会社を畳みたいのに、借入れや未払金が残っている。そんなときは、解散登記の日程より先に、会社の財産で債務を返せるか、いつ支払いができなくなるかを確認します。
債務超過でも「解散の決議が一切できない」という意味ではありません。ただし、解散しただけで借金が消えたり、通常の清算をそのまま最後まで進められたりするわけではありません。清算中の会社に必要となる法的手続きもあるため、資金不足が疑われた時点で、企業の倒産・債務整理を扱う弁護士に相談してください。資料が全部そろっていなくても、まず支払期限と手元資金を伝えます。
この記事は、株式会社・合同会社の経営者が、会社を終える方法について相談する前に整理したい判断材料をまとめたものです。特定の手続きを自分で選んで申請するためのひな形ではありません。
最初に分けるのは、赤字・債務超過・支払不能
赤字は、ある期間の収益より費用が大きい状態です。赤字の会社でも、十分な預金や換金できる財産があり、支払いを続けられる場合があります。
債務超過は、財産で債務を完済できない状態です。決算書の数字だけでなく、売掛金が実際に回収できるか、在庫や設備をいくらで売れるかを含めて確認します。帳簿では資産が多くても、清算のための換金では想定どおりの金額にならないことがあります。
支払不能は、支払能力が足りず、支払期限が来た債務を一般的・継続的に支払えない状態です。一時的な入金の遅れと同じとは限りません。財産の総額だけでなく、期限までに使えるお金があるかも問題になります。
根拠:破産法2条11項・15条・16条。法的な判断は、最新の財産と資金繰りを示して弁護士に確認してください。
相談前に、自社の資産・負債と支払日を整理する
先に行うのは、財産を売ったり返済先を決めたりすることではなく、判断の材料をそろえることです。
- 使える資金:現預金、利用制限のある口座、近日中の入金予定。
- 回収・換金の見込み:売掛金の相手と期日、在庫、車両、設備、不動産。帳簿額と現時点の見込み額を分ける。
- 返済・支払義務:銀行借入れ、買掛金、未払給与、税金、社会保険料、リース、家賃。
- 終了までの支出:解約違約金、原状回復、清算中の管理費、税務申告、裁判所の手続きと専門家の費用。
- 争い・保証:金額に争いがある請求、訴状・督促、担保、社長や家族の保証。
金額が分からないものは、一覧から外さず「未確定」と書きます。契約書、請求書、通帳、決算書・試算表を対応させると、どこに確認が必要かが見えます。
すべての資料がそろうまで相談を待つ必要はありません。「来週の給与が払えない」「差押えの書類が届いた」など差し迫った事情は、最初の連絡で期限とともに伝えてください。
会社を終える主な方法は、対象と進め方が異なる
通常清算は、残る債務を処理してから財産を分配する
通常清算では、債権の回収、債務の弁済などを行います。株式会社・合同会社とも、原則として債務を弁済する前に、残った財産を株主・社員へ分配することはできません。争いのある債権について必要な財産を留保する例外もありますが、会社全体の資金不足を無視してよい制度ではありません。
会社の財産で債務を完済できないことが明らかになったときは、株式会社でも合同会社でも、清算人に直ちに破産手続開始を申し立てる義務が定められています。登記費用が安いからという理由で、通常清算を続ける判断はできません。
特別清算は、解散後清算中の株式会社の制度
特別清算は、清算の遂行に著しい支障を来す事情や、債務超過の疑いがある清算株式会社について、裁判所が開始を命じて監督する手続きです。合同会社に、そのまま使える制度ではありません。
清算株式会社に債務超過の疑いがあるときは、清算人に特別清算開始の申立て義務があります。一方、債務を完済できないことが明らかなときの破産申立て義務もあります。「まず特別清算を申し立てれば、破産の検討は不要」と単純に順番を決めず、会社の状態を弁護士に示してください。
特別清算がすでに開始された後は、会社について破産手続開始の申立てが禁止されるなど、開始前とは扱いが変わります。特別清算で処理できる見込みがなくなった場合などには、裁判所によって破産手続へ移行する規定があります。
根拠:会社法484条・510条・511条・515条・574条。
特別清算では、協定案を債権者集会で決議し、裁判所の認可を得る方法などがあります。少数の債権者との個別和解による方法もありますが、債権者との同意だけでなく、裁判所の許可等の要否・条件も確認します(会社法535条)。どの方法で進められるかは、債権者の構成や同意の見込み、裁判所の手続きによります。会社の希望だけで借金を減らせる制度ではありません。
参考:東京地方裁判所・特別清算手続のよくある質問。具体的な費用・提出書類・運用は申立先によって確認が必要です。
破産は、裁判所が関与して財産と債務を整理する手続き
株式会社・合同会社では、支払不能や債務超過が破産手続開始の原因になります。破産手続では、裁判所が選任した破産管財人による財産の調査・換価、法律に従った配当などが行われます。
「破産を避けたい」という希望は、相談時に伝えてかまいません。ただし、希望だけで通常清算や特別清算を選べるわけではありません。債権者数、争い、財産の状況、資金の残り方を踏まえて判断します。
根拠:破産法15条・16条。概要は裁判所の破産・再生案内を参照してください。
合意による整理は、相手の同意と実行できる計画が必要
金融機関などとの合意による廃業型の私的整理が検討できる場合もあります。ただし、会社が一方的に返済額を決めてよいわけではありません。対象となる債権者、同意の要件、他の債権者への影響、税務、手続きの費用を確認する必要があります。
事業を続ける間にも支出は発生します。資金が尽きるまで待つと、返済の原資だけでなく、会社を整理するための費用も足りなくなりかねません。先の支払いが難しくなると分かった段階で相談し、利用できる方法と費用を確認しましょう。
事業を残す余地がある場合は、廃業の方法だけでなく再建・事業承継の可能性も相談します。この記事は会社を終えるときの確認に絞り、再建計画の作り方とは分けています。
支払先を選ぶ返済や資産処分は、実行前に相談する
「お世話になった取引先だけ」「役員から借りたお金だけ」と先に返すことや、会社の車・設備を親族へ安く譲ることは、後の手続きで問題になる場合があります。破産法には、一定の財産処分や特定の債権者への返済などの効力を否定し、財産を取り戻すための規定があります。
すべての支払いが必ず取り消されるわけではなく、行為の時期、会社と相手の認識などの要件があります。だからこそ、自分で「これは少額だから大丈夫」と決めず、契約・相手・金額・予定日を示して確認します。
根拠:破産法160条・162条。
解散後の債権申出期間には、通常清算固有の弁済制限もあります。給与・税金・公共料金だから常に自由に払える、という扱いではありません。必要な支払いについて裁判所の許可を得る制度があるため、支払期限が来る前に相談してください。
参考:東京地方裁判所・債務弁済許可のQ&A。自己判断で一律に口座振替を止める指示ではありません。どの支払いをどう扱うかを具体的に確認します。
会社の借金と、社長個人の保証は別に確認する
会社を解散すれば社長の保証も消える、とは限りません。一方で、会社が破産するなら社長個人も必ず破産する、と決まるわけでもありません。
保証契約の範囲、個人の資産・借入れ、金融機関との関係を会社の資料とは分けて整理し、会社と個人の両方について相談してください。経営者保証に関するガイドラインの利用を検討できる場合もありますが、法律による自動的な免除ではなく、適用条件や金融機関の同意などの確認が必要です。
参考:東京弁護士会・廃業時の経営者保証に関する解説。個人の自宅や預金を必ず残せると約束するものではありません。
弁護士に伝えることと、他の専門家に確認すること
最初に弁護士へ伝えたいのは、会社形態、事業を続けたいか終えたいか、資金が足りなくなる時期、債権者と保証人、争いや裁判書類の有無です。清算人を選任済みなら、その日と進めた手続きも伝えます。
決算・税務申告は税理士、登記は司法書士、社会保険・雇用の手続きは社会保険労務士、許認可の廃止届は所管行政庁や対応する行政書士が確認先になります。ただし、資金不足や債権者との争いがあるときは、各手続きをばらばらに先行させず、まず法的整理の方針と順序を確認しましょう。
口座、賃貸借、補助金、未納税金などを一覧にする場合は、次の「会社の解散・清算で確認すること」を参照してください。
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まずは資料と期限を整理し、支払い・財産移転の前に相談する。これが、関係者への影響を広げずに会社の終え方を決めるための出発点です。
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