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銀行審査に通る!定款の目的の書き方と事業目的の具体例を解説

銀行審査に通る!定款の目的の書き方と事業目的の具体例

行政書士 小野馨

こんにちは。行政書士の小野馨です。

今回は「銀行審査に通る!定款の目的の書き方と事業目的の具体例」というテーマで解説します!

銀行口座を作るための肝になる大切なお話です。

これから会社を作ろうとしているあなたが一番悩むのが、定款の目的の書き方ではないでしょうか。

事業目的の例をネットで検索しても情報が多すぎて、自分のビジネスに合った書き方がどれなのか迷ってしまいますよね。

実は、この目的の書き方を間違えると、法務局での登記は通っても、その後の銀行口座の開設で審査に落ちてしまうことがあるのです。

変更手続きには安くない費用もかかりますから、最初が肝心なんですね。

知っておいた方が絶対得なので、最後まで必ずご覧くださいね。

  • 銀行口座の開設審査で重視される事業目的のポイント
  • 許認可が必要な業種で絶対に外してはいけないキーワード
  • そのまま使える主要業種の事業目的テンプレート
  • 後から目的を変更する際にかかる費用と手続きの流れ

銀行審査を通す定款の目的の書き方と重要ポイント

会社設立において、定款は単なる書類ではなく「会社の憲法」です。

特に「目的」の項目は、あなたの会社が何をして、何をしてはいけないかを社会的に宣言する重要な部分なんですよ。

多くの起業家の方が、「登記さえ通ればそれでOK」と考えてしまいがちですが、それは大きな間違いです。

注意ポイント

登記はあくまで「法人格を作る」手続きに過ぎません。会社として実際に活動するためには、銀行口座を作り、取引先と契約し、必要な許認可を取らなければなりませんよね。

そのための定款にするために書き方をちゃんと考えないといけません。

ここでは、法務局の審査だけでなく、その後の「ビジネスがスムーズに始められるか」という実務的な視点で、書き方の基本を徹底的に解説しますね。

銀行口座開設における事業目的の審査基準

会社を作った後に最初にぶつかる壁が、法人口座の開設です。

ひと昔前であれば、会社を作ればすぐに口座も作れましたが、最近はマネーロンダリング対策やテロ資金供与対策(AML/CFT)の国際的な要請を受けて、銀行の審査が非常に厳しくなっています。

銀行員は、あなたが提出した定款の「目的」を見て、この会社が実体のあるちゃんとしたビジネスをするのかどうか、犯罪に利用されるリスクはないかを入念にチェックしています。

具体的には、審査担当者は以下の3つのポイントを深掘りしています。

銀行が見ている3つのポイント

  • 事業の実体性(Substance):「具体的に何をして稼ぐのか」が明確かどうかです。例えば、「コンサルティング業」とだけ書かれていても、どんな分野のコンサルなのか分かりませんよね。ウェブサイトや事業計画書と照らし合わせて、本当にその事業を行う準備ができているかが見られます。
  • 一貫性(Consistency):資本金の額、本店の所在地、代表者の経歴と、事業目的が矛盾していないかです。例えば、資本金が10万円で、自宅が本店なのに「発電所の建設及び運営」と書かれていたら、「本当にできるの?」と疑われますよね。
  • 適法性(Legality):怪しいビジネスや違法な事業が含まれていないかです。特に、「資金移動業」や「投資助言業」など、本来は登録が必要な金融ビジネスを想起させる文言が入っていると、ライセンスの有無を厳しく問われます。

特に、最近増えているのが「事業目的の書きすぎ」による審査落ちです。

資本金が少ないのに「宇宙ロケットの開発」「銀行業」「医薬品の製造」など、脈絡のない高リスク事業や許認可事業が羅列している定款があります。

このような定款をみると、銀行側は「事業の実体がないペーパーカンパニーではないか」「口座を売買する目的ではないか」という疑念を抱きます。

金融庁も各金融機関に対し、法人口座の開設時の確認を厳格化するよう求めています。

(出典:金融庁『マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン』)

注意ポイント

また、「ほんとにこれ全部できると思ってるの?夢見てるんじゃない」って経営者としての資質も疑われます

登記ができることと、銀行が信用してくれることは別問題だということを、まずは肝に銘じておきましょう。

許認可が必要な事業目的の注意点

ビジネスの中には、役所の許可がないと始められないものがあります。

建設業、不動産業(宅建業)、人材派遣、リサイクルショップ(古物商)、産業廃棄物収集運搬業などが代表的ですね。

これらの事業を行う場合、定款の目的に「特定のキーワード」が一字一句正確に入っていないと、許可が下りないという厳しいルールもあります。

行政庁の担当者は、法令に基づいた正しい用語が使われているかを形式的に審査するため、「似たような意味だからいいだろう」という理屈は通用しません。

よくあるNG例と正解

  • × リフォーム業→ これでは建設業許可が取れません。500万円以上の工事を請け負う可能性があるなら、必ず「内装仕上工事業」や「建築工事業」といった、建設業法上の正しい業種名を入れる必要があります。
  • × 人材派遣、人材紹介→ これも曖昧です。許可申請においては「労働者派遣事業法に基づく労働者派遣事業」や「有料職業紹介事業」と、根拠法を含めて明記することが求められます。
  • × 中古品の売買→ 古物商許可を取る場合、警察署の担当者によっては「古物営業法に基づく〜」という枕詞を求めることがあります。最も無難なのは「古物営業法に基づく古物商」という記載です。

もし、事前調査なく定款の記載が不十分なまま会社を設立してしまうとどうなるでしょうか?

許認可の申請窓口に行った際に、「この定款では許可が出せません。目的を変更して、登記を直してから出直してください」と門前払いを食らってしまいます。

そうなると、

  • 定款変更のための株主総会を開き
  • 法務局で変更登記申請を行い
  • 登録免許税3万円を再度支払う…

という、時間もお金も非常にもったいないことになります。

許認可が必要なビジネスを考えているなら、設立手続きに入る前に、必ず管轄の役所(都道府県庁の担当課など)の手引きを確認しましょう。

それでも心配な時は許認可に詳しい行政書士に相談して、「一言一句間違いない文言」を入れるようにしてくださいね。

使える事業目的の例と並べ方のコツ

「将来やるかもしれないから」といって、思いつく限りの事業を羅列するのはおすすめしません。

注意ポイント

これを専門用語で「事業目的のデパート化」なんて呼んだりしますが、何屋さんなのか分からなくなってしまい、銀行の信用を落とす原因になります。

定款を見た人が「あ、この会社はこれをメインにやるんだな」と直感的に理解できる構成にすることが大切です。

私のおすすめする、スマートで戦略的な並べ方は以下の通りです。

戦略的な事業目的のチェックリスト

  • メインの事業(一番やりたいこと・収益の柱):最もアピールしたい事業を1番目に書きます。これにより、何をする会社なのかが一目瞭然になります。
  • メイン事業に直結する関連事業:例えば、ウェブ制作がメインなら、「ウェブサーバーのレンタル」や「インターネット広告代理業」など、一緒に受注しそうな業務を続けます。
  • 数年以内に確実に着手する予定の事業:今は準備中だけど、3年以内には必ずやるという事業があれば入れておきます。
  • (最後に)附帯関連する一切の事業:これについては後ほど詳しく解説します。

項目の数はどれくらいがいい?

一般的には10〜15項目程度に収めるのがスマートです。

「飲食店の経営」「ウェブサイトの制作」「不動産の売買」など、誰が見ても分かる言葉でリストアップしましょう。

逆に、30個も40個も並んでいると、「事業の焦点が定まっていない」「経営方針がブレている」と判断され、融資審査などでマイナスに働くこともあります。

附帯関連する一切の事業を入れる理由

定款の目的リストの一番最後には、必ず「前各号に附帯関連する一切の事業」(または「前各号に附帯する一切の業務」)という一文を入れます。

クライアント様から「これって意味あるの?」「書かなくてもいいんじゃない?」と聞かれることが多いのですが、実はものすごく重要で、絶対に外してはいけない条項なんです。

注意ポイント

会社法や民法には「法人は、定款で定められた目的の範囲内において、権利を有し義務を負う」という原則があります。

つまり、会社は原則として、定款に書かれた目的以外のことはできない(権利能力がない)とされているのです。

しかし、実際のビジネス現場ではどうでしょうか。

参考

例えば、製造業の会社が「従業員のために社宅を借りる」「余った資金で株を運用する」「取引先の依頼で、本業とは違う材料を仕入れて卸す」といった行為が必要になる場面は多々ありますよね。

もし「附帯関連する一切の事業」という一文がなかったら、これらの周辺業務を行うたびに「定款の目的外の行為ではないか?」という法的リスク(株主からの責任追及など)を負うことになってしまいます。

ポイント

この魔法の一文があるおかげで、メインの事業を遂行するために必要な補助的な行為や、派生する業務もすべて「目的の範囲内」として法的に正当化されるようになるのです。

経営の自由度を確保し、些細なことで定款違反にならないためにも、リストの最後には必ずこの一文を入れてくださいね。

明確性と具体性を確保する記述の秘訣

かつては登記の審査が非常に厳しく、「具体的に何をするのか分からない」「言葉が抽象的すぎる」という理由で、法務局から補正(修正)を命じられることがよくありました。

ポイント

しかし、現在は規制緩和により、かなり自由に書けるようになっています。

法務省の通達でも、目的の具体性については審査を要しないという運用に変わっています。

(出典:法務省『商業登記法等の一部を改正する法律の施行に伴う商業・法人登記の取扱いについて』)

だからといって、「商業」や「サービスの提供」といった極端に短い言葉だけで済ませていいわけではありません。登記は通っても、ビジネス上の信用が得られないからです。

参考

例えば、「商業」とだけ書かれた定款を見せられた銀行員は、「何を売るんですか? 危険ドラッグですか? 武器ですか?」と疑わざるを得ません。

これでは口座開設は絶望的です。

逆に、明確性と具体性を確保するためには、以下のようなテクニックを使うと効果的です。

バリューチェーンを網羅する書き方

単に「〇〇の販売」とするのではなく、そのビジネスに関わる一連の流れ(バリューチェーン)を記述します。

例:アプリ開発会社の場合

「スマートフォンのアプリケーション及びこれに関連するソフトウェアの企画、開発、制作、販売、保守、管理、運営及びコンサルティング」

このように、「企画」から「開発」、そして販売後の「保守」「運用」まで書いておくことで、ビジネスのフェーズが変わっても定款変更なしで対応できます。

ポイント

また、「コンサルティング」を入れておくことで、開発だけでなくアドバイザリー業務で収益を上げた際も、スムーズに請求書を発行できるようになります。

プロフェッショナルな印象を与え、かつ将来の業務拡大にも耐えうる書き方を意識しましょう。

定款の事業目的を変更する費用と手続き

会社設立後に「やっぱりこの事業もやりたい!」「新規事業にピボットしたい」となった場合、定款の目的は後からでも変更できます。

「なんだ、後で変えられるなら適当でいいや」と思いましたか? 実は、定款変更には決して安くないコストと手間がかかるんです。

株式会社の場合、以下のような厳格な手続きが必要になります。

定款変更の流れ

  • 株主総会の開催:定款変更は重要事項なので、「特別決議」(議決権の3分の2以上の賛成)が必要です。
  • 株主総会議事録の作成:いつ、どこで、誰が集まり、どのような変更を決議したかを記録した書面を作り、会社の実印を押します。
  • 変更登記申請書の作成と申請:法務局へ提出する申請書を作成し、決議から2週間以内に申請します。

そして、気になる費用は以下の通りです。

費用の内訳金額の目安
登録免許税(法務局へ納める税金)30,000円(一律)
司法書士への報酬(依頼する場合)20,000円〜50,000円程度
その他実費(証明書取得など)数千円

目的をたった1つ追加するだけでも、あるいは誤字を1文字直すだけでも、一律で登録免許税が3万円かかります。これは資本金の額に関わらず固定です。

自分で手続きすれば3万円の実費だけで済みますが、書類作成の手間や法務局へ行く時間を考えると、司法書士に頼むのが一般的です。

そうなると、合計で5万円〜8万円近い出費になってしまいます。

設立直後に「あ、書き忘れた!」といって変更することにならないよう、最初の設計をしっかり行っておくことが、無駄な出費を抑える最大の節約術なんですよ。

実践的な定款の目的の書き方と業種別テンプレート

ここからは、実際にそのまま使えるレベルの実践的な文言を業種別にご紹介します。

ただし、時代によって流行り廃りや法改正がありますので、最終的にはご自身のビジネスモデルに合わせて調整してくださいね。

ネットショップやIT企業の記載実例

IT分野やEコマースは技術革新が速く、新しいビジネスモデルが次々と登場するため、ある程度「幅を持たせた記述」にしておくのが鉄則です。

あまりに具体的に「CD・DVDの販売」などと限定してしまうと、ストリーミング配信が主流になったときに定款変更が必要になってしまいます。

EC・物販・WEB系のおすすめ記載例

  • インターネットを利用した通信販売業これが最も汎用性が高い表現です。「衣料品の通信販売」と限定せず、単に「通信販売業」とすることで、取り扱う商品が変わっても対応できます。
  • 各種商品の企画、製造、販売及び輸出入「輸出入」という言葉を入れておくのがポイントです。将来的に海外から仕入れたり、越境ECで海外へ販売したりする可能性が少しでもあるなら、最初から入れておきましょう。
  • ウェブサイト、ウェブコンテンツ、デジタルコンテンツの企画、制作、販売、運営及び管理Web制作会社の場合、「制作」だけでなく「運営」「管理」も含めることで、月額の保守費用(ストック収入)を得る業務もカバーできます。
  • インターネットを利用した各種情報提供サービスポータルサイトの運営や、ニュース配信、ブログメディアの運営などに幅広く使える便利な表現です。
  • マーケティングリサーチ及び経営情報の調査、収集及び提供WebマーケティングやSEOコンサルティングを行う場合に適しています。

また、最近ではYouTubeやSNSでの発信をビジネスにするケースも増えていますね。

その場合は、「動画コンテンツの企画、制作、配信及び販売」「広告業及び広告代理店業」(アフィリエイト収入やAdSense収入のため)といった文言を追加しておくと、銀行への説明がスムーズになります。

建設業や不動産の許認可に対応する文言

前述の通り、許認可系は「正確さ」が命です。特に建設業と不動産業は、法律で定められた用語を一字一句間違わずに記載しないと、免許が下りない代表的な業種です。

ここを適当に書いてしまうと、いざ許可申請という段階になって「定款変更からやり直し」という最悪のケースに陥りますので、しっかり確認していきましょう。

注意ポイント

まず建設業ですが、建設業法に基づいて29種類の業種区分が厳格に定められています。ご自身が取得予定の許可に対応する正式名称を記載するのが鉄則です。

(出典:国土交通省『建設業の業種区分』)

グループ定款記載の推奨例(正式名称)具体的な工事内容
一式工事土木工事業、建築工事業大規模な造成工事やビルの建設など、総合的な工事。
内装・仕上げ内装仕上工事業、塗装工事業、屋根工事業リフォーム店や塗装店はここ。「リフォーム業」とは書かず「内装仕上工事業」と書くのがポイント。
設備電気工事業、管工事業、電気通信工事業エアコン設置や水道工事、LAN配線など。
外構・その他とび・土工工事業、タイル・れんが・ブロック工事業足場組み立てや、エクステリア(外構)工事など。

特に注意が必要なのが「リフォーム」です。

一般的に「リフォーム業」と名乗っていても、500万円以上の工事を請け負うために建設業許可を取る場合、業種としては「内装仕上工事業」「建築工事業」に該当するケースがほとんどです。

定款に「リフォーム業」としか書いていないと、行政庁の窓口で「具体的にどの工事ですか?」と突っ込まれ、補正を求められるリスクが高いですよ。

次に不動産業です。

アパートの仲介や土地の売買を行う場合、宅地建物取引業(宅建業)の免許が必要ですが、定款には必ず「宅地建物取引業」という文言を入れてください。

さらに、物件の管理や、買い取った物件をリノベーションして再販するような事業も行うなら、以下のようにセットで記載しておくのがベストです。

不動産業の鉄板テンプレート

  • 宅地建物取引業(これが免許申請に必須!)
  • 不動産の売買、交換、賃貸及びその仲介並びに所有、管理及び利用
  • 不動産に関するコンサルティング
  • 建築工事及び内装仕上工事の企画、設計、施工、監理及び請負(リノベ再販用)
  • 損害保険代理業(火災保険を扱う場合に必須)

「損害保険代理業」は見落としがちですが、不動産賃貸の契約時に火災保険も一緒に案内しますよね?

これを入れておかないと、保険代理店の登録ができないので注意してくださいね。

将来の展開を見据えた予備的記載のコツ

定款の目的を変更するにはコストがかかるという話をしましたが、だからといって「将来やるかもしれないこと」を無制限に詰め込めばいいというわけではありません。

大切なのはバランスです。

注意ポイント

「3年以内に着手する可能性があるか?」という基準で、現実的なラインを見極めるのがコツです。

例えば、「今はレディースのアパレルだけ販売しているけれど、将来はメンズや雑貨も扱うかも…」という場合。

この時に「婦人服の販売」と限定してしまうと、メンズを扱い始めた瞬間に定款違反(または変更が必要)になります。

この場合は、「衣料品、服飾雑貨の販売」と少し広げた表現にしておくのが正解です。

これなら、子供服を扱おうが、靴やバッグを扱おうが、「衣料品・服飾雑貨」の範囲内に収まりますからね。

また、ビジネスの転換(ピボット)を見越した記述も有効です。

コンサルティング業の方であれば、将来的にノウハウを体系化してスクール運営をする可能性があります。

その時に備えて、「人材育成のための教育、研修及び指導」「各種セミナー、講演会、イベント等の企画、開催及び運営」を入れておくと、スムーズに事業を多角化できます。

予備的記載の成功例:システム開発会社の場合

当初は受託開発のみだったが、将来的に自社サービス(SaaS)を作る予定がある。

「ソフトウェアの開発」だけでなく、「電気通信事業法に基づく電気通信事業」を入れておく。

※Webサービスの一部は電気通信事業の届出が必要になるケースがあるため、先回りして書いておくと手続きが楽になります。

注意ポイント

ただし、「農業」「風俗営業」「旅行業」など、今の事業と全く脈絡のない業種を予備的に入れるのはやめましょう。

特に「風俗営業」は気を付けてください。銀行に嫌煙されがちです。

銀行から「この会社、一体何がしたいの?」と経営方針を疑われる原因になります。

あくまで「今の事業の延長線上にあるもの」「強いシナジーがあるもの」に絞って記載するのが、賢い定款の書き方ですよ。

合同会社と株式会社の定款の違い

最後に、会社の形態(株式会社か合同会社か)による定款の扱いの違いについて触れておきます。

実は、定款の「目的」の重要性は、設立時のチェック体制が甘くなりがちな合同会社(LLC)でこそ、より意識する必要があります。

大きな違いは「公証人の認証」があるかどうかです。

項目株式会社合同会社(LLC)
定款の認証必要(公証役場)不要
第三者のチェック公証人が法的な不備や不明確な点を事前に修正してくれる。誰もチェックしないため、誤字や不適切な目的のまま登記申請まで行ってしまうリスクがある。
設立費用認証手数料など約5万円+登録免許税15万円〜認証不要で0円+登録免許税6万円(電子定款の場合)
目的変更の手続き株主総会の特別決議原則、総社員の同意

株式会社の場合、設立前に「公証人」という法律のプロが定款をチェックしてくれます。「この目的の書き方だと曖昧ですね」「誤字がありますよ」と指摘してくれるので、致命的なミスは事前に防げます。

一方、合同会社の場合は公証人の認証が不要です。

これは設立費用が安く済むし、スピーディーに会社を作れるという大きなメリットですが、裏を返せば「変な内容の定款でも、そのまま法務局へ申請できてしまう」ということでもあります。

法務局の登記官は「登記できるかどうか」は見ますが、「銀行口座が作れるか」「ビジネスとして適切か」までは見てくれません。

その結果、合同会社を作った後に「銀行口座の審査に通らない!」「許認可が取れない!」というトラブルに直面するのは、実は合同会社の方が多いのです。

また、設立後に目的を変更する場合、株式会社なら多数決(特別決議)で決められますが、合同会社は定款に別段の定めがない限り、原則として「総社員の同意」が必要です。

もし共同経営者がいて、仲違いしてしまった場合、相手が一人でも反対すれば定款変更すらできなくなる(デッドロックに陥る)リスクがある点も覚えておいてください。

定款の目的の書き方で失敗しないための総括

ここまで、定款の目的の書き方について、銀行審査や許認可、将来のリスク管理といった視点から解説してきました。

定款は、一度登記してしまうと簡単には変えられません。

そして、その記載内容は、銀行、取引先、役所といった対外的なステークホルダーが、あなたの会社を信用するかどうかを判断するための「顔」そのものです。

「ネットに落ちていたひな形をそのままコピペしました」

「とりあえず思いついたものを全部書きました」

これでは、せっかくの起業のスタートダッシュで躓いてしまう可能性があります。

  • あなたのビジネスの実態に合っているか?
  • 将来の展開を阻害しないか?
  • 銀行から見て怪しくないか?

もう一度、これらの視点でご自身の定款案を見直してみてください。

もし、「自分のビジネスモデルだと、具体的にどう書くのが正解か分からない」「許認可が絡むので不安だ」という場合は、設立手続きを行う前に、私のような行政書士や司法書士などの専門家に相談することを強くお勧めします。

最初の手間とわずかな相談料を惜しまないことが、結果として無駄な出費を防ぎ、息の長い強い会社を作るための最短ルートになりますよ。

※本記事の情報は執筆時点の法令や一般的な実務慣行に基づいています。個別の許認可要件や金融機関の審査基準は変更される可能性があるため、最終的な判断は必ず管轄の行政庁や専門家にご確認ください。

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