

電子定款実績5000件の行政書士の小野馨です。
今回は、「定款の紛失時の再発行や再作成」について詳しく解説します。
会社の大事な憲法とも言える定款が見当たらないとなると、本当に焦りますよね。
特に、法人口座の開設や融資の申し込み、あるいは許認可の更新などで銀行や役所から「定款の写しを提出してください」と言われて初めて紛失に気づくケースが後を絶ちません。
「役所に行けばコピーをもらえるだろう」と軽く考えてしまいがちですが、実は定款の再発行はそう単純ではありません。
注意ポイント
設立からの年数や、紙で保管していたか電子データだったかによって、対応策が全く異なるからです。
最悪の場合、どこにもデータが残っていないこともあり得ます。
でも、安心してください。
法的に正しい手順を踏めば、定款は必ず「復活」させることができます。
この記事では、定款をなくしてしまった経営者様のために、再発行ができるケースの分岐点と、最終手段としての「再作成(復元)」の手順まで、実務の現場視点で徹底的に解説していきます。
- 設立年数で変わる定款の探索ルートと公的機関の保存ルール
- 銀行審査や行政手続きで求められる「現行定款」と「原始定款」の決定的な違い
- どこにもない場合に、法的な効力を持たせて定款を「再作成(復元)」する具体的な手順
- 将来の紛失トラブルや印紙コストを回避するための電子定款活用のメリット
定款を紛失した際の対処法と確認先
「定款がない!」と気づいたとき、まずやるべきは闇雲にオフィスの書類をひっくり返すことではありません。
まずは落ち着いて、会社の「設立年数」と「誰に頼んだか」を思い出してみてください。実は、定款には法律や規則によって「公的な場所に保管されている期間」が決まっています。
この期間内であれば、比較的スムーズに手に入る可能性があるんです。
ここでは、コストや手間を最小限に抑えるために、どの順番でどこを探せばいいのか、その探索順位とそれぞれの機関で確認できる内容について、詳しく掘り下げていきます。
設立時の原始定款と現行定款の違い
まず最初に、言葉の定義をしっかりと理解しておきましょう。
ここを曖昧にしたまま手続きを進めると、せっかく苦労して書類を取り寄せたのに、銀行の窓口で「これでは受け付けられません」と突き返されてしまう悲劇が起きます。
定款には大きく分けて「原始定款(げんしていかん)」と「現行定款(げんこうていかん)」の2種類が存在します。
この違いは、単なる呼び名の違いではなく、法的な性質や証明力が全く異なるものなんです。
原始定款とは何か
原始定款とは、会社を設立した一番最初のタイミングで作成し、公証役場で公証人の認証を受けた定款のことです。
世の中に「原本」という概念が存在し、公的なお墨付きがあるのは、基本的にこの設立時のものだけです。
ここには、設立当時の発起人の名前や、当時の住所、当時の資本金額などが記載されています。
現行定款とは何か
一方、現行定款とは、設立後に会社の成長や変化に合わせて書き換えられた、現在有効な最新版の定款のことです。
例えば、本店を移転したり、商号(社名)を変えたり、事業目的を追加したりした場合、定款の内容は変更されます。
会社法では、定款の変更は株主総会の決議によって効力が生じるとされており、変更のたびにいちいち公証人の認証を受ける必要はありません
(変更登記は必要ですが、定款そのものの認証は不要です)。
注意ポイント
【ここが最大の落とし穴】
銀行や行政庁が審査で求めているのは、ほとんどの場合「現行定款」です。なぜなら、彼らは「今の会社のルール」や「今の株主構成」を知りたいからです。
しかし、公的機関(公証役場)が保管・再発行してくれるのは、基本的に「原始定款」のみです。
つまり、設立から一度も定款変更をしていない会社であれば「原始定款=現行定款」なので問題ありませんが、何かしら変更している場合、公証役場で手に入れた原始定款だけでは「現在の定款」として機能しない可能性があるのです。
このギャップをどう埋めるかが、定款紛失対応の最も重要なポイントになります。
| 種類 | 原始定款 | 現行定款 |
|---|---|---|
| 作成時期 | 会社設立時 | 現在(直近の変更反映後) |
| 公証人の認証 | あり(必須) | なし(不要) |
| 保管場所 | 公証役場に原本あり | 会社保管のみ(公的保管なし) |
| 利用シーン | 会社のルーツ証明など | 銀行口座開設、許認可申請 |
公証役場での再発行と保存期間
もしあなたの会社が設立から20年以内であれば、設立時に認証を受けた公証役場で「原始定款」の謄本(とうほん・コピーのこと)を再発行してもらえる可能性が非常に高いです。
これは最も確実で、法的な信頼性も高い入手ルートと言えます。
なぜ20年なのか?
これは「公証人法施行規則」というルールに基づいています。
同規則第27条では、定款の保存期間を原則として20年と定めています。
そのため、設立から20年を経過していない会社であれば、公証役場の倉庫やデータサーバーに、あなたの会社の定款が眠っているはずなのです。
(出典:日本公証人連合会『定款認証』)
具体的な請求手順
再発行(正確には謄本請求)ができるのは、原則として嘱託人(発起人など)、その承継人(相続人など)、または法律上の利害関係を有する者に限られます。会社自身(代表取締役)であれば、当然請求可能です。
- 場所:設立時に認証を受けた公証役場(今の本店所在地ではなく、当時の管轄役場)
- 必要書類:
- 定款謄本交付請求書(役場にあります)
- 会社の登記事項証明書(3ヶ月以内のもの)
- 会社の印鑑証明書(3ヶ月以内のもの)
- 代表者の身分証明書(運転免許証など)
- 会社の実印
- 費用:謄本作成手数料として、1通あたり数千円程度(枚数によります)
電子定款の場合の特例
最近の会社設立では、収入印紙代(4万円)を節約するために、PDFによる「電子定款」で認証を受けるケースが主流です。
この場合、紙の原本は存在しませんが、公証役場のシステムにデータが保存されています。
電子定款の場合、認証から一定期間内であればシステムから再ダウンロードが可能ですが、期間が過ぎている場合は、公証役場に出向いて「同一情報の提供」を請求することで、紙に出力されたものや、データ(CD-R等持参)を受け取ることができます。
管轄公証役場がわからない場合
「昔のことすぎて、どこの公証役場に行ったか覚えていない」という場合は、設立時の本店所在地を管轄する法務局所属の公証役場である可能性が高いです。まずはその地域の公証役場に電話をして、「〇〇株式会社ですが、そちらで定款認証の記録はありますか?」と問い合わせてみるのが一番早いです。
法務局で閲覧やデータ取得を行う方法
「会社の書類なんだから、法務局に行けば全部管理してるでしょ?」と思われている経営者様は多いのですが、ここには大きな誤解があります。
法務局はあくまで「登記」を管理する場所であり、定款そのものの発行所ではないのです。
法務局での定款保存ルール「5年の壁」
法務局に定款が提出されるのは、会社設立登記や、定款変更を伴う登記申請のタイミングだけです。
そして、商業登記規則により、登記申請書とその附属書類(定款含む)の保存期間は「申請受付から5年間」と定められています。
永久保存ではないのです。
つまり、設立から5年以上経過しており、その間に一度も定款変更の登記をしていない会社の場合、法務局での保存期間は満了しており、すでに廃棄されている可能性が高いです。
逆に言えば、直近5年以内に何らかの登記申請を行っていれば、閲覧できるチャンスがあります。
「閲覧」制度の活用法
保存期間内であれば、「附属書類閲覧請求」という手続きが可能です。
以前は、閲覧室で書類を見ることしかできず、内容は手書きでメモを取るしかありませんでしたが、現在は運用が変わり、スマホやデジカメでの写真撮影が許可されている法務局が一般的です
(※念のため管轄法務局に事前確認してください)。
- 請求できる人:「利害関係人」に限られます。会社代表者は当然含まれますが、単に興味がある第三者は見られません。
- 必要書類:利害関係を証明する書面(会社の登記事項証明書など)、本人確認書類、認印。
- 手数料:1申請につき数百円程度。
注意ポイント
オンラインでの閲覧は不可
登記情報はインターネットで閲覧できますが、この「申請書の附属書類(定款)」に関しては、ネットでは見られません。必ず管轄の法務局窓口に出向く必要があります。
銀行手続きで定款がない時の代用案
「明日の融資面談までに定款が必要なのに、手元にない!」といった緊急事態。
再作成している時間もない場合、銀行に対して代替案を提示して交渉する余地は残されています。
銀行側がなぜ定款を欲しがるのか、その背景にある「犯罪収益移転防止法(犯収法)」や金融庁のガイドラインを理解すると、対策が見えてきます。
銀行は主に以下の点を確認したいのです。
- 実質的支配者の確認:株主が誰で、誰が会社を支配しているか(反社チェックやマネロン対策)。
- 事業目的の正当性:定款に記載された事業と、実際の取引内容が一致しているか(ペーパーカンパニーでないか)。
- 機関設計の確認:取締役会があるのか、監査役がいるのかなど、契約権限者の確認
交渉のための「合わせ技」セット
現行定款そのものが出せない場合、以下の資料をセットにすることで、「現在の定款内容を論理的に証明する」ことができます。
【代用案セット1:原始定款 + 履歴事項全部証明書】
公証役場で取得した「原始定款」と、法務局で取得した最新の「履歴事項全部証明書(登記簿)」をセットにします。
「設立時のルール(原始定款)はこれで、その後の変更点(商号、目的、役員など)は全て登記簿に載っています。これらを合わせれば現在の会社の内容が網羅できます」というロジックです。
【代用案セット2:原始定款 + 株主総会議事録】
登記簿に出てこない変更(決算期の変更など)がある場合は、その変更を決議した時の「株主総会議事録」を添付します。
これにより、原始定款からの変更履歴を全て追うことができるため、実質的に現行定款と同じ情報を提示できます。
ただし、これはあくまで「緊急避難的な措置」です。
メガバンクや厳格な審査部門では「定款そのものを整備してから出直してください」と言われることもあります。
その場合は、後述する「再作成」を行うしかありません。
税理士や行政書士への問い合わせ
意外と忘れがちですが、最も手っ取り早く、かつ無料で解決できる可能性が高いのがこのルートです。
まさに「灯台下暗し」ですね。
会社設立の手続きを依頼した司法書士や行政書士、あるいは現在顧問契約を結んでいる税理士は、業務の記録として定款のコピーやPDFデータを保管している可能性が非常に高いです。
特に士業は、法律上の義務や、万が一の訴訟リスクに備えて、依頼者の重要書類を長期間(場合によっては10年以上)保存する慣習があります。
問い合わせの際のポイント
「先生、ご無沙汰しております。実は定款を紛失してしまいまして…
設立時のデータやコピーが残っていないでしょうか?」と率直に聞いてみましょう。
もし当時の先生と連絡がつかない、あるいは廃業されているといった場合でも、その事務所を引き継いだ後任の先生がデータを管理していることもあります。
また、税理士であれば、毎年の税務申告で「法人税申告書」を作成する際、基礎資料として定款を確認しているはずなので、高確率で控えを持っています。
自分で役所を回り始める前に、まずは関係した専門家に一本電話やメールを入れてみることを強くおすすめします。
あっさりと「ああ、ありますよ。メールで送りますね」と解決することも珍しくありません。
税務署への開示請求で定款を確認する
公証役場もダメ、法務局も期間切れ、専門家とも連絡がつかない…。
そんな時の隠れた探索ルートとして「税務署」があります。
会社を設立した直後、管轄の税務署に対して「法人設立届出書」を提出したはずです。
この届出書には、必ず「定款の写し」を添付することになっています。
保有個人情報開示請求の活用
税務署に対して「保有個人情報開示請求」を行うことで、過去に提出した書類の開示を求めることができます。
法人の代表者であれば、自己の情報として請求が可能です。
- 請求先:設立届を提出した税務署(の管理運営部門など)
- 手続き:「保有個人情報開示請求書」を提出。本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証)と、法人の代表者であることを証明する書類(発行から30日以内の登記事項証明書など)が必要です。
- 費用:行政文書1件につき300円(収入印紙)。
注意ポイント
最大のデメリットは「時間」
この方法は確実性は高いものの、非常に時間がかかります。開示決定の通知が届くまで、原則として30日以内とされています。さらにそこから実際に文書を受け取るまでに数日かかります。
「来週までに銀行に提出したい」というようなスピード感が求められる場面では、残念ながら現実的な解決策にはなりません。時間に余裕がある場合の最終手段として覚えておいてください。
(出典:国税庁『開示請求等の手続』)
定款紛失を解決する再作成の手順
あらゆる場所を探しても見つからない。
あるいは、見つかった原始定款があまりにも古すぎて、現在の会社の実態と全く合っていない。そんな場合でも、決して諦める必要はありません。
会社法には「定款がなくなったら会社が終わる」なんて規定はありません。
定款が見当たらないなら、「新しく作り直して、それを法的に正当なものにする」という手続きが認められています。
これを実務上「定款の再作成」や「復元」と呼びます。これは単なる書類作成ではなく、会社のルールを再定義する前向きなアクションです。
再発行できない場合は再作成で対応
誰も持っていないなら、会社自身が責任を持って再定義するしかありません。
これは「紛失した過去のものを探す」のではなく、「現在の会社のルールを改めて制定する」という手続きになります。
再作成の具体的なステップ
まず、手元に何もない状態から定款案(ドラフト)を作成します。
この時、適当に作るのではなく、以下の手順で整合性を取ります。
- 登記事項証明書(登記簿)を取得する:法務局で最新の「履歴事項全部証明書」を取得します。これが再作成の基礎データになります。
- 絶対的記載事項を転記する:登記簿に記載されている「商号」「目的」「本店所在地」「発行可能株式総数」「公告方法」などは、一言一句間違えずに定款案に転記します。ここがズレていると、定款として無効になってしまいます。
- 機関設計を反映する:取締役会設置会社なのか、監査役設置会社なのか、株式の譲渡制限はあるのかなど、登記簿に書かれている機関設計をそのまま定款の条文に落とし込みます。
- 任意的記載事項を決める:事業年度(決算月)や、定時株主総会の招集時期(毎事業年度終了後3ヶ月以内など)、株主総会の議長など、登記されていない事項については、会社の実態や過去の慣習に合わせて条文を作成します。
株主総会議事録の雛形と記載事項
勝手にWordで定款のような書類を作っただけでは、それは単なる「私文書(メモ書き)」に過ぎず、法的な効力を持ちません。
これを会社の公式な定款として対外的に認めてもらうためには、株主総会での決議が必要です。
つまり、「定款がない状態」を解消するために株主総会を開き、「紛失してしまったので、この新しい定款を当社の現行定款として制定します」という決議を行うのです。
「具体的にどう書けばいいのかわからない」という方のために、実務でそのまま使える議事録のテンプレートを2パターンご用意しました。
会社の状況に合わせて、使いやすい方をコピーしてご使用ください。
パターン1:実際に集まって開催する場合(通常開催)
役員や株主が会議室などに集まって開催する、一般的なスタイルです。
臨時株主総会議事録
1. 開催日時
令和〇年〇月〇日 午前〇時〇分から午前〇時〇分まで
2. 開催場所
〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号
当会社 本店会議室
3. 株主の出席状況
株主総数 〇名
発行済株式総数 〇株
議決権を有する株主数 〇名
その議決権の総数 〇個
出席株主数 〇名
その議決権の総数 〇個
4. 議長
代表取締役 〇〇 〇〇
5. 決議事項
第1号議案 定款変更の件
議長は、選任されて席につき、開会を宣したのち、本総会は定款の規定通り適法に成立した旨を告げ、直ちに議事に入った。
議長は、当会社の現行定款について、原本の紛失等によりその内容の詳細が不明確となっている現状を説明した。つきましては、今後の会社運営の安定及び明確化を図るため、現行の定款を廃止し、本日提出の「別紙定款案」の通り、定款の全文を新たに変更(制定)したい旨を述べ、その承認を求めた。
議長がその賛否を議場に諮ったところ、出席株主の満場一致をもってこれに賛成した。
よって、本議案は原案どおり承認可決された。
以上をもって本日の議事を終了したので、議長は午前〇時〇分閉会を宣した。
上記の決議を明確にするため、この議事録を作成し、議長及び出席取締役がこれに記名押印する。
令和〇年〇月〇日
〇〇株式会社 臨時株主総会
議長・代表取締役 〇〇 〇〇 ㊞
出席取締役 〇〇 〇〇 ㊞
パターン2:書面決議で行う場合(みなし決議)
実際に集まるのが手間な場合や、株主が少数の場合はこちらが便利です。
「株主全員の同意書」があれば、総会を開催したとみなすことができます(会社法第319条)。
臨時株主総会議事録(みなし決議)
1. 決議があったものとみなされた事項の内容
第1号議案 定款変更の件
現行定款を廃止し、別紙定款案の通り定款の全文を変更する。
2. 決議があったものとみなされた日
令和〇年〇月〇日
(※株主全員の同意書が会社に到着した日、または最後の一人が同意した日)
3. 提案をした取締役の氏名
代表取締役 〇〇 〇〇
4. 決議があったものとみなされた理由
取締役 〇〇 〇〇 が株主総会の目的である事項(上記第1号議案)について提案をしたところ、議決権を行使することができる株主の全員から、書面(または電磁的記録)により同意の意思表示があったため、会社法第319条第1項の規定により、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなされたからである。
5. 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
代表取締役 〇〇 〇〇
上記の通り、株主総会の決議があったものとみなされたので、会社法第318条第1項の規定により、本議事録を作成する。
令和〇年〇月〇日
〇〇株式会社
代表取締役 〇〇 〇〇 ㊞
⚠️ 作成時の重要ポイント
- 「別紙定款案」を合綴する:議事録の後ろに、今回新しく作成した定款をホッチキスで留め、ページのつなぎ目に会社実印で契印(割印)を押してください。これで「議事録+定款」がセットの原本となります。
- 押印について:銀行提出用であれば、議事録への押印は「会社実印(法務局届出印)」を使用するのが最も確実です。
定款変更決議で法的な効力を持たせる
定款の変更(実質的な制定)は、会社法における重要事項であるため、通常の決議よりも厳格な「特別決議」が必要です。
特別決議の要件
- 定足数(ていそくすう):議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席すること。
- 決議要件:出席した当該株主の議決権の3分の2以上の賛成があること。
みなし決議(書面決議)の活用
中小企業で、株主が社長一人だけ、あるいは親族数名だけといった場合、実際に会議室に集まって総会を開くのは手間ですよね。
そのような場合は、会社法第319条に基づく「みなし決議(書面決議)」を活用するのが便利です。
これは、株主全員が書面(またはメール等)で提案に同意した場合、株主総会の決議があったものとみなす制度です。
「株主全員の同意書」を作成すれば、実際に集まらなくても法的に有効な決議となります。
最終的に、「再作成した新しい定款」+「それを承認した株主総会議事録」の2点セットを保管しておくことで、銀行や役所に対しても「これが当社の正当な現行定款です」と胸を張って提出できるようになります。
許認可申請での定款提出の注意点
建設業許可、宅建業免許、産業廃棄物処理業許可などの許認可申請において、定款の写しは必須の添付書類です。
ここで、再作成した定款を提出する場合の注意点として、「原本証明」の書き方があります。
行政庁はコピーを受け取る際、「このコピーは本物ですか?改ざんされていませんか?」という点を確認するため、会社代表者による証明を求めてきます。これを原本証明と言います。
原本証明の実務
定款の末尾(余白部分や裏表紙)に、以下のように赤ペンや黒ペンで記載し、代表者印(会社の実印)を押印します。
この写しは、原本と相違ありません。
令和〇年〇月〇日
〇〇株式会社
代表取締役 〇〇 〇〇 [代表者印]
再作成の手順(株主総会決議)をしっかりと踏んでいれば、その定款は会社が公式に認めた原本となりますので、代表者が責任を持って原本証明を行うことができます。
堂々と手続きを進めて大丈夫ですよ。
電子定款化で今後の管理リスクを回避
今回のような「紛失」トラブルを経験された経営者様にこそ、強くおすすめしたいのが、再作成を機に定款を「電子定款」にしておくことです。
従来の紙の定款は、金庫に入れていても湿気で劣化したり、オフィスの移転時に紛れ込んだり、火災や水害で消失するリスクが常にあります。
しかし、定款をPDFデータ化し、電子署名を付与して「電子定款」として管理すれば、以下のようなメリットがあります。
電子定款のメリット
- 紛失リスクほぼゼロ:クラウドストレージ(Google Drive、Dropboxなど)、自社サーバー、顧問税理士への共有など、複数の場所にバックアップを取ることが容易です。
- 検索性が高い:PDFならキーワード検索ができるので、「取締役の任期はどうなってたっけ?」といった確認が一瞬で終わります。
- 印紙代の節約(設立時):会社設立時に作成する原始定款の場合、紙だと4万円の収入印紙が必要ですが、電子定款なら0円です。(※今回のような「現行定款の再作成」には、そもそも紙であっても印紙は不要ですが、知識として知っておくと損はありません)
デジタルデータとして管理し、定款変更があるたびにWordファイルを更新してPDF化し、変更履歴(議事録)とともにフォルダに保存していく。これが、DX時代のスマートで安全な企業ガバナンスのあり方と言えるでしょう。
📢 【実録】融資直前に定款紛失が発覚した事例
「本当に再作成で銀行の審査に通るの?」と不安な方は、実際に当事務所でサポートし、最短1日で融資実行まで漕ぎ着けたA社様(建設業)の解決事例をご覧ください。
まとめ:定款紛失の解決策と選び方
定款が見当たらない時は、焦らずに以下のフローチャートに沿って行動してみてください。
【定款探索&解決フローチャート】
- まずは専門家(税理士・司法書士)へ連絡(一番楽でコストもかからない。まずはここから!)
- 設立20年以内なら公証役場へ照会(原始定款を確実にゲットできる。管轄の役場を調べるのが鍵。)
- 設立5年以内なら法務局で閲覧(閲覧・撮影で内容を確認できるチャンス。)
- それでもなければ「再作成」&「株主総会決議」(今の実態に合わせた最新の定款を作る。これが最強の解決策。)
「再発行できない=会社が終わる」ではありません。
むしろ、古い定款の内容を見直して、今の会社の実態に合ったルール(定款)を整備し直す良い機会だとポジティブに捉えましょう。
【行政書士 小野馨からのお知らせ】
「定款を作り直したいけど、記載内容に自信がない」「銀行の手続き期限が迫っていて、一刻も早く定款が必要」という経営者様へ。
当事務所では、紛失した定款の復元・再作成から、将来を見据えた電子定款化までをワンストップでフルサポートしています。法的な整合性チェックはもちろん、スピーディーな対応であなたのビジネスを止めません。また、面倒な株主総会議事録の作成も代行いたします。
会社設立や電子定款認証のスペシャリスト!開業17年・年間実績500件以上。実は、電子定款の制度ができた10年以上前から電子定款認証の業務を行なっているパイオニアです!他との違いは、まず定款の完成度!内容はモデル定款のモデルと言われ全国数百箇所の公証人の目が入っている優れもの!そして電子署名はまるでサインのようなかっこいい電子署名です!その電子定款であなたの大切な会社設立を真心込めて応援します!
