップにとって大きな武器になると私は思います。

車両や不動産など出資可能な財産の種類
「じゃあ、家にある不用品でも何でも出資できるの?」というと、さすがにそうはいきません。
現物出資ができる財産には、大きく分けて3つの条件があります。
- 譲渡できること(会社の名義にできること)
- 貸借対照表に資産として計上できること
- 金銭的な価値が見積もれること
です。
具体的に、どのようなものが現物出資の対象として認められるのか、詳しく見ていきましょう。
1. 動産(形のある動かせる資産)
最も一般的なのがこのカテゴリーです。
- 自動車・トラック:営業車や配送用トラックは代表格です。
- OA機器・事務機器:パソコン、サーバー、コピー機など。IT企業などではハイスペックなPCを出資するケースが多いですね。
- 商品・原材料(棚卸資産):個人事業主が法人成りする場合、お店にある在庫商品をそのまま新設法人に移すために現物出資が利用されます。これにより、会社設立初日から商品を販売できる状態を作れます。
- 機械装置・工具:工場で使う旋盤やプレス機、高価なカメラ機材なども対象です。
2. 不動産
土地、建物、マンション、工場などが該当します。
注意ポイント
金額が大きいため、一気に資本金を増強できますが、後述する手続きや税金が複雑になるため注意が必要です。
所有権だけでなく、「借地権」なども財産価値があれば出資対象になり得ます。
3. 有価証券
上場株式、国債、社債、投資信託などが含まれます。
親会社が子会社を作る際に、持っている他社の株を現物出資するといったケースも実務ではよく見かけます。
4. 知的財産権・無形固定資産
目に見えない資産も対象です。
ポイント
特許権、実用新案権、商標権、著作権などがこれにあたります。
最近では、WEBサイトのドメインやソフトウェア(アプリのプログラム等)も、資産価値が算定できれば現物出資の対象になります。
「自分の技術力やブランドを資本にしたい」という方にはぴったりですね。
意外と知られていないのが、「ローンが残っている資産」の取り扱いです。
これを「負担付現物出資」と言いますが、ローン(債務)ごと会社に引き継ぐことになるため、手続きが非常に複雑になりますし、債権者(銀行など)の承諾も必要になります。
設立時のスムーズさを優先するなら、ローンを完済している資産を選ぶのが無難ですよ。
注意ポイント
「労務出資(体を動かして働くこと)」や「信用出資(有名人の名前など)」は、日本の会社法では株式会社の出資としては認められていません。
「俺が働くから株をくれ」というのは、設立後のストックオプション等の話であって、設立時の出資にはならないので注意してくださいね。
会社設立時の定款記載と調査報告書
現物出資を行う場合、通常の現金出資だけの設立とは異なり、定款(ていかん)という会社の憲法にあたる書類に、かなり細かい情報を記載しなければなりません。
これを法律用語で「変態設立事項(へんたいせつりつじこう)」と呼びます。
「変態」なんて聞くとギョッとするかもしれませんが、通常の設立形態とは異なる「変則的な形態」という意味ですので安心してください。
会社法第28条に基づき、定款には必ず以下の4点を具体的に記載しなければなりません。
これを書き忘れると、現物出資自体が無効になってしまうので要注意です。
- 出資する人の氏名または名称:誰がその財産を出すのかを特定します。
- 出資財産の特定:「パソコン 1台」といった曖昧な書き方はNGです。「メーカー名、型番、製造番号、個数」まで特定して書きます。自動車なら「車名、年式、車台番号」が必須です。
- その財産の価額:ここが重要です。買った時の値段(簿価)ではなく、あくまで今現在の価値である「時価」を記載します。
- 割り当てられる株式数:その財産と引き換えに、会社が何株を発行するのかを書きます。
取締役による調査報告書の作成義務
定款に書くだけでは終わりません。
会社設立の登記を法務局に申請する際、設立時取締役(あなた自身であることが多いでしょう)が、「この財産は本当に定款に書かれた通りの価値があるのか?」「ちゃんと会社に引き継がれているか?」を調査し、その結果をまとめた「調査報告書」を作成して添付する必要があります。
この調査報告書には、定款に記載した内容と、実際に調査した結果(「相当であると認める」といった文言)を記載し、実印を押印します。
私がサポートする際も、この書類作成が一番の山場になることが多いですね。現物の写真や、時価を証明する資料(中古車サイトの価格表のコピーなど)をあわせて保管しておくと、より説得力が増しますよ。
検査役調査が不要な500万円以下の特例
「現物出資は手続きが面倒で時間がかかる」と敬遠される最大の理由が、裁判所が選任する「検査役(けんさやく)」による調査です。
原則として、現物出資をする場合は、裁判所に申し立てて検査役を選んでもらい、その人に財産の価値を厳密に調べてもらわなければなりません。
しかし、この検査役の調査、申し立ててから選任されるまでに数週間、調査に数ヶ月かかることもザラですし、何より検査役への報酬として数十万円〜百万円単位の費用がかかってしまいます。
これでは、スピーディーに起業したいスタートアップにとっては大きな足かせになってしまいますよね。
でも安心してください。会社法第33条第10項には、この検査役の調査を省略できる「特例」が用意されています。
その中で最も使い勝手が良く、実務で頻繁に利用されているのが、「現物出資する財産の総額が500万円以下であれば、検査役の調査は不要」というルールです。
ここでポイントなのが、「総額」という言葉です。これは、出資者一人あたりの金額ではなく、定款に記載された現物出資財産すべての合計額で判断します。
- ケースA:あなた一人が、時価400万円の車を現物出資する。→ 500万円以下なので、検査役不要。OKです。
- ケースB:あなたが300万円の車、パートナーが300万円の土地を現物出資する。→ 合計600万円になるので、特例は使えません。検査役の調査が必要です。
実務上、個人の法人成りや小規模な会社設立で行われる現物出資の9割以上は、この「500万円以下の枠内」に収まるように調整して行われています。
もし600万円くらいの資産があるなら、500万円分だけ現物出資して、残りは会社への「売却」や「賃貸」にするなど、工夫次第で検査役を回避することができますよ。
専門家証明や不動産鑑定が必要なケース
「うちは工場用の大きな土地があるから、どうしても500万円を超えてしまう。でも、検査役を選任している時間はない…」という場合はどうすればいいのでしょうか?
検査役を選任して数ヶ月待つしかないのでしょうか?
実は、500万円を超える場合でも、検査役を回避する別のルートが存在します。
それが、「弁護士、公認会計士、税理士などの専門家による証明」を受ける方法です。
具体的には、これらの国家資格を持つ専門家に財産の内容をチェックしてもらい、「定款に記載された価額は相当である(高すぎることはない)」という証明書を発行してもらうのです。
この証明書を登記申請時に添付すれば、裁判所の検査役による調査は免除されます。
不動産の場合はさらにハードルが上がる
ただし、出資する財産が「不動産」の場合はさらに厳格です。
ポイント
弁護士等の証明に加えて、不動産鑑定士による鑑定評価を受け、その鑑定評価書もセットで用意しなければなりません。
不動産鑑定士に正式な鑑定を依頼すると、物件の規模にもよりますが、数十万円の鑑定料がかかることが一般的です。
弁護士等への証明報酬と合わせると、かなりのコストになります。
「コストをかけてでも資本金を大きく見せたいか」「スピードを優先したいか」、経営者としての判断が問われる場面ですね。
コストの目安
専門家にお願いする場合、証明書の作成費用として最低でも33万円程度〜(案件の難易度による)の報酬が発生することが一般的です。
メリットとコストを天秤にかけて慎重に検討しましょう。
定款記載額を下回った場合の不足額填補責任
ここで一つ、現物出資における「怖い話」をしますね。
もし、あなたが「この愛車はプレミアがついているから100万円の価値がある!」と主観で決めて定款に書き、現物出資したとします。
しかし、会社設立後に税務調査や監査が入った際、客観的な時価が実は30万円しかなかったことが判明したら、どうなるでしょうか。
この場合、会社法第52条に基づき、発起人(あなた)や設立時の取締役は、不足している差額の70万円を、自分のポケットマネーから会社に支払わなければならないという厳しいルールがあります。
これを「財産引受等の不足額填補責任(ふそくがくてんぽせきにん)」と言います。
さらに恐ろしいのは、この責任が原則として「無過失責任」に近い性質を持っている点です。
つまり、「わざと高く見積もったわけじゃないんです、知らなかったんです」という言い訳が通用しません。
会社にお金(資本)がないのに株式を発行してしまうことは、会社の債権者を害する行為になるため、法律は非常に厳しい態度を取っています。
ただし、例外として「検査役の調査を経た場合」や、職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合(専門家の証明を受けた場合など)は、この責任が免除されることもあります。
自分たちだけで価格を決める「500万円以下」のケースこそ、中古車市場の相場データをプリントアウトして保存しておくなど、客観的な根拠をしっかり残しておくことが、将来の自分を守るカギになりますよ。
自動車や不動産の引渡しと名義変更の手続き
「定款に書いて、登記も終わった!これで完了!」と思っていませんか? 実は、現物出資の実務は、会社設立登記が終わった後にも重要なタスクが残っています。
それが「財産の名義変更」です。
会社法上は、出資の履行(財産の引渡し)は会社成立前に行う必要がありますが、対抗要件(名義変更)の手続き自体は、会社という法人が誕生した後でないと行えないものが多いんです。
1. 自動車の場合
個人の名義から、新しくできた会社の名義へ変更する「移転登録」を、管轄の陸運局で行う必要があります。
この際、車庫証明も法人名義で取り直す必要があります。
これを忘れていると、春に自動車税の納付書が個人宛に届き続けてしまい、経費処理がややこしくなる原因になります。
また、万が一事故を起こした際、保険の名義と所有者が違うことでトラブルになる可能性もあります。
2. 不動産の場合
法務局で「所有権移転登記」を行います。
これは自動的には行われません。司法書士に依頼して、個人から法人への所有権移転の手続きをしっかりと行いましょう。
このタイミングで、後述する登録免許税や不動産取得税の納付が必要になります。
3. 預金・有価証券・ドメインなど
銀行口座の名義変更や、証券会社での口座開設と株式の移管手続き、ドメイン管理会社での契約者変更なども忘れずに行いましょう。
特にWEBサービスのアカウントなどは、「個人カードで決済され続けている」というミスが起きがちなので、早めに法人カードへ切り替えることをおすすめします。
現物出資の消費税やみなし譲渡と仕訳
現物出資は「タダで株をもらう」わけではありません。
税務署の目線で見ると、これは「資産を売って、そのお金で株を買った」という取引に見えるんです。
ここからは、多くの人が見落としがちな税務リスクと、正しい会計処理について、専門用語を噛み砕いて掘り下げていきます。
個人資産の移転で発生するみなし譲渡所得
これが現物出資における一番の落とし穴かもしれません。
「自分の車を、自分が100%株主の会社に入れただけなのに、なんで税金がかかるの?」と理不尽に感じる方も多いでしょう。
でも、所得税法においては、個人が法人に資産を現物出資することは、「時価で資産を譲渡(売却)した」とみなされるのです。
具体的な例で考えてみましょう。
あなたが、祖父から相続した土地を持っているとします。取得費(買った時の値段)が不明なため、概算取得費として売却額の5%と仮定します。
この土地の現在の時価が1,000万円に値上がりしていて、これを現物出資したとしましょう。
- 出資額(譲渡価額):1,000万円
- 取得費:50万円(1,000万円の5%)
- 譲渡益(儲け):950万円
なんと、950万円もの利益が出たとみなされ、これに対して約20%(長期譲渡の場合)の所得税・住民税がかかります。
つまり、約190万円の税金を支払う義務が発生するのです。
資金繰りに注意
最大の問題は、この税金が「現金が入ってこない」のに発生する点です。現物出資であなたが受け取るのは「株式」であり、現金ではありません。
しかし、税務署への納税は「現金」でしなければなりません。含み益が大きい不動産などを安易に出資すると、納税資金がなくて黒字倒産のような状態になりかねないので、事前の税額シミュレーションは必須です。
資本金1千万円超で生じる消費税納税義務
「会社を作ると、最初の2年間は消費税が免税になる」という節税テクニックを聞いたことがあるかもしれません。これは新設法人の特例ですが、無条件ではありません。
「資本金が1,000万円未満であること」という重要な条件があるのです。
現物出資を張り切りすぎて、現金の出資と合わせた資本金の総額が1,000万円以上になってしまうと、この免税メリットが吹き飛びます。
- 現金出資:500万円
- 不動産の現物出資:500万円
- 合計資本金:1,000万円
この場合、資本金が「1,000万円以上」に含まれてしまうため、設立1期目からいきなり消費税の「課税事業者」になってしまいます。
もし初年度の売上が大きければ、数百万円単位の消費税を納税することになります。
たった1円の差で天国と地獄が分かれるので、資本金の設定は「999万円以下」に抑えるのがセオリーですよ。
(出典:国税庁『No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例』)
法人成りにおける売買や賃貸との比較
個人事業から法人成りをする際、すべての資産を現物出資する必要はありません。
資産を法人に移す方法は大きく3つあり、それぞれの特徴を理解して使い分けるのが賢い経営者です。
| 方法 | 特徴・メリット | こんな時におすすめ |
|---|---|---|
| 現物出資 |
| 手元資金はないが、資本金を大きく見せたい時。許認可が必要な時。 |
| 売買(譲渡) |
| 個人に資金を還流させたい時。金額が明確な資産(車両や在庫)を移す時。 |
| 賃貸 |
| 不動産など移転コストが高い資産。会社が将来撤退する可能性がある時。 |
例えば、土地は移転コスト(登録免許税や不動産取得税)が非常に高いので、無理に移さず「賃貸」契約にして、法人が個人に地代を払う形にする。
一方で、車両や在庫商品は「売買」契約にして、法人の経費(減価償却費や仕入)にする。
そして、パソコンや特許権など、どうしても資本金に組み込みたいものだけを「現物出資」する。
このように、資産ごとに最適な方法をパズルのように組み合わせるのが、高度な節税・財務戦略となります。
資本準備金を活用した節税と仕訳の方法
先ほど、「資本金1,000万円の壁」の話をしましたが、実は現物出資をしても資本金を増やさない魔法のような方法があります。
それが、会社法第445条で認められている「資本準備金」への計上です。
法律上、株主が出資した額の「2分の1を超えない範囲」であれば、資本金として計上せず、「資本準備金」としてプールしておくことが認められています。
これは現金出資でも現物出資でも同じです。
これを使えば、例えば1,000万円分の現物出資をしたとしても、資本金500万円・資本準備金500万円として計上することができます。
こうすれば、登記簿上の資本金は500万円なので、消費税の免税要件(資本金1,000万円未満)をクリアできますし、登録免許税(資本金の0.7%)も安く抑えられる可能性があります。
具体的な仕訳の例
例えば、発起人が時価100万円の車両を現物出資し、その半分を資本準備金とする場合の仕訳は以下のようになります。
仕訳パターン
(借方)車両運搬具 1,000,000円
(貸方)資本金 500,000円
(貸方)資本準備金 500,000円
摘要:発起人〇〇による現物出資(車両)
この「資本準備金」を活用するスキームは、税理士さんの間では常識ですが、一般の方にはあまり知られていません。
これを知っているだけで、数十万〜数百万円の税金が変わることもあるので、ぜひ覚えておいてくださいね。
不動産取得税などの移転コストとデメリット
現物出資で不動産を会社に移す場合、忘れてはいけないのが「流通税」等のコストです。
「自分(個人)のものを自分(法人)に移すだけだから、お金はかからないだろう」と思っていると、後から高額な納税通知書が届いて青ざめることになります。
主なコストは以下の2つです。
- 登録免許税:所有権移転登記のためにかかります。現物出資の場合は、固定資産税評価額の2.0%(原則)がかかります。売買(2.0%)と同じですが、相続(0.4%)などに比べると高い税率です。
- 不動産取得税:不動産を取得した「法人」に対して課税されます。これも、原則として固定資産税評価額の3%(土地や住宅)または4%(住宅以外の家屋)がかかります。
例えば、評価額2,000万円の土地建物を現物出資すると、これだけで数十万円〜百万円近くの税金が現金で出ていく可能性があります。
現物出資には「キャッシュアウトがない」というメリットがあると説明しましたが、不動産に関しては例外的に「税金というキャッシュアウト」が発生することを覚悟しなければなりません。
このコストを考えると、前述の「賃貸」の方が有利なケースも多いのです。
まとめ:現物出資は税理士と相談し計画的に
いかがでしたでしょうか。
現物出資は、手元資金がなくても資本金を増やせる素晴らしい仕組みですが、その裏には「資産の厳格な評価」「手続きの手間」「複雑な税金」というハードルが隠されています。
特に、消費税の免税判定や、個人のみなし譲渡所得税の問題は、個別の事情や金額によって判断が大きく分かれる部分であり、ネットの情報だけで判断するのは非常に危険です。
「とりあえずやってみよう」で進めてしまう前に、一度、会社設立に詳しい税理士さんや司法書士さんに「私の場合はどうするのが一番得ですか?」と相談されることを強くおすすめします。
最初の手間を惜しまずに、盤石な体制で会社をスタートさせましょう!
免責事項
本記事の情報は一般的な法令解釈および執筆時点(2025年)の制度に基づいています。具体的な税額計算や法的手続き、特例の適用可否については、個別の事情により異なりますので、必ず税理士・司法書士等の専門家にご相談の上、自己責任において実行してください。
会社設立や電子定款認証のスペシャリスト!開業17年・年間実績500件以上。実は、電子定款の制度ができた10年以上前から電子定款認証の業務を行なっているパイオニアです!他との違いは、まず定款の完成度!内容はモデル定款のモデルと言われ全国数百箇所の公証人の目が入っている優れもの!そして電子署名はまるでサインのようなかっこいい電子署名です!その電子定款であなたの大切な会社設立を真心込めて応援します!
