
会社設立は「ゴール」ではなく、許認可への「スタート」である
「会社登記が完了しました!これで事業が始められます!」
……本当にそうでしょうか?
建設業、不動産、運送業、リサイクル業。
行政の「許認可」が必要なビジネスにおいて、会社設立(登記完了)はゴールではありません。
むしろ、そこから始まる厳しい審査の「スタートライン」に立ったに過ぎません。
私は行政書士として、これまでに5000件以上の会社設立・許認可に携わってきましたが、残念ながら以下のような相談が後を絶ちません。
「許可を申請しようとしたら、定款の目的が間違っていると言われた」
「資本金が足りず、増資の手続きで余計な費用がかかった」
「役員の経歴が要件を満たしておらず、申請が受理されなかった」
注意ポイント
これらはすべて、「許認可や法人口座、助成金や融資ことを見据えずに、ネットの雛形でとりあえず定款を作ってしまったこと」が原因です。
後から定款を修正するには、登録免許税(3万円)や専門家報酬など、本来払う必要のなかったコストが発生します。
このページでは、これから起業される方に向けて、業種ごとの「定款作成・会社設立の必須戦略」を網羅しました。
ご自身が予定しているビジネスの項目をチェックし、設立時の落とし穴を回避してください。
【総論】全業種共通!許認可定款の「7つの鉄則」
細かい業種別の話に入る前に、すべての許認可ビジネスに共通する「絶対に守るべき7つの戦略的判断」をお伝えします。
これらはすべて、会社設立後の「修正」が難しい、あるいはコストがかかる項目です。
鉄則1:事業目的は「未来予想図」で書く
定款の「事業目的」は、許認可審査の門番です。
「魔法の言葉」を入れる: 介護なら「介護保険法に基づく〜」、中古車なら「古物営業法に基づく〜」など、業種ごとに必須の法律用語があります。担当によっては、これがないと申請は受理されません。
3年先まで網羅する: 将来やるかもしれない事業も書いておきましょう。後から1行追加するだけで、登録免許税が3万円かかります。ただ、必要のないものは入れないようにしましょう。
鉄則2:資本金は「許認可要件」から逆算する
「消費税免税(1000万円未満)」などの節税策だけで資本金を決めるのは危険です。
500万円の壁: 建設業許可など、多くの許認可で「自己資本500万円以上」が求められます。
見せ金はNG: 設立時であれば資本金として証明しやすいですが、後から増資するのは手続きが煩雑です。
鉄則3:役員人事は「資格・経験」でパズルする
許認可には「ヒトの要件」と「欠格事由」があります。
要件を満たす人を役員に: 建設業の「経営業務の管理責任者」など、特定の経験者を常勤役員(取締役)にする必要があります。
- リスク管理: 過去に禁固刑以上の刑を受けていないか? 破産手続き中ではないか?もし役員の中に一人でも「欠格事由」に該当する人がいると、その会社は許可を取れません。仲良し人事で作った会社は、ここで詰みます。
鉄則4:本店所在地は「実体」が命
定款に記載する「本店所在地」の場所選びは慎重に行う必要があります。
バーチャルオフィスの罠: 建設業、宅建業、古物商など、多くの許認可では「独立した実体のある事務所」が必要です。格安のバーチャルオフィスで登記してしまうと、**「会社はあるのに許可が取れない」**事態になり、移転登記(費用3〜6万円)が必要になります。
用途地域: 運送業などでは、市街化調整区域に営業所を置けないケースがあります。
▼ 契約前に必ず確認してください
鉄則5:事業年度は「繁忙期」と「更新時期」を避ける
決算期(事業年度)をいつにするかは、許認可の維持管理に直結します。
更新時期との重複: 建設業許可などは5年に一度の更新があります。決算月と更新手続きが重なると、税理士と行政書士への書類依頼が集中し、現場がパニックになります。
毎年の決算届: 建設業は毎年「決算変更届」が必要です。本業の繁忙期と決算作業が重ならないよう、戦略的に時期をずらすのがプロの知恵です。
鉄則6:任期は「10年」が正解とは限らない
最近の株式会社は、役員の任期を最長10年まで伸長できますが、許認可会社は注意が必要です。
解任のリスク: もし役員が不祥事を起こしたり、要件を満たさなくなった場合、任期が長いと解任するのが難しくなります(損害賠償リスクなど)。
あえて短くする戦略: 組織の流動性が高い場合は、あえて2年程度にしておくのもリスク管理の一つです。
▼ 任期の決め方に迷ったら必ず確認してください
鉄則7:公告の方法は「官報」が無難
定款の最後にある「公告の方法」。適当に決めていませんか?
建設業の義務: 建設業許可業者は、決算内容を公表する義務があります。
電子公告の落とし穴: 「電子公告」を選ぶと、URLの登記や調査機関への依頼など、逆にコストと手間がかかる場合があります。多くの許認可業者にとっては、伝統的な「官報」を選択しておくのが、結果的に管理コストを安く抑えられます。
【各論】業種別の会社設立・定款作成の注意点の「急所」一覧
ここからは、代表的な許認可ビジネスごとの「定款作成の急所」を解説します。
より詳細な戦略については、各詳細ページをご覧ください。
1. 建設業許可【人気No.1】
建設業は最も相談が多い分野です。「とりあえず建築工事」と書くだけでは不十分なケースが大半です。
ここが急所:
建設業許可には「29業種」の区分があります。自分が取りたい許可に対応する具体的な文言が入っていますか?
資本金500万円の要件を、設立時にクリアしておくメリットとは?
- 詳細な戦略はこちら:[▶ 建設業許可を見据えた会社設立「3つの戦略」を読む]
2. 古物商許可(リサイクル・せどり)
Amazon転売、中古車販売、リサイクルショップを行う場合に必要です。
ここが急所:
管轄警察署のローカルルールが激しいのが特徴です。「古物営業法に基づく古物商」という文言を入れるべきか、扱う品目(衣類、自動車、機械工具など)を具体的に書くべきか、警察署によって指導が異なります。
設立前に、管轄警察署の生活安全課へ事前確認するのが最も確実な戦略です。
3. 宅建業(不動産免許)
不動産の売買・仲介を行う場合に必要です。
ここが急所:
定款には「宅地建物取引業」の記載が必須です。
**最大の落とし穴は「事務所」です。自宅兼事務所やバーチャルオフィスで会社登記をしてしまうと、宅建業の事務所要件(独立性)を満たせず、「会社はできたけど免許が下りないから引越し(本店移転登記)」**という最悪の事態になります。
4. 運送業(一般貨物・軽貨物)
トラック運送や軽貨物ドライバーとして独立する場合です。
ここが急所:
「貨物自動車運送事業」「貨物利用運送事業」など、法律に則った正確な記載が必要です。
こちらも不動産同様、「車庫・営業所」の場所選びが会社設立(本店所在地)と直結します。市街化調整区域などに本店を置くと、許可が取れないリスクがあります。
5. 障害福祉・介護事業
放課後等デイサービス、訪問介護、就労継続支援などです。
ここが急所:
行政のチェックが最も厳しい分野の一つです。定款の事業目的は、指定権者(都道府県や市町村)が公表している**「記載例」を一言一句間違えずに書き写す**必要があります。
独自の言葉でかっこよく書こうとすると、ほぼ100%修正を命じられます。
個人事業主の法人化(マイクロ法人)における事業目的の記載テクニック
最近、個人事業主の方が社会保険料の削減や節税を目的として、一人社長の会社(いわゆるマイクロ法人)を設立するケースが増えています。
この際、定款の「事業目的」の書き方には特段の注意が必要です。
注意ポイント
なぜなら、「個人の事業」と「法人の事業」が定款上で明確に使い分けられていないと、税務署から事業の実態を否認されたり、社会保険の加入がスムーズにいかなかったりするリスクがあるからです。
特に、許認可が必要なビジネスを法人に移す場合や、あえて許認可不要なビジネス(資産管理やコンサルティングなど)のみを法人で行う場合など、戦略に応じた定款作成が求められます。
個人事業主がマイクロ法人を活用する具体的なメリットや、失敗しないための「二刀流」の仕組みについては、以下の記事で徹底解説しています。
定款を作る前に、まずは全体像を把握しておきましょう。
▼個人事業主・フリーランスの方はこちらも必読
会社員のマイクロ法人 社会保険料と副業バレを防ぐ最適解 >
※会社員向けの記事ですが、個人事業主がマイクロ法人を持つ際のリスク管理やコスト感覚についても詳しく解説しています。
【コラム】許認可コストを捻出するために「電子定款」は必須
許認可の取得には、申請手数料や要件を整えるためにお金がかかります。だからこそ、設立費用は1円でも抑えるべきです。
ご自身で「紙」の定款を作ると、印紙税が4万円かかります。
しかし、当事務所が提供する**「電子定款」であれば、この印紙税4万円が0円になります。**
戦略的な定款設計(3万円の損を回避)
電子定款による作成(4万円のコストカット)
この2つを組み合わせることで、実質7万円分、有利なスタートを切ることができます。浮いたお金を、許認可取得のための準備金に回してください。
【比較表】プロに頼むとこれだけ違う!
| 項目 | プロ(当事務所)に依頼した場合 | 自分で適当に作った場合 |
| 定款の品質 | 7つの鉄則を守った戦略的定款 | ネットの雛形(リスク大) |
| 許認可審査 | スムーズに通過 | 目的変更などの手直し発生 |
| 定款印紙代 | 0円(電子定款) | 40,000円(紙の場合) |
| 修正コスト | 0円 | 30,000円(登録免許税)〜 |
| 結果 | 最短・最安で許可へ | 時間とお金のムダが発生 |
よくある質問(FAQ)
Q. 許認可を取る予定は数年先ですが、今から定款に入れておくべきですか?
A. はい、絶対に入れておくべきです。「やるかもしれない事業」を入れておいても、実際にやらなければ問題はありません。逆に、後から追加するには3万円のコストと手間がかかるため、設立時に網羅しておくのが賢い戦略です。
Q. ネットの雛形で「全商務」と書けば何でもできると聞きましたが?
A. それは昔の話、あるいは許認可不要の会社の話です。建設業や宅建業など、許認可が必要な業種では「具体性」が求められるため、「全商務」や「その他一切の事業」といった曖昧な表現だけでは、許可が下りない可能性が高いです。
まとめ:5000件の経験から導く「最強の定款」とは
最強の定款とは、難しい言葉が並んだ定款ではありません。
**「将来のビジネス(許認可)を邪魔せず、スムーズに審査を通過させてくれる定款」**こそが、創業者にとって最強の定款です。
当事務所は、電子定款作成の専門家であると同時に、数多くの許認可申請を通してきた実績があります。
「この事業内容で、この定款で大丈夫かな?」と不安な方は、作成前にぜひ一度ご相談ください。
▼ あなたのビジネスモデルに最適な定款を作成します
[電子定款作成サービスの詳細・ご依頼はこちら]▼ 建設業許可の取得をお考えの方へ
[▶ 建設業許可の専門記事(詳細版)をチェックする]会社設立や電子定款認証のスペシャリスト!開業17年・年間実績500件以上。実は、電子定款の制度ができた10年以上前から電子定款認証の業務を行なっているパイオニアです!他との違いは、まず定款の完成度!内容はモデル定款のモデルと言われ全国数百箇所の公証人の目が入っている優れもの!そして電子署名はまるでサインのようなかっこいい電子署名です!その電子定款であなたの大切な会社設立を真心込めて応援します!
