会社解散・清算

会社を休業・休眠するか、解散するか|維持費・届出・再開の違い

会社を休業するか解散するか、維持費・届出・再開を比較する記事の表紙。

会社の売上が止まり、当面は事業を休みたい。けれども、また同じ会社で再開する可能性がある。そんなときは、解散の手続きを始める前に、会社を残す間の負担を確認しましょう。

休業・休眠をしても会社は残り、申告・登記・契約などの管理が続きます。一方、解散を選んでも、その日に会社の財産や借入れがなくなるわけではありません。清算を終えるまでの手続きと資金が必要です。

この記事では、まだ解散を決めていない株式会社・合同会社の経営者に向けて、休業中の維持費、届出、再開時の確認を整理します。税務や社会保険の個別の扱いは、会社の実態と所在地を伝えて各窓口・専門家へ確認してください。

休業・解散の前に、再開の見込み、残る負担、管理する人を整理する図。支払不能が疑われる場合は先に弁護士へ相談する。

休業・休眠と、解散・清算の違い

一般に「休業」「休眠」と呼ぶのは、会社を残したまま事業活動を休止する状態です。税務署などへの届出をしただけで、法人格が消滅したり、すべての義務が止まったりする制度ではありません。

これに対し、通常の解散では事業を終えるための清算へ移ります。清算中も、会社は清算の目的の範囲で存続し、債権の回収、債務の支払い、残った財産の分配などを行います。

比較する点休業・休眠する解散して清算する
会社の状態会社を残して事業活動を休止する清算のために存続し、残務を整理する
費用と手間残す契約、税務・会計、必要な登記などの負担が続く登記・公告等の実費、清算中の管理費、専門家費用などが生じる
将来の事業同じ会社での再開を検討できる。届出・許認可・加入資格は再確認する継続できる場合もあるが条件がある。休業からの再開と同じ扱いではない
借入れ・未払金休業によって消えない解散によって消えない。清算で処理する

根拠:会社法475条・476条・481条、644条・645条・649条。会社を継続できる条件は、解散原因や会社の種類によって異なります。

なお、会社法の「休眠会社」は別の意味です。最後の登記から12年を経過した株式会社(特例有限会社を除く)を指し、官報公告後の対応によっては「みなし解散」の対象になります。税務署へ休業の届出をした会社だけを指す言葉ではありません(会社法472条、会社法整備法32条)。

先に考えるのは、再開の見込みと残すための負担

休業を選びやすいのは、再開する事業や時期の見込みがあり、会社を残す間の費用・事務を引き受けられる場合です。売上が戻ることへの期待だけでなく、何をきっかけに再開するのか、いつ方針を見直すのかまで決めておきます。

反対に、再開する見込みがなく、会社の管理を続ける人もいない場合は、解散・清算に必要な費用を調べ、会社を終える準備を検討します。「今は解散費用を出したくない」という理由だけで残すと、その後の維持費や未処理の手続きが積み重なることがあります。

  • 再開したい事業と、その時期・条件は具体的か。
  • 休業中に残す資産・契約・許認可に、会社を維持する理由があるか。
  • 申告、郵便物、登記、支払いを管理する人と保管先を決められるか。
  • 休業中の支出と、再開準備に使う資金を確保できるか。

借入れや税金を支払えない状態なら、休業か解散かの比較より先に、資金繰りと法的対応の相談が必要です。会社を休ませても支払期限は止まりません。解散しても保証人の責任が当然になくなるわけではないため、返済・保証の内容を確認し、支払不能が疑われるときは弁護士へ相談してください。

口座、賃貸借、借入れ、債務超過を伴う会社の整理は、次の記事で詳しく確認できます。

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休業中に残る維持費を、項目ごとに確認する

休業中の固定費を見直すため、契約書類と電卓を並べたイメージ。

国税の申告は、売上がないことだけではなくならない

株式会社・合同会社では、休業中や赤字で納付すべき法人税がない場合でも、法人税の確定申告が必要です。原則の提出期限は、各事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。申告期限の延長の適用がある場合などは、自社の期限を確認します。

地方法人税の申告もあわせて確認します。「地方法人税」は国税であり、後述する自治体への法人住民税の手続きとは別です。記帳、決算、申告に誰が対応するのか、外部に依頼する場合は休業中の業務範囲と料金を見積もってもらいましょう。

また、2026年4月1日以後に開始する事業年度からは、各事業年度の所得に対する法人税を課される法人に、防衛特別法人税の確定申告が必要です。防衛特別法人税額が0でも申告は必要とされています。中間申告は2027年4月1日以後に開始する事業年度からの取扱いで、適用時期を分けて確認します。

根拠:国税庁「法人税のあらましと申告の手引」12〜13・18ページ、e-Tax「防衛特別法人税の創設に関するご案内・留意事項」。

消費税は、法人税と一律に扱いません。課税事業者か、休業前の売上や資産の売却があるか、還付を受ける内容があるかなどを確認します。

国税庁は、課税事業者でも、国内の課税資産の譲渡等と特定課税仕入れがなく、納付税額もない場合には確定申告義務がないと案内しています。この場合でも、課税仕入れに対する消費税額や中間納付額があれば還付申告ができるとされています。単に「休業した」「売上が減った」だけで、この条件に当てはめないでください。根拠:国税庁「納付税額がないときの確定申告」。

法人住民税の均等割は、所在地と事業の実態で確認する

「休業届を出せば、法人住民税が全国一律でかからなくなる」とは言えません。都道府県と市区町村で、届出、申告、均等割の扱いをそれぞれ確認します。複数の自治体に事務所等がある場合は、その所在地ごとに整理してください。

例えば神戸市は、法人登記を残したまま一切の事業活動を休止した状態を休業とし、法人市民税の異動届を案内しています。ただし、届出後も活動が確認された場合は課税されることがあり、休業中の均等割の扱いは地方団体によって異なると明記しています。

これは神戸市の法人市民税の例であり、兵庫県の法人県民税や、他の市町村にそのまま当てはめるものではありません。事務所の利用状況、役員・従業員の活動、取引の有無を伝えて確認しましょう。根拠:神戸市「法人市民税に関するQ&A」。

社会保険は、会社と本人の実態を分けて判断する

社会保険料を減らしたいからという理由で、休業の届出と同時に機械的に脱退できるわけではありません。日本年金機構の「適用事業所全喪届」は、廃止や休業等により、適用事業所に該当しなくなった場合の届出です。

役員が引き続き働いているか、報酬を受けているか、従業員の雇用が続くかを整理し、年金事務所または社会保険労務士へ確認します。会社の全喪届と、本人ごとの資格喪失・その後に加入する健康保険や年金の手続きも分けて確認してください。任意適用の取消しは別の手続きです。

根拠:日本年金機構「適用事業所が廃止、休止等により適用事業所に該当しなくなったとき」。役員報酬や働き方を変える場合の確認は、次の記事で詳しく整理しています。

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家賃・契約・管理費は、休業の届出だけでは止まらない

事務所の家賃、リース、通信、ソフトの利用料、保険、口座の維持手数料などは、各契約で休止・解約・変更が必要かを確認します。税務署に休業を届けても、契約相手に自動で通知されるわけではありません。

保有する不動産や車両、設備の税金・保険・維持管理費も拾います。会社の売上がないことだけで、保有資産に関する負担までなくなるとは限りません。

口座は、未入金の売掛金、還付金、税金や契約料の引落し、再開時の利用予定を確認してから、金融機関に取扱いを相談します。休業するからといって、会社の資金をすべて個人へ移したり、必要な口座を先に解約したりしないでください。

休業するときの届出と、休業中も続く管理

全国共通の「休眠届」1枚で、すべての役所の手続きが終わるわけではありません。休業日だけでなく、給与支払の終了日、従業員の退職日、事業所を閉じた日など、実際に起きた事実を分けて整理します。

確認先確認すること
税務署休業に関する異動届の記載、給与支払事務所や消費税に関係する届出の要否、休業中の申告。
都道府県・市区町村法人の休業・事務所等の異動、届出期限、必要資料、均等割と申告の扱い。
年金事務所・健康保険の加入先適用事業所に該当しなくなるか、全喪届・資格喪失届、本人と家族の加入先。
労働基準監督署・ハローワーク等雇用を続けるか、退職者がいるかに応じた労働保険・雇用保険の手続き。
許認可の所管行政庁休止・廃止の届出、許可の有効期間・更新、再開時の要件。

国税庁の「異動事項に関する届出」は、異動等の後、速やかに行う案内です。自治体の期限は別で、例えば神戸市では開設・異動から2か月以内を案内しています。適用事業所全喪届に該当する場合の提出時期は、事実発生から5日以内です。書類を全部そろえるまで各期限の確認を待たないようにしましょう。

参照:国税庁・異動事項に関する届出、神戸市・法人の届出、日本年金機構・適用事業所全喪届の手続き。

休業中も、株式会社の役員任期、登記事項の変更、会社に届く郵便物を確認します。事業をしていないことだけで、登記の義務がなくなるわけではありません。合同会社には株式会社と同じ取締役の任期制度はありませんが、本店や代表社員の住所などの変更は別に確認が必要です。

長期間登記していない株式会社は、会社法472条の整理対象になる場合があります。税務署への休業届を、法務局の「事業を廃止していない旨の届出」の代わりにはできません。一般的な変更登記の遅れと、届いた通知の確認方法は次の記事を参照してください。

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会社の変更登記を忘れたら|期限・過料と気づいた後の確認手順

行政書士 小野馨こんにちは! 行政書士の小野馨です。 会社の目的や住所を変えたのに、登記の手続きを忘れていた。役員の任期を見直していて、前回の登記から長い時間が経っていることに気づいた。 そんなときは ...

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帳簿、申告書と受付結果、定款・議事録、契約書、休業関係の届出控えは、担当者を決めて保管します。会計ソフト等を解約するときも、必要な記録を後から確認できる状態で残してください。

再開するときは、届出だけでなく事業の条件を確認する

休業中も会社が存続していれば、同じ会社で再開することを検討できます。ただし、税務署に再開を知らせるだけで、以前と同じ条件ですぐ営業できるとは限りません。

  1. 登記と定款を確認する。本店、事業目的、役員等の現状が合っているか、みなし解散になっていないかを確認する。
  2. 休業を届けた税務署・自治体に再開日と実態を伝え、必要な異動届・申告を確認する。
  3. 事業所と従業員・役員について、社会保険・労働保険等の適用や資格取得を確認する。
  4. 許可・登録の有効性、施設や人員の基準、再開届・新規申請の要否を所管行政庁へ確認する。
  5. 銀行口座、賃貸借、取引先との契約を確認し、再開前後の支払い資金を用意する。

再開により健康保険・厚生年金保険に加入すべき要件を満たす事業所では、適用手続きが必要です。新規適用届に該当する場合は、事実発生から5日以内の提出が案内されています。本人の資格取得等とあわせて確認してください。根拠:日本年金機構「新規適用の手続き」。

会社の事業を個人事業として続ける場合も、会社の資産、契約、許認可が自動的に個人へ移るわけではありません。移し方や相手方の同意、税務上の扱いを別に確認します。

会社を残す費用と、終える費用を並べて決める

まず、直近の決算書、資産・負債の一覧、毎月・毎年の契約費、定款と登記事項証明書をそろえます。そのうえで、「休業中に残る支出と手間」「再開時に必要な準備」「解散・清算で必要になる費用」を、同じ見直し期間で比較してください。

解散費用を比べるときも、登記の登録免許税だけを総額にしないことが大切です。株式会社・合同会社の通常清算では、債権者への官報公告等も必要です。依頼料のほか、納税、債務の弁済、契約終了に伴う支払いも別に見込みます。

個別の税務相談・申告代理は税理士、社会保険・労働保険は社会保険労務士、登記書類の作成・申請代理は司法書士が主な相談先です。支払不能や紛争は弁護士へ、許認可の休止・廃止・再開は所管行政庁または対応する行政書士へ確認します。

再開の見込みと管理負担を確認し、解散して会社を終える方針が決まったら、次の全体ガイドで必要な手順を確認してください。

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【完全マニュアル】会社の解散・清算手続き全手順|法務局の必要書類と最短スケジュール

【結論】会社の解散・清算手続きとは? 会社の解散・清算手続きとは、解散を決め、解散・清算人の登記を行い、債権者への公告や債務の整理などの清算事務を経て、清算結了の登記を行う一連の手続きです。 会社法等 ...

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休業を選ぶ場合も、次に見直す時期と管理する人を決めておく。そこまで決めてから止めることが、将来の再開にも、無理のない解散にもつながります。

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